【英語を話す力を求めて30年】

From  師範代Shinya(新村真也)
 
先日の日経新聞で、面白い記事を見つけたので、シェアします。
 
 
記事のトピックをザックリ一言で言うと、
 
 
「2020年からの大学受験改革が実施されるけど、それでホントに日本人の英語を話す力が変わるのかな?そうは思えないけど・・・」
 
 
という感じです。(かなりザックリ書きましたが)
 
 
大学受験改革というのは、「英語を話せる日本人」を増やすために、長年続いてきた大学センター試験を廃止して、代わりに民間英語試験を取り入れるという改革です。
 
 
この記事の著者は、鳥飼玖美子先生です。
 
 
僕が最初に鳥飼先生を知ったのは、NHKの「歴史は眠らない~英語・愛憎の二百年」という番組でした。
 
 
この番組は、すごく面白くて、ハマりました!
 
 
日本の英語教育が、いつ頃から始まって、どんな変化をたどってきたのか?
 
 
を丁寧に読み解いていく番組でした。この番組の観衆をしていたのが、鳥飼先生でした。
 
 
今回の記事も、日本の英語教育の歴史の視点から、今回の改革に疑問の声をあげる内容でした。
 
 
 

英語を話す力を求めて30年

実は、この手の改革は、30年前から定期的に起こっているそうです。
 
 
記事によると、こんな感じだそうです。
 
(以下、引用)
 
↓↓↓
 
1989年 中高オーラル・コミュニケーション
 
2003年 「英語が使える日本人」育成のための行動計画を発表
 
2008年 小学校の英語活動必修化(教科としてはカウントされない)
 
2009年 高校の授業を「英語で英語を教える」スタイルに変更
 
2017年 小学校5&6年は英語を教科として学ぶ
 
2020年 大学入学共通テストで民間試験を使う
 
 
(※引用文は、一部省略&加筆してあります)
ざっとまとめると、こんな感じです。
 
 
1980年代の30年前から、日本の英語教育は「英語が話せる日本人」を増やそうとして必死に改革を続けていたんですね。
 
 
特に、2000年代前半~なかばあたりに、「ALT」と呼ばれる「外国人の先生たち」が日本の小中学校に増えたのは僕も覚えています。
 
 
実は、ちょうどその頃は僕が英語学習を始めてしばらくした頃で、外国人の集まるバーに行くと、ALTの人たちがたくさんいました。
 
 
 

あんまり変わってない?!

そんな改革を繰り返してきたにしては、日本人の英語力はあんまり変わっている雰囲気はありません。
 
 
データで見ても、政府が打ち出した目標は、
 
 
・中3は英検3級以上が50%
 
・高3は英検準2級以上が50%
 
 
でしたが、実際には、2017年度のデータでは、
 
 
・中3は英検3級以上が40.7%
 
・高3は英検準2級以上が39.3%
 
 
だそうです。けっこう厳しいですね。
 
肌感覚でも、あんまり学生や日本人全体の英語力が上がっている印象はありません。
 
 
 

民間試験を使うのは無理がある?!

記事によると、大学入試センターが認定した民間試験は7種類だそうです。
 
 
でも、これらはそれぞれ、目的や内容が違います。
 
 
実施回数や受験料も違います。
 
 
それで公平性を維持できるのか?
 
 
という疑問があります。
 
 
英検とTOEICという2大テストを比べても、内容や出題傾向がまったく違います。
 
 
僕の印象では、これは「異種格闘技戦」です。
 
 
柔道、空手、ボクシング、レスリング、サンボ、ムエタイ、などの違うルールを持った格闘技の試合に出るようなものです。
 
 
確かにこれらは、同じ「格闘技」というジャンルではありますが、ルールが違えば勝ち方も違ってきます。
 
 
空手の試合で勝った人が、柔道の試合に出ても勝てるとは限りません。
 
 
英語でも同じです。
 
 
TOEICで毎回950点以上をたたき出せる人が、英検1級を受けた場合、必ず受かるとは限りません。
 
 
逆もまたしかり、です。英検1級はTOEIC換算で900点以上となっていますが、出てくるボキャや英文素材の種類が違います。
 
 
英検1級ホルダーがTOEICを受けても900点に届かない・・・なんてことも実際によくあります。
 
 
 

共通基準にはムリがある?

そんな不公平さを取り除くために、2020年以降の大学受験では、「CEFR(セファール)」という英語力評価基準を取り入れるそうです。
 
 
これは、ヨーロッパの方で生まれた基準で、
 
 
「違う言語のレベルを、ひとつのモノサシで測る」
 
 
ことを目標に作られたそうです。
 
 
ヨーロッパ圏では、英語やドイツ語、フランス語、スペイン語などが入り交じっているので、ひとりの人が多言語を話すのは当たり前です。
 
 
自分の言葉のレベルを表すのに、
 
 
「英語は英検5級レベルで、ドイツ語もドイツ語検定5級レベルです。」
 
 
と言われても、必ずしもこの2つの言語が同じレベルにあるとは限りません。
 
 
英検は1級~5級まであるので、5級が一番初心者レベルです。
 
 
でも、もしドイツ語検定が1級~10級まであって、そのうちの5級に合格している場合、その人は中級者レベルだと言えます。
 
 
なので、そんな矛盾をなくすために、ひとつのモノサシとして、CEFRが登場したのです。
 
 
「私は、英語もドイツ語もB2レベルです。」
 
 
という表現を聞いた場合、その人の話す英語とドイツ語はほぼ同じレベルだということになります。
 
 
でも、CEFRはあくまで、「違う言語を共通のモノサシで測る」ために生まれたものです。
 
 
英語という「ひとつの言語を7種類のテストで測る」時の基準にするために生まれたわけではありません。
 
 
なので、それを基準にするのには、ちょっとムリがあるのでは?
 
 
と鳥飼先生は言います。
 
 
 

僕の考え

僕は、自分自身は大学受験を経験していません。その上で考えることは、
 
 
「話せるようになりたいなら、話すトレーニングを授業でやるしかないのでは?」
 
 
と思います。そして、話すトレーニングというのは、ALTの先生を呼んで「英会話」をしたり、クラスメイト同士で英語で話すことではありません。
 
 
それらはすべて、スポーツで言えば「試合」です。
 
 
試合は楽しいですが、試合だけをどんなに繰り返しても、効果が出るのは超初心者の頃だけです。
 
 
そこから先は、必ず頭打ちになります。
 
 
知識を詰め込むだけではなく、試合をするだけでもなく、知識を「技術に変えるトレーニング」を学校で教えられるようになったら・・・
 
 
そして、そのトレーニング自体が評価の基準になったら(難しいかもしれませんが)・・・
 
 
きっと、英語を話せる日本人の数は増えていくような気がしています。
 
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