From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
最近TVや雑誌などで「10年後にAIに奪われる仕事」みたいな話題がよく出ています。
2018年のオックスフォード大学の研究で、
「今の小学6年生が仕事を探す年齢になる頃には、約47%の仕事がAIに取って代わられている」
というデータが発表されて、世界中の人たちが騒然としました。
その流れで、「AIが進化したら英語(外国語)を学ぶ必要がなくなって、英語を教える先生も仕事がなくなるのでは?」みたいな話題もよく聞きます。
でも、僕の考えは逆です。
同時通訳マシンが進化してたくさんの人たちが使うようになったら、僕は英語学習者の数は減るどころか増えると思っています。
その理由をお伝えします。
理由①AIは英語学習のきっかけになる
ポケトークのような同時通訳マシンがどんどん進化して小型&高性能になれば、それを興味本位で買った人たちが「せっかく買ったんだから、海外旅行に行こう!」となります。
実際、僕の知り合いで「ビジネスYouTube動画の作り方を教えるプロ」の酒井祥正さんは、新型ポケトークSを買ってすぐに機能を試したくなって、中国に弾丸旅行に行ったそうです。(ちょうど中国から帰って来た日にご本にからこの話を聞きました)
ポケトークのような同時通訳マシンは、日本で使っていてもあまり面白くありません。
外国人を相手にする仕事でない限り、自分が海外に行って使うことがほとんどだと思います。
それまで英語がキラいだったから海外旅行を避けていた人たちが、同時通訳マシンを手に入れたのをきっかけに海外旅行に行くようになったとしたら・・・
現地で機械を通してバッチリコミュニケーションを取れるようになったら・・・
おそらく、もっと「欲」が出てくると思います。
「もっと深い話がしたい!」
「今度は自分の言葉で話してみたい!」
と思うようになるはずです。
人間は「まったくできないこと」にはあまり興味がわきませんが、「少しできるようになったこと」や「ちょっと人より詳しくなったこと」に関しては、興味が増して極めようとする心理が働きます。
これを「好奇心のすきま理論」と呼びます。
人間は、自分にちょっと足りない部分、あと少しで手が届きそうな部分には強い興味がわくようにできているのです。
英語が苦手な人が海外で一人旅する時に、同時通訳マシンを使って問題なくコミュニケーションが取れるようになれば、その人にとって外国人は「恐れる対象」ではなく、「身近な存在」になっていくでしょう。
そして、「身近に感じる相手と自分の言葉で話してみたい!」という欲求が生まれるかもしれません。
また、同時通訳マシンから出てくる英語が部分的に聞き取れるようになれば、英語に興味がわいて「ちょっと勉強してみようかな、英語」という風になる確率が高いと思います。
理由②マシンを介した会話はぎこちない
どんなに同時通訳マシンの翻訳スピードが上がったとしても、どうしても実際の会話に比べるとテンポが遅くなります。
普通の会話なら、
①自分が相手に向かって話す
↓↓↓
②相手が反応して話す
という2ステップで進んでいきます。
でも同時通訳マシンを使った場合は、
①自分がマシンに向かって日本語を話す
↓↓↓
②マシンが英語に訳して読み上げる
↓↓↓
③それを相手が聞いてマシンに英語で返す
↓↓↓
④マシンが日本語に訳して話す
↓↓↓
⑤それを自分が聞いて理解する
という5ステップが必要です。
テクノロジーの進歩で翻訳スピードが上がっても、ステップ②と④が早くなるだけで、ステップ自体が減るわけではありません。
本物の同時通訳者のように、「言ってるそばからすぐ翻訳し始める」という神業は、AIにはできないでしょう。
なぜなら、日本語と英語はまったく語順が違うからです。正反対と言ってもいいぐらいです。
・私は それが 好き ではありません。
というように、結論を最後に持ってくる日本語。
・I don’t like it.(私は じゃない 好き それが)
というように、結論を最初に持ってくる英語。
これを「言ってるそばから同時通訳する」ためには、両者の性格やクセ、考え方などを知り尽くしている必要があります。
そのため、プロの同時通訳者は「下準備が8割」だそうです。通訳する相手のことをよく調べておかないと、これから言う内容が予測できないのです。
また、海外の人が毎回同じ同時通訳者を指名して仕事を依頼することが多いのも、それが理由です。
正確でスピーディーな同時通訳のためには、その人との付き合いの長さも大事なのです。
これは、さすがにAIには難しい領域だと思います。
だから、同時通訳マシンを介した会話では、必ずこの5ステップが必要になるのです。
・・・つづく。
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