from 師範代Shinya
(→前回のつづき)
50代でやり直し英語学習を始めて、定年後に同時通訳者になった元エンジニアの男性が書いた本のレビューの続きです。
前回の記事では、
英語のコミュニケーション能力=英語力×知識
という公式をお伝えしました。
もともと持っている知識に特化した範囲で英語力を伸ばしていけば、そのジャンルでは短期間で流ちょうに話せるようになる、という図式です。
これは、確かに理に適っていると思います。
もともと知識があるジャンルであれば、英語で聞き取れない部分があっても、知識が理解度を助けてくれます。
確かに、僕もふだんリスニングのトレーニングで海外ユーチューバーの動画を聞いていますが、ジャンルによって自分のリスニング力に雲泥の差が出ます。
僕が詳しいジャンルは、
・カメラ&マイク関連
・マジック(手品)
・英語の学習法
・格闘技
・ダンス
・コピーライティング&マーケティング関連
などです。
これらのトピックを扱った海外の動画は、早口で聞き取れない場所があっても、全体で何を言っているのか推測できます。
逆にバラエティー系の動画は、扱うトピックがあまりに幅広いので、まったく理解できません。
さらに、これにジョークなどが加わると、もうお手上げ状態です。
どこが笑うポイントか、まったく分からないのです。
おそらく日本語でも、自分の専門外のジャンルの話にはついていけないでしょう。
知識がないと、日本語でもコミュニケーションは無理
たとえば、もしあなたがカメラにまったく興味がなかった場合、カメラを趣味にしている人たちの会話にはついていけないはずです。たとえば、
「このカメラの常用ISO感度は低めだから、ノイズを抑えるには絞りを開放にしてシャッタースピードを遅くしないとね。あ、でも、このカメラにはBISは入ってないし、レンズにもOISが入ってないから、三脚固定が必須だよ。」
なんてセリフを聞いても、相手が何を伝えようとしているのかよく分からないでしょう。
そして、自分がそれに対して何て返していいのか分からないはずです。
日本語だったら、「すいません、この業界はよく分からないので、失礼します。」と、その場から離脱するかもしれません。
でも、英語の場合はつい「自分にはまだまだ英語力が足りないんだ・・・全然聞き取れない」と、自分の英語力を理由にしてしまう傾向があるのです。
もし英語が聞き取れなかった場合、その原因が、「タテ軸の英語力の問題なのか?それともヨコ軸の知識の問題なのか?」を明確にする必要があります。
もしヨコ軸が原因だと判明した場合は、英語力と関係ないのでヘコむ必要はありません。
著者の田代さんのケース
ちなみに、この本の著者の田代さんは、30代前半の頃に1度仕事の英語を学んだことがあるそうですが、身に付かず挫折したそうです。
当時は、タテ軸の英語力もヨコ軸の仕事の知識も低い状態だったので、英語でのコミュニケーションがまったく取れずに、イヤになってしまったのです。
それから時が流れて、50代になった時に、自分の勤める会社が外資系企業に吸収されて、会議が英語で行われるようになり、上司も外国人になるという、緊急事態に見舞われました。
その頃には、30代の頃に比べてプラス20年近い仕事経験値があったため、ヨコ軸の知識がグーンと伸びた状態でした。
そこに乗せるタテ軸の英語力を伸ばすのは、予想していたよりもカンタンだったそうです。
もちろん、慣れるまでは準備に必死だったそうですが、何度も会議を経験するうちに、使われる英単語の傾向が分かってきて、効率よく勉強が進むようになりました。
そして、自分の専門領域に絞ってタテ軸の英語力を上げていった結果、10年足らずで機械系エンジニアの世界で同時通訳者になれるほどの力を身に付けてしまったのです。
つまり、ヨコ軸の知識を長く伸ばした状態で、機械系エンジニア用語に絞ってタテ軸の英語力を伸ばしたからこそ、四角の面積を大きくすることができました。
ちなみに、田代さんは同時通訳者として活躍している今でも、映画やドラマのセリフは聞き取れないし、会食の場は苦手だそうです。
自分の英語コミュニケーション力は、機械系エンジニアという四角パネルの中だけで高めたので、他の種類のパネルで会話しようとしても、とたんに詰まってしまうそうです。
また、英語のジョークも理解できないので、みんなが笑うポイントで笑えないそうです。
よく「カジュアルな日常会話が、実は一番ムズカしい」と言われる理由は、そこにあります。
逆に、田代さんは日常会話を目指さなかったからこそ、50代からのやり直し英語がうまくいき、定年後に同時通訳になれた、とも言えるのです。
・・・つづく。
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From 師範代Shinya(新村真也)
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