From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
職場の先輩のFさんに「お台場デートコースの実地訓練」に連れて行ってもらった僕は、すっかり自信がつきました。
これまでの僕は行き当たりばったりで、デートに誘った女性を「どこに連れて行って、何をするか?」のプランがまったくありませんでした。
でも今はFさんのおかげで、
「イケてる若者スポットのお台場で、今話題のシナモンロール専門店シナボンで、時代の最先端の味を体験しないかい?」
という誘い方ができるようになったのです!
大きな武器を手に入れた僕は、さっそく手始めに職場の大学生アルバイトの女子たちに「シナボンを食べたこと」を自慢しました。
僕:「シナボンって知ってる?」
女子①:「え?シナボン??知らないです。なんですか?○○知ってる?」
女子②:「知らなーい。シナボンてカワイイ響きですね。なんですか?それ?」
僕:「え・・・と、シナモンロールの専門店なんだけどね。お台場に一号店ができたばっかりらしくて。まだ情報が早すぎて広まってないのかな?」
女子①:「シナモンロール?ふ~ん、そんなに人気なんですか?」
僕:「ってFさんからは聞いたんだけど、大学生の間で話題になったりしてない?」
女子②:「聞いたことないですね。新村さんシナモン好きなんですか?」
僕:「いや、好きではないんだけどね。まあ、何て言うか、時代を先取りしようと思ってFさんとお台場で食べてきたんだよ。」
女子③:「え?男2人でお台場デートですか?(笑)」
僕:「まあ、色々あってね(笑)そっかぁ・・・シナボンまだ知らないかぁ・・・」
他の女子大生メンバー5人にも話題を振ってみましたが、誰もシナボンのことを知りませんでした。
彼女たちは年齢的にMさんと近いので、おそらくMさんのリアクションも同じだと思われます。
てっきり、
「知ってる!知ってる!シナボンね!私、最近行きたいと思ってたんだ~!」
みたいなリアクションを期待していたので、ちょっと拍子抜けしました。
こうなると、Mさんに対して「シナボンとは何か?」を魅力的にプレゼンしなければなりません。
さっそくFさんにみんなのリアクションを報告すると、
「いや~実は俺も、さっきミーティングが終わった後に話題にしてみたんだけど、誰もシナボン知らなかった(笑)まだ早すぎて静岡まで情報が広まってないのかな~」
と言っていました。
新し過ぎる商品は売りにくい
ちなみに、これは何年も後になってからマーケティングを学んで知ったことですが、「今までにない、まったく新しい商品」というのは、初期の頃は売るのが難しいそうです。
もちろん、新しいコンセプトは当たればデカいし、その商品が普及した時には「業界をリードする存在」になれるというメリットはあります。
ただ、あまりに新しすぎると人々に理解してもらうのに時間がかかります。
・この商品のどこがいいのか?
・これでどんな風に生活が便利になるのか?
・自分にとってどんなメリットがあるのか?
などが明確になっていないと、売るのが難しいのです。
その結果、せっかくの画期的な発明も人々に理解されないまま、売れずに資金不足で生産中止になってしまう・・・
ということがけっこう起こるらしいです。
もちろん、シナボンはアメリカで成功したからこそ、日本に進出してきたのでしょう。
そして、今ネットで調べてもシナボンのお店は日本にあります。
ということは、確実に需要があって利益を上げ続けている証拠だと思います。
僕は分かりませんが、どこかの時点で注目されてブームになったのかもしれません。
でも、少なくとも僕がMさんをお台場デートに誘おうとしている時点では、シナボンはまだ、
「東京の最先端でアンテナを張っている女子しか知らない店」
だったのかもしれません。
シナボンが武器にできない!
ということは、シナボンを武器にしてMさんをお台場デートに誘うことはできない、ということです。
しかも僕は、シナモンが苦手です。
正直、シナボンのシナモンロールを食べたときにも美味しいとは全然感じませんでした。
自分が美味しいと思ってないものを魅力的にプレゼンするのは難しいです。
どこが良いのか?が分からないからです。
代わりにシナモン好きなテレビレポーターや雑誌記者が取材して情報を拡散してくれていれば良いのですが、当時はまだ新しすぎてそういった食レポ的なものは見当たりませんでした。
くまなく探せばあったかもしれませんが、自分のパソコンも持っていなかった当時の僕には、そんな情報収集力はありませんでした。
僕はシナボンに頼るのはやめて、「お台場」という地の利を活かす決心をしました。
・・・つづく。
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