【TOEIC900点超えの上級者でも、ネイティブ同士の英会話が聞き取れない理由&解決法⑥】

 from 師範代Shinya

(→前回のつづき)

※僕が「ネイティブ英語のカベを超える」ために、音読で仕上げたテキストのレビューの続きです。
 

この本の特徴として、もう1つ「ネイティブ英語」に慣れるための工夫があります。

それは、「音声スピード&発音バリエーション」です。

モデル音声のスピードが、めちゃくちゃ速いのです。

僕が今まで見てきたたくさんの英語テキストの中でも、かなり速い部類に入ります。

速いと言っても、以前ご紹介した「セレブインタビューズ」のような、生のインタビュー番組の切り抜きとは違います。

ちゃんとスタジオで録音された、滑舌の良いプロのナレーターの音声です。

しっかりお手本になる発音が聞けます。

その上で、普通の英語教材の音声よりも1段速いスピードで話されるのです。

これが、耳を鍛えるのにとても良いトレーニングになります。

僕は当時、このモデル音声に合わせてシャドーイングしていましたが、ついていくのが大変だった記憶があります。

生の英語すぎるのも問題アリ

「本当に生のネイティブ発音をマスターしたいなら、映画のセリフのようなしゃべり方をする音声の方が良いのでは?」

と思われるかもしれません。

僕も一時期はそう思って、「セレブインタビューズ」の教材や、他にも生のネイティブ会話が収録された教材に手を出しました。

でも、やってみて思ったことがあります。

それは、「生の素材はリスニング練習には良いかもしれないけど、シャドーイングなどの発話系トレーニングには使いづらい」ということです。
というのも、リアルタイムで考えながらしゃべっているネイティブの音声は、途中で途切れたり、言いよどんだり、言い間違えたりして、変則的です。

リズムも一定ではないので、すごくタイミングが取りづらいのです。

また、生の音声はBGMが入っていたり、周囲の雑音がうるさくて、肝心の音声が聞きづらくなることもあります。

さらに、2人以上でしゃべっている時には、片方がしゃべり終わる前に、相手がかぶせるように話しかけてきて、それもまた勉強素材としては使いにくさがあります。

もちろん、生のネイティブ発音に慣れることを最大の目的にしている教材であれば、それで良いと思います。

でも、この本の場合はあくまで「ネイティブ表現を学ぶこと」にあります。

雑音やBGMで発音が聞きづらければ、気が散ってしまい、ネイティブ表現に集中できずに終わる可能性もあると思います。

その点で、このテキストのモデル音声のスピードと雑音のなさは、教材としての完成度が高いです。

違う国のアクセント

もう1つ、この教材の音声は、違う国のアクセントが学べるようになっています。

同じネイティブ同士でも、アメリカとイギリスとオーストラリアでは、だいぶ発音が違います。

日本人は中学~高校までの教育で、アメリカ発音を使った教科書で学びます。

でも、実際に英会話をする相手は、アメリカ発音の人ばかりとは限りません。

留学や海外旅行先として人気の国は、アメリカよりも親日家が多いオーストラリアや、同じ島国のイギリスだったりします。

そのため、ある程度のネイティブ発音のバリエーションに慣れておいた方が良い、という意見もあります。

実際に、TOEICテストのリスニング問題では、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアの4カ国の発音が入り混じっています。

そこでこの本「日本人でも超えられるネイティブ英語の壁」も、モデル音声のナレーターが、アメリカ、イギリス、オーストラリアの3カ国になっています。

しかも各ナレーターが、かなり強い自国語なまりを出してくるので、良い耳慣らしになるのです。

以上、僕がネイティブ英語のカベを超えるために使ったテキストをご紹介しました。

各国のネイティブ表現がミックス

色んな国がミックスされているのは、発音だけではありません。

ネイティブ表現も、アメリカとイギリス、オーストラリアの3カ国のミックスになっています。

これも、教材として珍しい気がします。

普通は、「アメリカ人ネイティブ著者が書いたアメリカの表現集」みたいな作りのものが多いからです。

この本は、日本人の先生とネイティブの先生の共著なので、バランスを意識して作られたのかもしれません。(ネイティブの先生は、スコットランド出身で、他の国に住んだ経験も豊富だそうです)

本の中の1つ1つのストーリーは独立していて、先へ行くほど難しくなるというわけではありません。

自分の興味のあるトピックから進めていって、好きなタイミングでやめることもできます。

僕は一応、全ページ音読で仕上げましたが、後半の音読回数は15回程度におさめました。

とりあえず、「聞いて分かる」レベルに持って行けたら良いかな、と思って、浅めの回数で最後のページまでやりました。

日本にはない文化から来る表現に「へぇ~!」と感じることが多く、読み物としても面白かったので、最後まで楽しめました。

ネイティブ表現の習得は、エンドレス

この本を最後までやった時に、気付いたことがあります。

それは、「こりゃ、キリがないな」ということです。

文化から生まれた表現は、無数にあります。

今後も、新しい表現がどんどん生まれてくるでしょう。

日本語にだって、毎年新しい流行語が生まれています。

・エモい (emotional)

・ワンチャン(There’s a chance)

・かえる化現象 (get the ick)

などの日本語表現は、最初はSNSで若者のみが使っていた言葉が徐々に広がっていき、今では日常会話でも定着しつつあります。

日本語を学ぶ外国人にとっては、これらの言葉を使って日本人同士が会話している中に入るのは、かなりムズカしいでしょう。

これと同じことが、英語ネイティブ同士の会話と僕ら日本人の間にも言えるのです。

この本「日本人でも超えられる:ネイティブ英語の壁」を一冊丸ごと音読した時、僕はそのことに気付きました。

そして、「これ以上は、必要になったタイミングで学べばいいや」ぐらいの気分になりました。

今では、僕はネイティブ同士の会話が聞き取れなくても、ヘコむことはなくなっています。

「あ、きっとネイティブ表現を使って話しているに違いない」

と思えば、気になりません。

そういう意味で、この本を使って良かったと思っています。

もしあなたがネイティブ表現を学びたいなら、オススメです!

(完)

 

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