from 師範代Shinya
(→前回のつづき)
日本では「良い接客=丁寧さ」という図式があります。
お客さん目線での丁寧な接客をする店員さんは、
①敬語をたくさん使って話す。
②お願いしなくても、こちらの要求をくみ取って、さりげなく対応してくれる。(頼まなくても、要求を満たしてくれる)
③頭を下げる角度が深い。
などが代表格です。
でもアメリカ文化では、この3つはお客さんからの評価の対象になりづらいと、アメリカ人の先生から聞きました。
では、アメリカ文化では何が重要視されているのでしょうか?
それは、「フレンドリーさ」だそうです。
お客さん相手に、いかにフレンドリーに接するか?
これが最も大事なポイントだそうです。
キーワードは、
We are a part of us.
(あなたは、私たちの仲間です)
これが、アメリカ式の歓迎なのです。
だから、レストランでは店員さんが初対面のお客さんに対して、まるで友達のように接してきます。
僕がカナダにビジネス留学していた時にも、レストランの店員さんがやたらフレンドリーでした。
当時の僕は、店員さんたちのあまりの馴れ馴れしさに、違和感を感じていました。
世間話=フレンドリー
だからこそ、アメリカの店員さんたちはお客さんに対して、
How are you?
など、友達に接するような挨拶をしてくるのです。
そして、観光客と分かった時には、
Where are you from?
と出身地を聞いてきます。
そこで僕たちが日本人と分かったら、日本に関するちょっとした知識を披露したり、「アリガトゴザイマス!」など日本語のフレーズを発音して、こちらにフレンドリーさを示してくるのです。
しかも、彼らが英語を話すスピードは「現地の友達に話すのと同じぐらいの超速い英語」です。
さらに、話す時の英単語のチョイスも、「現地の友達に話すのと同じぐらいカジュアルな熟語や俗語」を使ってくることがあります。
英語初心者の場合、
「なんでこんな速い英語で話しかけてくるんだ!もっとゆっくり話してくれよ!」
「なんでこんなにカジュアルな英語で話しかけてくるんだ!もっとスタンダードな英語を話してくれよ!」
「なんでこんなにいっぱい話しかけてくるんだ!ゆっくり食べさせてくれよ!」
という気分になることがあります。
でも、これは彼ら流の「丁寧な接客」なのです。
日本とは全然違いますよね。
もし日本のレストランで初対面の店員さんが、
「やあ、調子はどう?」
「どこから来たの?あらそう!静岡から!私、友達が浜松に住んでるの。ウナギがおいしかったなぁ~!」
「今日は何食べる?このメニューはマジでイケてるから、頼まないと後悔するわよ!」
みたいに言ってきたら、ものすごい違和感です。
でも、アメリカやカナダのレストランでは、これが「良い接客」と捉えられるのです。
「初対面から友達のように接してもらえる=歓迎されている」
という感じ方をするのが、アメリカ文化だからです。
ここまで文化が違うと、日本流の「おもてなし」が違うイメージで捉えられてしまうのは、当たり前かもしれませんね。
丁寧さ=距離感
日本の丁寧さは、アメリカ人にとっては「心理的な距離感」に見えるそうです。
敬語を使いまくる日本式の接客用語は、アメリカ人の耳には
「あなたと仲良くなるつもりはありません」
という暗黙のメッセージに聞こえます。
そのため、アメリカ人が日本の接客を受けると、
「なんてよそよそしいんだろう・・・」
という違和感を感じる確率が高いそうです。
また、おじぎの習慣がない国の人の前では、どんなに深くおじぎをしても、何も伝わりません。
さらに、日本では良いとされている、
「お客さんからお願いされなくても、お客さんの要求をくみ取って、さりげなく対応する。」
というサービスも、あまり評価されないそうです。
アメリカやカナダでは異民族が一緒に暮らしているため、
・ちゃんと言わなきゃ伝わらない
・話し手に責任と主導権がある
という考え方がベースになっています。(日本とは真逆です)
そのため、接客のシーンでも、お客さんの要望を「雰囲気でくみ取る」のではなく、
「直接お客さんに言葉で聞いて、言われたことを実行する」
というスタイルです。
だから、よく店員さんはお客さんのテーブルに来て、
「料理はおいしい?何かして欲しいことはある?」
と聞いてきます。
お客さん側も、自分が要求した内容を実行してもらえた時に、満足します。
だから、店員さんが「お客さんから頼まれてないこと」をサービスとして実行しても、その気遣いにまったく気付いてもらえない確率が高いです。
そもそも「なぜそんなことをするんだ?」と思われて、評価が下がることさえあり得ます。
ここまで文化が違うと、「英語には敬語がない」と言われるのも納得です。
敬語がないわけではなく、「敬語が使われるシーンが日本とは違う」のです。
この文化の違いを理解することなく、英語→日本語訳、という図式で覚えても、英語を使いこなすことはできなしょう。
・・・つづく。
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