外国人バーで月1で開かれている「サルサイベント」に、初めて参加した僕は、下地知識を何も知らないまま、体験レッスンを受け始めました。
普通、ダンスの体験レッスンを受けるときには、ある程度自分の中で「やってみたい!」という意志があります。
でも今回は、サルサの音楽もダンスも、何も知らない状態で受けるという状況でした。
体験レッスンが始まる時間帯の夜8時前になると、けっこう人が集まってきました。
どうやら、体験レッスン目当てで来る人もいるようです。
先生ともう1人の女性以外は、みんな初心者っぽい雰囲気でした。
トータル10人ぐらいで、男性の方が少なく、女性が多いです。
年齢層は、女性は20代~30代ぐらいで、男性は30代~50代ぐらいに見えます。
国籍もバラバラで、日本人と欧米人が同じぐらいの比率でした。
僕がこれまでやってきたHIPHOPダンスのクラスでは、日本人率100%で、全体の8割以上が女子中高生です。
同じ西洋ダンスでも、サルサは世界がまったく違うと感じます。
バーの中央ゾーンの広い空間のテーブルとイスが移動されて、そこに僕らは集められました。
さっきまで入り口で集金していた先生が、みんなの前に立ちました。
さすがに先生だけあって、背筋がピシッとしていて、姿勢が良いです。
でも、立ち方やちょっとした立ち居振る舞いは、社交ダンサーとは少し違った雰囲気がします。
社交ダンサーに感じられるフォーマル感よりも、セクシー感を強めに出している感じです。
具体的に、先生がそのセクシー感をどうやって出しているのか説明できませんが、確かな違いを感じました。
初めてのペアダンス
先生は、普通に日本語で話しながら、レッスンを始めました。
先生:「さあ、それではまず基本の動きから始めます。サルサはペアダンスです。まずは相手がいないと練習できません。男性はこちら側に並んでください。女性は向かい合ってこちら側に並んでください。」
そして僕たち生徒は、男女向かい合う形で、ペアを組みました。
僕の最初の相手は、僕より背の高い、スラッとした欧米系の白人女性でした。
20代後半~30代前半ぐらいでしょうか。
僕と目が合った瞬間に、笑顔で「Hi!」と言われました。
僕もすかさず「Hi!」と答えました。
先生:「では、まず男性は左手を女性の前に差し出して、手のひらが上に向くようにしてください。その時に指を少し曲げてください。」
言われた通にしてみました。今までにしたことがない動きなので、何だか不思議な感じです。
先生:「次に女性は、男性の手の上に自分の手をかぶせるようにして乗せてください。その時に、指を少し曲げて、男性の指に引っかけてください。」
僕の目の前の白人女性が、僕の手を握ってきました。
握ると言っても、恋人同士が手をつなぐような、手のひらをガッツリ密着させる形ではなく、お互いの指先がひっかかっているような感じです。
確かにこれなら、お互いが動きやすく、激しく動いたとしても、指が引っかかっている限り、手が離れることはなさそうです。
お互いの手が接している面積は少ないとはいえ、僕はかなり緊張しました。
これまでの人生で、僕は「初対面の女性といきなり手をつなぐ」という状況を経験したことがありません。
しかも相手は、白人女性です。
この外国人バーでは、初対面のネイティブたちと至近距離で話すことはあっても、さすがに手を触れる機会はありません。
さらなる接近
先生:「では次に、お互いに腕を曲げて近づいてください。男性は余っている反対の手を、女性の背中の肩甲骨の辺りに当ててください。」
(え?マジ?!)
僕は驚きました。
言われた通りにすると、目の前の白人女性とかなり距離が近づきました。
初対面の女性の背中に手を回すなど、日本では御法度です。
僕は、心臓がバクバクしてきました。
相手の白人女性は、この至近距離でも、にこやかにこちらを見てきます。
さすが欧米文化!
僕も目をそらすわけにはいきません。
僕は以前、英会話スクールの先生(アメリカ人女性)から、
「欧米文化では、初対面の人にアイコンタクトをされた時に、目をそらすと失礼になるわよ」
と教わりました。
そこで、僕も目の前の女性の目を、しっかり見返しました。
その女性の薄いブルーの色の目が、僕にとっては日常の現実感を薄める心理効果を発揮して、逆に見返しやすく感じました。
とはいえ、このままジーッと見続けていいものか?
さすがにそれはちょっと変なのでは?
どのぐらい見続けたら、この挨拶は終わるのか?
などなど、色んな考えが僕の頭の中をグルグル巡ります。
ペアダンスの世界ではこれが普通なのかもしれませんが、まったく耐性のない僕は、かなり緊張しました。
(うぉ~これは照れる!!・・・ペアダンスの世界、恐るべし!)
僕は、心の準備がまったく整っていない状態でサルサの世界に飛び込んだことで、ワクワクと緊張と焦りが入り混じった、不思議な気分になりました。
・・・つづく。(→この記事のシリーズを1話目から読む)
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