From 師範代Shinya(新村真也)
(※僕がカナダで一人旅していた頃の体験談です)
(→前回のつづき)
モントリオールの「英語が思ったほど通じない世界」にだんだん慣れてきた僕は、ガイド付きのバス観光ツアーに申し込みました。
朝10時頃に出発のバスに乗り込むと、たくさんの観光客がすでに乗っていました。
アジア人はいません。みんな白人系の人たちばかりです。
50代後半くらいの元気の良い男性ガイドさんが、みんなにあいさつしました。
ガイドさん:「Good morning everyone!」
みんな:「Good morning!」
小学校の遠足のようなノリで始まります。
日本の場合、大人を相手にしたツアーでは、みんな静かに座っていることが多いのですが、ここではみんな元気いっぱいにはしゃいでいます。
ガイドさんは、常にハイテンションで、ジョークを織り交ぜて笑いを取りながら軽快にトークをしています。
ただ、僕の耳にはガイドさんの話す英語がフランス語にしか聞こえません。
ものすごいフランス語なまりが強くて、イントネーションがフランス語っぽいのです。
でも、よく耳を凝らして聞いていると、英単語が聞こえてきます。
「あ、やっぱり英語を話している」
そう気づいて意識を集中させて聞き取るようにすると、なんとなく英語が耳に入ってくる・・・そんな感じです。
もちろん、ジョークは何を言っているのか僕には分かりません。
でも、このバス全体に漂う、明るくて元気な雰囲気が、僕の昨日までの落ち込んだ気持ちを吹き飛ばしてくれて、とても居心地が良く感じられました。
観光地
バスツアーでは、モントリオールの代表的な観光名所を回りながら、所々でガイドさんが詳しい説明をしてくれるというスタイルでした。
本当は、ここでそのツアー内容の感想を詳しくお伝えしたいところですが、困ったことに、
「観光名所のどこへ行ったのか?」
「それはどうだったのか?」
「自分はお昼に何を食べたのか?」
などの記憶がまったくありません・・・
理由を考えてみると、実は、僕は観光にはまったく興味がありませんでした。
ただ、「せっかくモントリオールまで来たんだから、どこか行かなきゃ!」という気持ちになってバスツアーに申し込んだだけです。
そもそも、事前に観光名所情報をネットなどで調べるモチベーションもなかったので、お手軽に連れて行ってくれるバスツアーを選びました。
僕はカナダに来るまで「海外旅行」というものを一度も経験したことがなかったので、楽しみ方を知らなかったのかもしれません。
また、僕は学生の頃から歴史や建造物にあまり興味が無いので、見てもピンとこなかったのかも知れません。
理由はどうあれ、僕はこのバスツアーでの記憶はガイドさんの印象しかありません。
チップ
ツアー自体はそんなに長くはなく、半日くらいで終わりました。
朝10時くらいから始まって、15時くらいには戻ってきて解散になりました。
最後は、ガイドさんにみんなチップを渡しながらバスを降りていきました。
そうか!ここでもチップを渡すのか!
僕は慌ててポケットやバッグの中を探りました。
ここでチップを渡すことを考えていなかったので、小銭をどこにしまったか忘れてしまいました。
もたもたしていたら、僕が一番最後になってしまいました。
あった!!
財布の奥に1ドル札が3枚残っていました。
それをガイドさんに渡すと、ガイドさんはチップをジーパンのポケットにねじ込んで、笑顔で
「Thank you!」
と言いながら見送ってくれました。
チップ文化は、どうも慣れません。
いつでも小銭を持ち歩いておかなければならない不便さを感じます。
ガイドさんがポケットにチップをねじ込んでいるシーンを見て、僕は今さらながら、あることに気づきました。
カナダやアメリカでは、1ドル札があります。
日本では、一番小さな紙幣は千円です。
欧米では金額の小さな紙幣の1ドル札があるおかげで、チップの管理がしやすいのではないでしょうか?
チップの管理をしやすくするために、紙幣の形にしているのではないでしょうか?
もし、1ドルが日本の百円玉みたいにコイン型だったら、きっとお客さんもたくさんのジャラジャラ持ち歩かなければならなかったでしょう。
コインは重いし、音がするし、丸くて小さいので渡すときに落とす確率もあがります。
でも、1ドル札は軽いしかさらばらないし、手渡しするのにラクな作りになっています。
昔は日本にも百円札もあったようですが、今はありません。
でも、もし日本でもチップ文化があったとしたら、きっと百円札がなくなることはなかったでしょう。
バスツアーの価値
僕にとって、このバスツアーに参加したことには、大きな価値がありました。
「え?回った観光地の記憶すらないのに、参加した価値があったの?」
と思われるかも知れません。
参加した価値はありました。
それは、ガイドさんが話すフランス語なまりの英語を聞けたことです。
ガイドさんは、バスに乗っている間はほとんどずっと、しゃべり続けていました。
最初は僕の耳にはガイドさんの話す英語がフランス語にしか聞こえずに、まったく聞き取れていませんでした。
でも、さすがに5時間もぶっ続けに聞き続けていると、後半になる頃にはだいぶ耳が慣れてきていました。
フランス語独特のサウンドに惑わされずに、英単語だけにフォーカスして聞き取るコツが身についてきたのです。
このバスツアーに参加したことで、僕はその後のモントリオールでの滞在がラクになりました。
ホテルやお店の人たちの話す英語が聞き取れる率が上がったのです!
これは僕にとって、とても大きな一歩でした。
・・・つづく。
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