from 師範代Shinya
(→前回の続き)
僕が洋書を読めるようになって気付いた、「英語の洋書と日本語の翻訳版の違い」の2つ目は、
②英語を翻訳した本は、どうしても独特で不自然な日本語になりがちで、全体的に読みづらくて頭に入ってこないことがある。(英語だと驚くほどすんなり入ってくることがある)
という部分です。
これは、洋書が苦手という人からよく聞くセリフでもあります。
洋書の翻訳版は、できるだけ原書のニュアンスをそのまま伝えつつ、日本語の語順で意訳していく必要があります。
これは実際にやってみると分かりますが、とても高度な作業です。
僕はたまに、英文を自分で自然な日本語に翻訳して口から出す練習をやってみるのですが、ものすごく難しいです。
時間と労力がかかります。わずか1文を訳して自然な日本語にまとめるのは、英文を読む何倍もの時間がかかるのです。
僕は翻訳家の人を尊敬しています。
翻訳家として活動するためには、高い日本語力と英語力の両方を兼ね備え、なおかつスピーディーに訳していくスキルも必要です。
そうでないと、何百ページもある洋書を期限内に翻訳することはできないでしょう。
「高いスキルがあるプロなら、日本人が書いた自然な日本語の本みたく翻訳できるのでは?」
と思いますよね。
でも、実際にやってみると分かるのですが、それはほぼ不可能に近いと僕は思います。
なぜなら、翻訳作業で大事なのは、「原書のニュアンスをできるだけ変えずに、日本語にすること」だからです。
英語と日本語は単に語順が違うだけではなく、文化的な違いがとても大きく影響して、そのまま訳すと不自然になちがりです。
たとえば、僕が表紙の作者の名前を見ないでいきなり本を立ち読みした場合、「あ、これは洋書の翻訳版かな?」と感じられるポイントは、次の2つです。
①「あなた」「私たち」「私」という単語が多い。
②1文が長くて「、」でつなぐ表現が多い。
これは、まさに英語と日本語の文化の違いだと思います。
日本語では、「私」という言葉はほとんど使いません。
主語を言わないのが自然な日本語です。
「私は~だと思います。」
「私は昨日、カフェに行きました。」
「僕は明日、スマホを買い替えるんだ。」
というように、毎回の文章に主語を付けると、ちょっと不自然に聞こえてしまいますよね。
それよりも、
「~だと思います。」
「昨日、カフェに行きました。」
「明日、スマホを買い替えるんだ。」
と言う方が、聞く人には自然に聞こえます。
また同じように、グループで行動した時にも、「私たち」という表現は日本語ではあまり使われません。
「私たちはこんどの週末にバーベキューに行くんだ。」
と言うよりも、
「こんどの週末に家族でバーベキューに行くんだ。」
と言う方が自然に聞こえます。
これは正確には
「(私は)こんどの週末に(私の)家族と一緒にバーベキューに行くんだ。」
というセリフの、主語を抜いた言い回しです。
「あなた」も使われない
1人称だけではなく、2人称も同じように省略されます。
「あなたは週末にどっか行った?」
「あなたはカレー好き?」
と言うよりも、
「週末にどっか行った?」
「カレー好き?」
と言う方が、日本語的には自然です。
また、誰かをハッキリさせたい場合は、
「シンヤさんは、週末にどっか行った?」
「シンヤさんはカレー好き?」
というように、名前を直接入れると親近感を出すことができます。
(ちなみに英語でこれをやると、まるでここにいない第三者のことを聞かれているように聞こえます)
日本語にも「あなた」という言葉は存在しますが、会話ではほとんど使われないのが現状です。
「あなたは~」を会話で使った場合、なんだかよそよそしく聞こえることすらあります。
目の前にいる相手と話している時には、「あなた」や「私」という単語を使わなくてもちゃんと通じるのですが、これが書き言葉になると、とたんに不便になります。
本を書くときには不便
「私(たち)」「あなた」という表現があまり使わない風潮は、本やブログなどの、不特定多数の人たちに向けてメッセージを書くときにはとても不便です。
本の場合、目の前にいる相手に語りかけるように書くためには、どうしても「あなた」という表現は避けて通れません。
僕も今まで何度かブログ内で「あなた」以外の表現を使おうとして模索したことがあります。
でも、日本語には「名前の分からない相手を指定する言葉」が「あなた」以外には存在しないのです。
強いて言えば、「あんた」「君」「おまえ」などの、距離感や上下関係を感じさせる表現のバリエーションはあります。
でも、丁寧語として読者に呼びかける言葉は、「あなた」しかないのです。
英語はYou、I、We の連発
一方で、英語は常に You, I, We の連発です。
主語がない英文は、ほとんど使われません。
ごく親しい間柄の相手とのカジュアルなチャットの時ぐらいしか、主語が省かれることはないのです。
また、上下関係や距離の近さに関係なく「you」が使われます。
・自分の両親に向かって「you」
・学校の先生に向かって「you」
・社長に向かって「you」
これは、日本文化では絶対にない感覚です。
さらにyou には、「あなた」という意味だけではなく、「私を含めた人々全員」というニュアンスもあります。
「you = 私たち」と訳した方が自然な文章もあるのです。
これだけ連発される英語の you と、ほとんど使われない日本語の「あなた」の間には、大きなニュアンスの違いがあります。
しかも、先ほどお伝えした通り、日本語には「あなた」以外に読者を指定する言葉がありません。
だから、英語の翻訳版の日本語が不自然に聞こえるのは、当たり前なのです。
・・・つづく。
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