僕が子供の頃にハマった映画に、「ベスト・キッド」という映画があります。
ダニエルといういじめられっ子の少年が、空手の達人ミヤギさんに出会って、空手を習うことで、強くなっていくという青春ドラマの映画です。
その映画の中の有名なシーンに、「ダニエルさんが修行中、師匠のミヤギさんに雑用ばかりやらされる」というシーンがあります。
何十台もあるクルマにワックスをかけたり、
長い床にやすりをかけたり、カベにペンキを塗ったり・・・
空手を習いたいのに、雑用ばかりやらされ、ちっとも教えてくれないと感じたダニエルさんは、途中で「空手を教えてくれないなら、もうやめる!」と宣言します。
ところがミヤギさんは
「もう、空手を教えている」
と言うのです。
そして突然、ミヤギさんは大きな声を張り上げながら、ダニエルに向かって次々とパンチやキックを繰り出します!すると・・・
なんと、ダニエルは無意識に身体が動いて、全部のパンチとキックをブロックしてしまうのです!!
今までやってきたワックスをふき取る動きやカベにペンキを塗る動きは、防御の技を身体にたたき込むための練習だったのです!!
そう、ダニエルは、「いつの間にか」強くなっていたのです!!
このシーンに、子供の頃の僕は鳥肌が立つほど興奮したのを覚えています。大人になった今でも、たまに見返しています。僕はこの、
「まったく違うことをしていたら、いつの間にか強くなっていた」
という状態を、「ダニエルさん現象」と名づけました。
「ダニエルさん現象」は、現実に起きるのか?
これを信じてクルマにワックスをかけた人は、きっと世界中にたくさんいるはずです。もちろん僕も、やりました!しかし、パンチを自動的にブロックできるようにはなりませんでした・・・
そして、実際に空手道場に通うようになってからは、本当に空手を身につけるために必要なものが何なのか?を知りました。
・パンチを打てるようになるには、パンチの練習が必要です。
・キックを打てるようになるには、キックの練習が必要です。
・パンチをブロックできるようになるには、パンチのブロックの練習が必要です。
・キックをブロックできるようになるには、キックのブロックの練習が必要です。
シンプルです。
そして、当たり前のことです。
ぜんぜん見当違いのことをしてたら、いつの間にか強くなっていた・・・なんてことはありません。
そして、ミヤギさんのワックスかけやカベ塗りは、完全に「映画の演出」だと気づきました。僕は実際に極真空手の黒帯の人たちとも話しましたが、
「雑用をしていたら、いつの間にか空手の達人になっていた」
という人には、ひとりも出会いませんでした。
これを聞いて、
「そんなの当たり前だろ?」
と思いました?
たしかに、格闘技の世界では、こんな練習方法はバカげて聞こえます。でも・・・英会話になったら・・・どうでしょうか?
英会話業界の「ダニエルさん幻想」
「英語を聞き流しているだけで、いつの間にか英語が口をついて出てくるようになります!」
そんな魅力的なフレーズで宣伝している教材が、ネットの広告によく出てきます。
「外国人を相手に、英語のシャワーを浴びていれば、いつの間にか聞き取れるようになります!」
そんなフレーズで宣伝している英会話スクールもあります。
「洋画を楽しく見ているだけで、英語が聞き取れるようになる!」
なんて学習法も聞いたことがあります。
これらに共通しているのは、
「勉強してる実感がなくても、いつの間にか上達している」
というコンセプトです。
これは、まさに
「雑用しているうち、いつの間にか強くなってるダニエルさん現象」
ではないでしょうか?
人は皆、無意識に「ダニエルさん現象」を求めている
人は、多かれ少なかれ、ラクをして人と違う結果を得られたらいいなぁ、という幻想を抱いています。そして、それを信じたい!という気持ちがあります。僕も、これらを全部試しました。最初の1年間でやったことは・・・
・毎週英会話スクールに通いました。
・外人バーに週3回通って、ネイティブの友達を増やし続けました。
・外国人の友達とのメールのやりとりは、すべて英語でした。
・クルマの中では、英語のCDをかけて、「聞き流し」を続けてきました。
・アメリカの人気ドラマ、「フレンズ」を毎日見てました。
・携帯の画面表示も英語にしていました。
そして、わかったこと。
「英会話の世界でも、ダニエルさん現象は、起きない」
ということです。
「毎日雑用をこなしてきたんだから、いつの間にか強くなってるはずだ!」
と信じて戦ってみたものの、すべてのパンチとキックをモロに食らって、立ち上がれないほどのダメージを受けました・・・
さらに、僕がこれまでに500人以上の英語学習者と接してきた中で、「ダニエルさん現象」を経験した人は、ひとりもいません。
たまに、ネットやテレビのCMで、「これをやっただけで、こんなにしゃべれるようになりました」的な感じでペラペラしゃべっている人を見かけますが、
「ホントかよ!!」
って突っ込みたくなります。
僕の予想では、彼らは、
① もともと強い。
(すでに別の方法で英語を習得している)
② 八百長で戦っている。
(あらかじめ決まったセリフを丸暗記して、カメラの前でいかにもフリートークのように見せて演じている)
のどちらかだと思います。彼らのひとりと実際に会って、ぜひ、
「一対一のタイマン英会話」
で戦ってみたいものです。
From Shinya (英語の達人養成ジム 師範代)
自己紹介は、こちら
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