from 師範代Shinya
(→前回のつづき)(→この記事のシリーズを1話目から読む)
前回の記事では、この新刊本「英単語 Issue」が目指しているゴール「しなやかな発想で他者と上手に議論できる英語話者」についてお伝えしました。
日本人は世界の人達から見て、争いを避けることで有名です。
でも、「議論のスキル」という点で見ると、
①沈黙して自分の意見を言わない
もしくは、
②荒っぽい言い方で人格攻撃をしてしまう
という2極化する傾向があるようです。
これは特に、顔が見えないネット上で顕著に表れます。
僕も日本のYouTube動画のコメントと、海外のYouTube動画のコメントを見比べていて、確かにそのことを感じます。
日本語コメントに多い反論=人格攻撃
YouTubeのコメント欄は、「ユーチューバーが動画内で言ったことに対して同意や反論など」がメインですが、日本と英語圏では明らかに雰囲気が違います。
日本語のコメント欄は、反論がどうしても「人格攻撃」になっている確率が高いです。
たとえば、
「そんなこと言うなんて、おまえはバカか!」
「そんな考え方をしているおまえは、性格の悪いやつだ!」
「あなたは間違っている!」
といったような発言は、人格攻撃です。
日本のYouTubeやツイッターなどのコメント欄には、こういった人格攻撃をする言葉が多くあります。
「あなたは頭が悪い」「あなたは性格が悪い」「あなたは間違っている」といった含みを持つ言葉は、相手の人格を否定し、上下関係を感じさせるニュアンスがあります。
そのため、一人が「おまえはバカか!」とような人格攻撃的なコメントをすると、それに対してまた別の人が反論して、「そんなこと言うお前の方がバカだ!」というようなことを言い、そこにまた別の人がどちらかに味方して、・・・という形で炎上していくケースが多くあります。
そのため、動画をアップしたユーチューバー本人も、コメント欄を無視して何も言わない、という対応をするしかなくなります。
英語のコメントに多い反論=人格と意見を切り分ける
一方で英語のコメント欄では、反対意見を言うときに、相手の人格を否定するような言葉をぶつけることは少ない印象です。
英語のYouTubeのコメント欄も、「ユーチューバーが動画内で言ったことに対して同意や反論など」がメインですが、日本と英語圏では明らかに雰囲気が違います。
英語のコメント欄の反論には、「おまえはバカ」とか、「そんなこと言うヤツはアホ」とかいうような、人格攻撃の英単語があまり出てきません。
その代わりに、
「自分はあなたとは違う意見を持っている。自分がそういう考えに至った理由は、これだ。」
などを論理的に述べていることが多いです。
英語のコメントは、相手の「人格」と「考え」を分けて受け止めているように感じます。
「あなたの人格は認めているし、尊敬している。その上で、私はあなたとは違う考えを持っている。」
というようなメッセージが伝わってくることが多いのです。
そういう書き方をされると、ユーチューバー本人も返信がしやすいので、
「ほう、確かにそういう考え方もあるね。面白い。その上で、私はこう考えているよ。」
というような、建設的な議論が展開されているケースをよく目にします。
そして、2人がやりとりをしている最中には、他の人が便乗してコメントしてくることはめったにありません。
みんな静かに見守りながら、2人のやりとりが終わった後に、賞賛のコメントを送ったりしています。
こういうスタイルの反論のやりとりは、日本語ではネット上のコメントであまり見かけません。
もちろん、英語でも理不尽なアンチコメントや、マウントを取ろうとするコメントは一定数あります。
(ちなみに、ファンの反対語の「アンチ」は和製英語で、英語では 「hater =嫌う人」という言葉を使います)
ただ、それ以上に「上手な反論のやりとり」を目にする機会が多い印象です。
西洋の教育
英語圏の国では、小学校のうちから生徒達に議論をさせることが多いそうです。
1つのトピックに対して賛成派と反対派に分けて、それぞれの立場から意見を主張させます。
終わったら、今度は賛成と反対を入れ替えて、同じメンバーでまた議論させるそうです。
この授業の中では、「自分自身が賛成派と反対派の両方を経験できる」ので、それぞれの視点を学ぶことができます。
自分という人格は変わっていなくても、賛成にも反対にもなり得る。
その経験を子供の頃からすれば、「意見の違い=人格の優劣」といった図式が植え付けられることはなくなるでしょう。
その結果、
・「自分と違う意見を持つ人をいったん受け入れて、それでも屈することなく、自分の意見を主張する」
・「相手の意見と人格を切り分けて考える」
という、バランスの取れた反論スキルが身に付くのかもしれません。
カナダでの驚き体験
僕自身も、カナダに3ヶ月間留学した時に、この手の「賛成派 VS 反対派」の議論練習の授業を、何度か経験しました。
みんな自分の意見をガンガン主張してくるので、僕は圧倒されてしまいました。
授業が終わると、さっきまで議論でバチバチやり合っていた人同士が、仲良く一緒に笑いながらランチを食べていました。
それを見て、僕は不思議な気分になりました。
こういう文化の中で生まれ育った西洋の人達が、YouTubeのコメント欄やツイッターなどで「人格攻撃」をし合う日本人同士のやりとりを見て、驚くことが多いそうです。
(最近のSNSは翻訳機能が発達しているので、日本語のコメントも世界中の人が読めます)
人種差別
人格攻撃は、西洋文化では「人種差別」と同じカテゴリーに入るそうです。
自分たちと見た目が違う、文化が違う、考え方が違う、ということを受け入れられない人達が、人種差別をします。
人種差別をする人はいつの時代でもいます。
でも今は、社会的にはかなり強いタブーとされています。
そのタブー行為を、日本人同士がSNS上で行っているように見えるそうなのです。
今は、日本語で日本人同士でやり合っている内容も、SNSの世界では翻訳されて、世界の人達から見られてしまいます。
この話をオンライン英会話の先生たちから聞いた時、僕はかなり衝撃を受けました。
穏やかで調和的な文化を持つと思われている日本人同士が、同じ民族間で人種差別のような攻撃をし合っているのを見て、驚いたそうです。
(先生達もショックを受けて、僕に翻訳内容が合っているのか確認してきたのですが)
僕は、日本人としてくやしい気分になりました。
日本人はリアル社会ではそんなにバチバチやり合わないのですが、みんなに見られているネット上でこそ、上手な議論ができるようになって欲しい!自分もなりたい!と思いました。
ちょっと大げさかもしれませんが、反対意見をぶつけ合わせる議論が上手になるための練習用テキストとして使って欲しい!という願いが、この英単語Issueには込められている気がします。
次回は、この本の詳しい中身をチェックしていきます。
・・・つづく。 (→この記事のシリーズを1話目から読む)
「英単語 Issue :環境編800」はこちら
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