【日本の「自然を愛する文化」が、英語リスニングのハードルを上げる理由④】

 from 師範代Shinya

(→前回の続き)

前回の記事では、脳の実験結果として、

・日本人は英語のリスニング中に、左脳を使って「常に音の意味を考えながら」聞いている。

・ネイティブは、英語のリスニング中に、右脳を使って「音楽を聞く時のように」聞いている。

というお話をお伝えしました。

日本人は左脳で英語を聞こうとすることで、リスニングに対するハードルが高くなっている、という考え方です。

前回は「虫の音色」を例にしながら、日本人が一見意味のなさそうな音に対して意味を見いだす文化との関連をお伝えしました。

そしてもう1つ、僕が英語と日本語の両方の練習をしてきて感じたのが、両者の「音」に対する意識の違いです。

英語は「音声言語」と呼ばれるほど、音に特化した言語です。

一方で日本語は文字だけでも、漢字&ひらがな&カタカナの3種類もあり、書くことに向いた言語です。

日本語には同音異義語も多いので、なかなか音だけでは意味が推測できません。

その証拠に、日本のテレビ番組やYouTube動画には、出演者のセリフに対して一字一句すべて字幕がついているものが多いです。

このような「字幕文化」は、英語の番組にはありません。

視聴者は耳で英語を聞いて理解しているからです。

世界中を見渡しても、母国語で見るテレビ番組に字幕が付いているのは日本だけ、と聞いたことがあります。

それぐらい、音だけで理解するのがムズカしい言語が、日本語だと言えます。

演技の先生の言葉

僕が20代前半の頃に「演技の学校」に通っていた頃に、先生に言われたことがあります。

「どんなに君たちが滑舌を鍛えてハッキリしゃべっても、セリフがすべて観客に伝わるとは限らない。日本語には、同音異義語や似た音が多い。だから、顔の表情や声のトーンが大事なんだ。言葉だけに頼って伝えようとしてはいけない。」

という言葉です。

英語を長年勉強してきた今、先生の言葉を振り返ると、すごく腑に落ちます。

僕たち日本人にとって、耳だけに頼っていては日本語を100%理解できないのが、デフォルト状態なのです。

だから、僕たちは常に左脳をフル回転させながら、前後の文脈を読み、場の空気を読み、相手が言わんとしていることを先読みしながら、推測して聞くクセがついています。

そのクセは、もう母国語である日本語に組み込まれているのです。

それが、英語を聞くときの障害になっているとは・・・目からウロコでした。

訓練で変えられる

ちなみに、日本人でも訓練すれば、英語を聞くときに右脳を使って聞くことができるようになるそうです。

その訓練とは、「あえて意味を考えずに英語を聞くリスニング」です。

僕たちは日頃の習慣で、無意識に意味を考えながら聞こうとしてしまいます。

だからこそ、意識的に「意味を考えずに英語を聞く」トレーニングが役立つのです。

イングリッシュドクターのロイ先生いわく、この「意味を考えないリスニング」の訓練をすることで、英語が聞き取れるようになった生徒さんが続出したそうです。

ちなみに、この訓練は今のあなたの英語レベルに関係ありません。

たとえば初心者が訓練をしたら、不思議なことが起こったそうです。

不思議な逆転現象

それは、「英単語の意味は分からないけど、音としては聞き取れる。何て言ってるかわかる。」という現象です。

面白いですね!

たとえば、

「チェッケラウ!」

という発音を聞いて、

check it out

と言っていることが分かる。

だけど、この組み合わせでどういう意味になるのか?分からない。

という状態です。

普通は逆だと思います。

「台本を読んだら、check it out と書いてあった。読めば意味が分かって理解できるのに、リスニング中は、チェッケラウ!が check it out だとは聞き取れなかった・・・」

というケースがほとんどです。

この逆転現象が起こるのは、本当に面白いことだと思います。

もちろん、最終的には意味と音の両方を理解できる状態にならないと、本当のリスニング力とは呼べません。

でも、まずは僕たち日本人が苦手な「英語の音をそのまま聞き取る」力を手に入れるためには、この「意味を考えずに音だけ聞き取る」練習が有効なのです。

でも、このリスニング訓練法は、まだあまり知られていません。

少なくとも僕自身は、これまで意識的に「意味を考えないリスニング訓練」をしたことがありません。

では、どうやって今のリスニング力を手に入れたのか?

自分の学習記録をたどるうちに、あることに気付きました。

 

・・・つづく

 

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