From 師範代Shinya(新村真也)
僕がカナダのバンクーバーに留学して2ヶ月目に突入した頃のこと。
クラス替えが始まったこの頃から、僕の周りにはいろんな国の人たちが増えてきました。
この頃から、アジア系の人たちが入ってきて、特に韓国出身のクラスメイトと仲良くなりました。
文化的に近い僕らは、すぐに意気投合しました。
文化的に近いものの、母国語は違う者同士なので、英語しかコミュニケーション手段はありません。
なので、日本人同士固まるよりはずっといいと思いました。
留学ブーム
当時、韓国は空前の留学ブームで、たくさんの若者が英語圏の国に留学していました。
中でも治安が良いカナダは人気らしく、バンクーバーの街を歩くと、必ずと言っていいほど韓国人の留学生の姿を見かけました。
僕にとって印象的だったのは、韓国人同士のカップルの多さでした。手をつないで仲良く歩いているアジア人カップルの話している言葉を聞くと、必ずと言っていいほど韓国語でした。
これは、後から韓国人カップルたちから聞いた話なのですが、韓国は文化的に「結婚前の恋愛関係」に厳しい家庭が多く、特に学生のうちは親が娘の恋愛を禁止することが多いそうです。(今現在はどうか分かりませんが)
なので、親の目の届かない異国の地で、羽を伸ばして自由な恋愛を楽しむカップルが多いとのことでした。
僕は内心、「わざわざカナダにまで来て、同じ国の人同士で長い時間ずっと一緒にいるのは、なんだかもったいないような気がするな・・・」と思っていました。
母国語が同じ男女同士で付き合うと、学校以外の時間で英語を使う機会が減ってしまう、と思ったからです。
親から離れるのが目的なら、もっと物価の安い国でもいいじゃないかな?と思いました。
まあでも、そんなことは完全に「余計なお世話」だし、そもそも留学の目的は人それぞれなので、気にしないことにしました。
そんな中、僕のクラスメイトの韓国人を通して出会った、ある留学生(同じ韓国人)との会話に、僕は衝撃を受けました。
3年もいるけれど・・・
その留学生は、20代の男性で、僕の通っている学校とは別の語学学校に通っていました。
彼は、「もうすぐカナダに来て3年たつ」と言っていました。
彼のカナダでの生活は、「1日5時間のクラスを受けた後、同じ韓国出身の仲間と一緒に街中に遊びに行く」のが日課でした。
その中の一人が僕のクラスメイトだったので、僕らは放課後に合流して知り合ったのです。
彼とは英語でコミュニケーションを取っていましたが、韓国人の友達とは韓国語で話していました。
彼の英語のしゃべりは、とても自信がなさそうに見えました。
途中で何度もつっかえたり、間違いを自分で訂正しながら、ゆっくりと考えるように、ポツポツとしゃべる感じでした。
しばらく話した後、彼が僕にこんなことを言ってきました。
「シンヤはまだカナダに来て2ヶ月しか経ってないのに、どうしてそんなに英語が話せるの?俺なんて、ここに3年もいて、まだこの程度だっていうのに・・・」
そこで僕は、自分が日本で「音読トレーニング」と「瞬間英作文トレーニング」に出会ったこと、そしてそれを2年間やってからカナダに来たことを伝えました。
すると彼は、急に前のめりになって興味を示してきました。
そして、僕に
「そのトレーニングのやり方を、詳しく教えてほしい!」
と言ってきました。
そこで僕は彼に、その方法を詳しく解説しました。ただ、オススメのテキストは日本の本しか知らないので韓国語版は教えられませんでした。
でも、彼はそんなことお構いなしで、このメソッドに興味を引かれているようでした。
留学すれば何とかなる?!
ひととおり僕の説明を聞いた後、彼は僕にこんなことを話してくれました。
彼:「俺は韓国にいたときに、こういうちゃんとしたトレーニングを積んでこなかった。とりあえずカナダに来れば、後は何とかなる!と思ってたんだ。でも、ダメだった・・・」
僕:「最初にカナダに来たばかりの頃は、初心者レベルだったの?」
彼:「うん、もう、超初心者だよ。何もしゃべれなかった。」
僕:「その頃に比べたら、ずっといいんじゃない?」
彼:「ありがとう。そりゃ初めてここに来たときに比べれば、聞けること&しゃべれることは増えたよ。でも、英語圏の国に3年も住んでてこの程度かよ!って感じ。自分でそう思うんだ。」
僕:「そうか・・・」
彼:「シンヤは日本で英会話を始めて3年くらい経つんだよね?ってことは、俺がカナダに来たのと同じくらいだ。俺たちは、同じ時期に英語学習を始めたことになる。」
僕:「そうだね。」
彼:「俺はカナダで、シンヤは日本で英語を学んだ。」
僕:「うん。」
彼:「でも、今こうしてシンヤと話していると、俺よりずっと上手に英語を話せていると感じる。」
僕:「そんなことないよ。君の英語も上手だよ。」
彼:「いや、いいんだ。自分で自分のことはよく分かってる。ちなみに、TOEICテストは受けたことある?」
僕:「あるよ。ここに来る直前のテストは、735点だったよ。」
彼:「うぉっ!マジか!あぁ・・・」
僕:(う・・・これは・・・君は何点?とか聞ける雰囲気じゃないな・・・)
彼:「俺は3年前、ここに住んでれば勝手に英語が流ちょうにしゃべれるようになってると思ってた。でもダメだった。その理由が、今やっと分かった。シンヤと話して、英語の上達に何が必要かが分かったんだ。」
僕:「そうか!役に立てて良かったよ!」
彼:「ここに来たばかりの頃は、俺は外が怖くて、同じ韓国人の友達をたくさん作って、学校の外では彼らとずっと一緒にいた。
これじゃあ、英語力が伸びるわけがないよね。でも、当時はそうでもしないと、やってられない気分だったんだ。言葉が通じないのがこんなにストレスになるとは思ってなかった。」
僕:「その気持ち、俺も分かるよ。」
彼:「まあ、今でもこうして韓国の友達とつるんでるんだけどね。でも、最初の頃に比べればマシな方だよ。
今は自分の英語を伸ばすやり方が分かったから、あとはやるか?やらないか?の問題だけだな!せっかく来たんだから、それなりの結果を残してから韓国に帰りたい。それまでは、帰る気になれない。」
僕:「そうだね、どうせ来たなら、結果を残したいよね。」
彼:「ありがとう!俺はやるぞ!!」
このやりとりの後、彼は公園から去っていきました。この日以来、僕が彼と会う機会はありませんでした。
でもきっと、彼は結果を残して帰国したと僕は思います。
彼の言葉の中には、
「もっと英語を上達させたい!このままじゃ終われない!」
という強い意志を感じました。
僕はこのとき、
「英語なんて、留学すれば何とかなる」
という精神論&根性論が、「実際の現場では通用しない」ことを、彼自身の実体験を通して感じ取ることができました。
僕はこの頃から、
「やる気はあるけど、どうやって英語を上達させればいいのか分からない。」
「ある程度英語学習をやってきて、今は行き詰まりを感じているけど、具体的に何をどうすればいいのか分からない。」
といった「閉塞感」を感じている英語学習者の人たちに対して、「超具体的なトレーニングメニューを伝えてコーチすること」に、自分の心の奥底が燃えるのを感じました。
もちろん、この時はまだ、自分が日本に帰って英会話講師になるとは思っていませんでしたが・・・
・・・つづく。
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