From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「アクション俳優になろう!」と思って「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
僕がミュージカル女優のM先生のクラスを受け始めてしばらくたった頃のこと。
元から少なかったクラスメイトがだんだん減っていって、ついにT君と僕の2人だけになりました。
M先生のレッスンは特別に厳しいというわけではありませんが、おそらく他の人達が期待していた「歌のレッスン」とは違ったのでしょう。
タレントスクールで行われる「歌のレッスン」というと、「マイクのあるスタジオで、今風のポップスを歌う練習」をするイメージがあります。
でも、M先生はミュージカル女優です。
レッスン内容は生声で響かせるテクニックを教えるのがメインでした。
学校の音楽の授業
さらに、使う楽曲は「エーデルワイス」などの昔の西洋の名曲がメインでした。
M先生はピアノも上手なので、僕らはピアノの伴奏に合わせて昔の曲を歌いました。
選曲やピアノの音を聞いていると、「小中学校の音楽の授業」を思い出します。
今だったら「あ~懐かしいなぁ!」と思いながら楽しめると思いますが、当時の僕ら生徒の年齢層は20才前後です。
中学を卒業したのが5年前。そんなに昔の記憶ではありません。
おそらく、「イケてる今風の歌のレッスン」を期待してこのレッスンを取った人達には、物足りなかったんだと思います。
アカペラの恐怖
さらにM先生は、僕ら生徒1人ひとりに「アカペラ」で歌う練習もさせました。
これがけっこう恥ずかしいのです。
「静かな部屋の中で、先生と他の生徒達が注目する状況で自分の歌声だけが鳴り響く」
という体験は、慣れないとかなり精神的にキツいのです。
台本のセリフを言うのと違って、歌には音程やリズムがあります。
ちょっとでも音程やリズムがずれると、すぐに分かります。
僕らにとっては演技の練習よりも、アカペラの練習の方がずっと難しく、恥ずかしく感じました。
カラオケ世代
この頃、僕の世代の人達にとってはカラオケボックスが全盛期でした。
僕が高校に入った頃から「カラオケボックスに行くのがイケてる今風の若者」というイメージが定着し始めていました。
高校を卒業して社会人になってからは、「二次会と言えばカラオケ」という流れが当たり前になりつつありました。
カラオケには「ごまかし機能」がたくさんあります。
声にエコーをかけたり、ちょっと遠くで声が聞こえるような効果で「ごまかす音声」になります。
また、音楽も大きめなので、多少音程が外れてもうまくかき消してくれます。
カラオケボックスには「歌が下手な人でもうまく歌っている風に聞こえる仕組み」がいっぱいです。
そんな環境に慣れている僕らの世代の男女にとっては、自分の生声でアカペラで歌うのは、かなり度胸がいりました。
音程を外さずに歌うのはかなり難しいです。
正直、僕らみんな音程が外れまくりでした。
自分のフルパワーの歌声の下手さが自分で分かることは、ツラい体験でした。
それが、クラスメイトがどんどん減っていった理由だと思います。
#最初から期待していなければ大丈夫
一方で僕とT君は、これまで歌にはまったく興味がなくて、カラオケも好きではありませんでした。
そもそも僕はアクション俳優を目指してこのタレントスクールに入ってきました。
アクション俳優と歌は、最も遠い存在のような気がします。
(ジャッキーチェンは自分の映画の主題を歌ったり、CDを出したりしていますが、これはおそらく珍しいケースです)
T君も、歌にはまったく興味がなくて、カラオケに誘われても断ることが多いと言っていました。
そんな「カラオケ嫌い」の僕らにとっては、アカペラで歌おうが、カラオケで歌おうが、難易度の違いは一緒でした。
むしろ、レッスンの方が歌いやすいと感じました。
カラオケでは知っている曲がほとんどないので歌えませんでした。
でもM先生の選曲は「小中学校の頃に授業で習ったことのある曲」が多いので、少なくとも音程はなんとなく覚えていて、歌いやすく感じました。
僕とT君は、最初から「自分の歌唱力に期待していない状態」でした。
そのため、自分で自分の下手な歌声を聞くのがあまり苦になりませんでした。
まあ、こんなもんでしょ?
という感じです。
でも、他のクラスメイトは音程を外すと途中で歌うのをやめてしまったり、顔が真っ赤になって緊張しているのが伝わってきました。
歌うことの気持ちよさ
音程を外しまくりながらでも全力で歌っていると、とても良い気分になりました。
思い切り声を出して歌うことが、こんなに気持ちが良いことだとは!!
カラオケでもほとんど歌ったことのなかった僕とT君は、このレッスンで初めて「歌うことがストレス発散になる」ことを体験しました。
演技のセリフを全力で読み上げるのとは、また違う快感でした。
僕らはすっかりM先生の歌のレッスンが気に入ってしまいました。
・・・つづく。
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