【人間も機械も完璧になれない理由②】

from 師範代Shinya

(→前回のつづき)

前回の記事では、カメラなどの機材は、「あちら立てればこちら立たず」になる、というお話をしました。

画質や手ブレ補正の性能の高さを追い求めると、どうしても本体サイズは大きく重くなります。

軽く小さく作られたカメラは、どうしても画質や手ぶれ補正が犠牲になります。

それぞれの機能が反比例するので、すべてを満たすカメラを作るのは、物理的に不可能なのです。

だからカメラメーカーは、なんとかバランスの良い妥協点を見付けようとして、色々と工夫しています。

でも結局、売れるカメラ&話題になるカメラは、「他の機能を犠牲にしてでも、1~2つの機能に全振りしたモデル」が多いです。

たとえば、

・大きくて重くてメチャ高価だけど、画質は他のどのメーカーにも負けないカメラ。(ソニーFX3)

・画質はスマホのカメラとそんなに変わらないレベルだけど、軽くて小さくて手のひらに収まるサイズで、水に入れてもへっちゃらなカメラ。(ゴープロ)

などです。

①相反するすべての機能を、同時に伸ばすのは難しい

②1つの機能に全振りして突出した方がウケが良く、印象に残る。

これは、英語学習の世界でも言えます。

「4技能をバランス良く」はけっこう難しい

よく英語学習の世界では、「4技能をバランス良く身に付けましょう」と言われます。

①読む力

②書く力

③話す力

④聞く力

をバランス良く伸ばしましょう!

というコンセプトです。

でも、この一見良さそうな響きのする言葉には、カメラと同じぐらい矛盾がはらんでいます。

もちろん、カメラほど反比例するわけではありませんが、この4技能の得意不得意には、英語学習者の個人の性格が強く影響します。

たとえば、

分厚い文法書を読んで、細かい文法ルールを覚えることを楽しめるAさん。

長くて難しい英文を読むのが得意で、TOEICなどの資格試験でも高得点が出せる。

一方で、いざ英会話!となると、Aさんは簡単な自己紹介でもつっかえてしまうことが多い。

もう1人のBさんは、仕事で海外赴任の経験があり、日本に帰ってきてからも、プライベートで外国人バーに繰り出して、友達をたくさん作っている。

持ち前のノリとコミュニケーション能力で、仕事でもプライベートでも、外国人との意思疎通が上手にできる。

周りからは「Bさんは英語ペラペラですね!」と言われることが多い。

一方で、TOEICなどの資格試験を受けると、点数がなかなか出ない。
文法書を読んだり、長くて難しい英文を読んだり、テスト勉強をするのも苦手で、やる気が出ない。

こんな感じで、対照的なAさんとBさんがいます。

今は架空のキャラクターとして描きましたが、実はリアルにいる人達をかけ合わせた描写です。

長所と短所は、表裏一体

AさんとBさん、それぞれに強みと弱みがあり、長所と短所が表裏一体になっているので、バランスを取るのは難しいです。

たとえば、Aさんに対して、

「ミスを気にせず、英語をどんどん話しましょう!」

「外国人と英会話するチャンスを作るために、毎日オンライン英会話レッスンを受けて、週3回は外国人バーに繰り出しましょう!」

なんて言っても、あまり効果がありません。

Aさんにとっては、外国人バーでみんながノリノリでしゃべっているところに、同じテンションで「Hey! What’s up?」などと乗り込んでいくのは、かなりハードルが高いと思います。

そもそも、自分がそんなキャラになりたいとは思わないでしょう。

こういう場で生き生きするのは、Bさんです。

でも、Bさんに対して、

「前置詞や冠詞のミスにしっかり気を配って、正しい文法で話しましょう。」

「そのためにも、1日1時間は文法を勉強する時間を取ってください。」

「自分の進捗を確認するために、TOEICテストを半年に1回、必ず受けてください。」

なんて言っても、あまり効果がありません。

Bさんにとっては、1人で部屋に座って、静かに文法書を読んだり、TOEIC問題集を解くのは、かなり苦痛なはずです。

人間は、苦しいと感じることは、長く続けられません。

性格を無視した英語学習メニューは効果が薄い

このように、人間には得意不得意が必ずあります。

英語学習のメニューも、バランスを重視し過ぎて個人の性格を無視してしまうと、効果が薄くなります。

Aさんタイプの人に、毎日英会話をする機会を作ってもらうのはすごく難しいですし、ムリヤリやっても効果がイマイチなことが多いです。

Bさんタイプの人に、毎日文法書を読む機会を作ってもらうのはすごく難しいですし、ムリヤリやっても知識が頭に入りません。

では、どうしたらいいのでしょうか?

Aさんタイプの人は、英会話はあきらめた方が良いのでしょうか?

Bさんタイプの人は、一生ブロークンイングリッシュから抜け出せないのでしょうか?

そんなことはありません。

次回は、個性を活かしつつ、最終的に弱点を克服してバランス良く英語力を伸ばす秘訣をお伝えします。

・・・つづく

 
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