from 師範代Shinya
(→前回のつづき)
50代でやり直し英語学習を始めて、定年後に同時通訳者になった元エンジニアの男性が書いた本のレビューの続きです。
著者の田代さんは、ジャンルを絞って英語力を磨いた時に手に入る力を、面白い方法で表現しています。
それが、「英語コミュニケーション力を、四角の面積で表現する」という手法です。
①タテ軸が、英語力(ボキャや文法)
②ヨコ軸が、知識&経験&情報
というようになっています。
②は、英語で話す内容に関する知識や経験のことです。
この2つの軸が伸びていくと、四角の面積が大きくなっていきます。
そして、四角の面積の大きさが、英語コミュニケーション力を決めるのです。
(詳しくは本にあるイラストを見ると、分かりやすいと思います。)
多くの英語学習者は、タテ軸の英語力を伸ばすところばかりに注力しがちです。
そして、覚えたボキャや文法を使えないと感じて、ヘコンでしまうこともあります。
でも、そもそもヨコ軸の知識がない状態では、どんなにタテ軸の英語力を伸ばしても、コミュニケーションは上手にできないのです。
そしてほんとんど場合、四角の形はアンバランスで、細長い長方形になりがちです。
・英語力は高くても、知識や経験がなかったり。
・知識や経験があっても、英語力が足りなかったり。
田代さんはこの状態を、
①帰国子女型
②サラリーマン型
と2つに分類して呼んでいます。
帰国子女型は、タテ軸の「英語力」がモーレツに高くて、ネイティブ並みのボキャブラリー、リスニング力、スピーキング力を兼ね備えています。
でもヨコ軸の「仕事の経験値」が短いので、いくら英語だけできても、コミュニケーションは上手に取れません。
ベテランのエンジニアが集まる会議に、エンジニア仕事の経験がゼロの帰国子女の人が入って、「同時通訳をしてくれ」と言われても、専門用語が分からずに苦戦するでしょう。
逆にサラリーマン型の人は、ヨコ軸の「仕事の経験値」が長いのに対して、タテ軸の「英語力」が低い状態です。
いくら仕事の知識や経験値が高くても、それを伝える最低限の英語力がなければ、コミュニケーションは取れません。
多くの日本人は、このサラリーマン型のタイプだと思います。
帰国子女型&サラリーマン型のどちらも、四角の形が細長い長方形をしています。
トータルの面積が狭いので、コミュニケーションが取りづらいのです。
帰国子女の悩み
僕は以前、帰国子女の人に「英語がペラペラだから、仕事の選択肢が広くていいですね!」と言った時に、こんな返事が返ってきました。
「いや、英語が話せること自体が強みになるわけじゃないんですよね。
仕事を得るためには、その仕事自体の経験値が必要なんです。
それに、日本で仕事をするためには、やっぱり日本語力が必要です。
実は私は、漢字を読むのが苦手で。それがネックになって、自分が望む仕事のポジションに就けないでいます。」
と言っていました。
これはまさに、帰国子女型の「縦長の長方形の力を持つ人の悩み」だと思います。
僕は仕事柄、帰国子女の方々と話す機会が多いのですが、これまで出会った中では、「漢字が苦手」という人が、驚くほど多くいました。
話している時にはまったく日本人と変わらないイントネーションとボキャブラリーを使いこなせるのに、読み書きになると突然たどたどしくなるシーンを何度も目撃しました。
小学生ぐらいの時期に漢字を叩き込まれる日本の教育を経験しないと、後から大人になって漢字を覚えるのはとても大変なようです。
もちろん、帰国子女でも海外で親から漢字を叩き込まれた人もいるし、大人になってから努力して常用漢字をマスターした人もいます。
でも、比率で言うと漢字が苦手な人が多い印象です。
そう考えると、僕たち純ジャパニーズにとってのグローバル市場での強みは、
・日本語力
・日本での仕事の経験値
ではないでしょうか。
知識が理解度を助けてくれる
ヨコ軸の「知識&経験」が豊富であれば、タテ軸の英語力が低くても助けになります。
相手が話す英語の全文が聞き取れなくても、部分的にボキャが聞き取れれば、「あ、たぶんこの人はこのことを言っているな」と推測することができるからです。
そして、その推測が高い確率で当たります。
だから、まずは自分が知識があるところで英語力を高めるのが手っ取り早いと言えるのです。
四角の面積を広げることを意識する
英語のコミュニケーション力を伸ばしたい場合は、この「四角の面積を広げること」を意識することが大事であると、田代さんは著書の中で繰り返し強調しています。
できるだけ正方形になるように、英語力と知識をバランス良く身に付けていくのです。
すでにやっている仕事や、長年楽しんできた趣味は、ヨコ軸の知識&経験は十分なことが多いです。
だから、そのジャンルに絞ってタテ軸の英語力を上げていけば、短期間で四角の面積を広くしていくことができます。
・・・つづく。
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From 師範代Shinya(新村真也)
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