from 師範代Shinya
(→前回のつづき)
日本では必ず敬語を使うようなシーンでも、アメリカでは「フレンドリーさ」が最重要視されるので、敬語が使われません。
日本の店員さん向けに売られている「接客英会話フレーズ集」などを見ると、けっこうたくさん敬語が使われています。
その理由は、
英語の敬語表現の中で「接客用語」として代表的なものは、
Would you ~?
Could you ~?
などの、助動詞の過去形から始まる疑問文です。
店員さんも、お客さんも使います。
Would you like anything to drink?
(何かお飲み物はいかがですか?)
I would like to have beer, please.
(ビールをお願いします)
Could you bring me a blanket?
(毛布を持ってきていただけますか?)
などです。
確かにこれらの表現がレストランなどで使われることは間違いないのですが、もっと砕けた言い方が使われることもけっこうあります。
なぜなら、英語圏の文化では「フレンドリーさ」を重視しているからです。
僕も自分がカナダに留学中に、レストランやお店で接客を受けた時に、これらの敬語表現が使われる頻度が低いことに驚きました。
家族間でも敬語?!
その一方で、友人や家族、同僚など、対等でカジュアルな関係の人たちとのやりとりの中に、
Would you ~?
Could you ~?
Could I ~?
などの敬語が登場することがよくあります。
アメリカのホームドラマなどを見ていても、よくこれらのセリフを聞くことがあるのです。
高校生の息子が、
Dad, could I use your car this weekend?
(父さん、今週末に車を使っていい?)
と言ったり。
友達同士のやりとりで、
Could you help me with my homework?
(宿題手伝ってくれない?)
と言ったり。
これらは日本語では敬語表現なので、そのまま直訳すると変な感じに聞こえます。
「お父様、今週末にお車を使わせていただいてよろしいでしょうか?」
「わたくしの宿題を手伝っていただけますでしょうか?」
なんてセリフを言っているとは思えないですよね?
フレンドリーさを重視する文化で生まれ育ったアメリカ人が、家族や友達を相手に、こんなことを言うはずがありません。
日本語として自然に聞こえる訳は、先ほど通り、
Dad, could I use your car this weekend?
(父さん、今週末に車を使っていい?)
Could you help me with my homework?
(宿題手伝ってくれない?)
ぐらいがちょうど良いのです。
では、なぜここで敬語に相当する「助動詞の過去形」が使われているのでしょうか?
英語の敬語表現が使われる時
答えは、「お願いする内容の大きさ」です。
・相手にとって精神的&肉体的に負担になること
・気軽にお願いするには申し訳ないこと
を相手にお願いする時に、ネイティブは敬語を使います。
先ほどの、「車を借りる」「宿題を手伝ってもらう」という状況も、相手からすると負担が大きいですよね。
お父さん目線では、「免許を取ったばかりの高校生の息子に、自分の大事な車を貸す」というのは、リスクが伴います。
友達目線では、「宿題をサボったクラスメイトを手伝う」というのは、時間的にも精神的にも負担がかかります。
だから、親しい間柄であっても敬語表現を使うのです。
それによって、
・あなたにとって、これは決してカンタンに受け入れられる頼み事ではないと、私は分かっていますよ。
・私は、これをお願いすることを、申し訳なく思っていますよ。
というメッセージを伝えています。
だから、レストランなどで「毛布を持って来る」などのカンタンな頼み事に対して Would you ~?や Could you ~?などの表現を使うと、丁寧に聞こえるのです。
相手にとって負担にならないことを、あえて大げさに頼む。
それが、「丁寧さ」につながります。
でも、接客業で「フレンドリーさ」を重視する文化では、あまり多用されないのです。
日本語訳にしづらい
上記の英語フレーズを自然な日本語訳にしつつ、ネイティブが感じている「申し訳なさ」を表現するためには、けっこう意訳して長くする必要があります。
「父さん、週末に車を使わせてもらうことって、できたりするかな?」
「宿題を手伝ってもらうことって、できないかなぁ?」
ぐらいの表現でしょうか。
もちろん、英語にも遠回しな表現は存在します。
I wonder if it could be possible for you to help me with my homework?
(君に私の宿題を手伝ってもらうなんてこと、可能だったりすることあるのかなぁ・・・)
みたいな表現です。
でも、親しい間柄であまりにへりくだり過ぎると、逆に相手をイラッとさせることもあります。(日本語でもありますよね、そういうこと。)
だから、長い表現はあまり使われません。
それよりも、Could や Would などの助動詞の過去形をサラッと使うのです。
結論:敬語はあるけど、使うシーン&使い方が違う
以上、英語の敬語についてお伝えしました。
英語には敬語はありますが、日本語とは使うシーンと使い方が違います。
①英語圏の接客業ではフレンドリーさを重視する
②相手にとって負担になるお願い事をする時に、敬語を使う。
この2つを覚えておくだけでも、英語の敬語の使いどころが見えてくるでしょう。
(完)
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