From 師範代Shinya(新村真也)
(※僕がカナダで一人旅していた頃の体験談です)
(→前回のつづき)
僕のトロント滞在最終日がいよいよやって来ました。
僕は、今までお世話になったジェフにお礼をするために、ジェフの仕事を手伝わせてもらうことにしました。
ジェフの仕事は、Tシャツのデザイナーです。
ちょうど今年、独立したばかりで、新規事業としてこれをスタートさせたそうです。
似顔絵Tシャツ
ジェフは、ちょっと変わったデザインのTシャツを作っていました。
どんなデザインかというと、無地のTシャツの真ん中に、人の似顔絵が「ドーン!」と描かれるのです。
似顔絵は、ジェフ本人が描きます。
その似顔絵のモデルは、芸能人ではありません。
一般人です。
Tシャツを買う人は、まず、ジェフに「この人の顔を描いて欲しい」という顔写真を渡します。
それは、自分自身の顔写真でもいいし、友達の顔写真でもOKです。
ジェフはその顔写真を元に、リアルな似顔絵を描きます。
そして、それをTシャツにプリントアウトして渡すのです。
つながりの輪
受け取った人は、それを自分で着たり、人にプレゼントします。
すると、不思議なことが起こります。
たとえば、僕が仲の良い友達のAさんの似顔絵のTシャツを着て街を歩いていたとします。
すると、Aさんの友達で僕の知らないBさんが、僕のTシャツを見て、気づきます。
「あれ?あれはAさんの顔じゃないか?」
Tシャツには、本人の名前を入れることができるので、確認することができます。
顔が似ていて、なおかつ名前も一緒。
これは間違いない!あの人は、Aさんの友達では?と思い、Bさんは僕に話しかけます。
Bさん:「もしかして、それはAさんですか?○○在住の。」
僕:「そうですよ!もしかして、あなたもAさんのお友達ですか?」
Bさん:「そうなんです!Aさんとは、大学の頃から知り合いでして・・・」
僕:「そうなんですか!僕は、最近始めたダンススクールでAさんと知り合ったんですよ!」
という感じで、会話が進んでいきます。
すると、Aさんを直接通さずに、僕とBさんが知り合いになれます。
そうやって、だんだんと「人の輪」が広がっていきます。
もし、ジェフの作った似顔絵Tシャツを着ている人たちが街にあふれたら・・・
それは人と人とをつなげるツールになるかもしれません。
人間関係の輪の法則
よく、こんなことが言われます。
「もし、ある人と知り合いになりたかったら、街にいる人に声をかけて、その先にいる人を6人たどれば、最終的にはその人に行き着く」
そして、この法則は地球上の誰とでもつながれるパワーがあるそうです。
以前これをダウンタウンの松本さんが実験しているTV番組がありました。(たしか、ダウンタウンDXだったような気がします)
ジェフは、この法則を使って、「似顔絵Tシャツで世界中の人たちをつなげるプロジェクト」を立ち上げたのです。
ユニークな視点ですよね。
ジェフの職場
僕とジェフは、ジェフの家からクルマで20分くらいのところにある作業場に向かいました。
作業場に着くと、そこにはカラフルなTシャツが何百枚も入った段ボールが、山積みになっていました。
ジェフは、その段ボールを開けて、まとめてドカッと出しました。
どれも工場から出荷されたばかりのようで、かなりしわくちゃです。
ジェフ:「これを、一枚一枚、プレスしてシワを伸ばしていくのが第一ステップなんだ。」
そう言って、Tシャツを2枚取ると、作業場にある大きくて平らなプレス機の上に広げて置きました。
そして、上からフタをかぶせて押しつけました。
フタから水蒸気がシューッと上がって、熱気が僕らの顔にも当たりました。
3秒くらいたってから、ジェフがプレス機のフタを上げると・・・
おぉ!スゴい!!Tシャツのシワが見事に取れています!
ジェフ:「これをやってシワを伸ばしたら、こんどはキレイにたたんでいくんだ。」
そう言って、ジェフはTシャツをたたみました。
日本での職業経験
僕は、この7年間、ジーンズショップで働いてきました。商品整理でTシャツをたたむ作業は、これまで何千回もやってきています。
作業台を使わずに、空中で素早く、そしてキレイにたたむことができる自信があります。
まさか、日本での職業経験が、こんなタイミングで役立つときが来るとは、思いもしませんでした!
僕が作業台を使わずにTシャツを素早く畳んで見せると、ジェフは「Wow!」と言って驚きました。
これまでの会社の同僚の間では、Tシャツたたみは「できて当たり前」の技術でしたが、業界の外側の人が見たら、これは職人芸のひとつかもしれません。
僕は、プレス機でガンガンTシャツのシワを伸ばしながら、どんどん畳んでいきました。
僕は単純作業は好きな方ではありませんが、「ジェフに恩返しできるチャンス!」と思うと、うれしくて一心不乱にTシャツをさばいていきました。
・・・つづく。
P.S.
この時の写真が出てきたので、今回の記事のトップ画にしました。当時のジェフ&僕の写真です。
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