英会話を始めるのに、立派な目標は必要なのか?

 

遠いゴール

28才の誕生日を目前に控えた、1月のなかば頃のこと。街の中は、年末年始の浮かれたムードが終わって、だいぶ落ち着いてきています。

僕はその日、英会話スクールのドアの前に立っていました。新しい趣味を始めることに、ワクワクしています。英会話スクールの扉を開けると、明るいロビーの光景が広がりました。

「あ、こんにちは、電話で予約した、新村です。」

「あ!こんにちは、新村さん!」

カウンターから、感じのいい女性の受付係の人が声をかけてきます。僕は、初めて入る英会話スクールの雰囲気に、少し緊張しながら、その受付係の女性と軽く話をしました。

いきなり外国人が出てきたらどうしよう?とドキドキしていたので、相手が日本人でちょっと安心しました。その後、小さな部屋に通されました。

そこで、さっき受付で話した女性に、30分くらい、僕の英語学習の経験や目的を聞かれました。

 

僕の正直な理由


 「どうして英語を始めようと思ったんですか?」

僕:「新しく何か趣味を始めたいなと思いまして。」

「なるほど!趣味で英会話を選んだ理由は特にありますか?」

僕:「実は、こないだ読んだ雑誌に、『女性に出会える習い事ランキング』が出てて、その中で1位が料理教室、2位が英会話スクールって書いてあったんです。」

「へー!!そうなんですか!英会話が出会いの場2位ですか!」

僕:「はい。僕は仕事がジーンズショップの店長をしてるんですけど、休みが不定期で、なかなか女性と出会える機会が少ないんです。なんで、習い事をして自分の生活の行動範囲を広げようと思いました。」

なるほど!目的が正直ですね(笑)」

僕:「はい、隠しても、どうせバレますから。」

あはは!ところで新村さんは、今まで英会話を習ったことはありますか?」

僕:「いえ、ありません。仕事でも必要ないんで、完全に趣味です。」

「なるほど。じゃあ、経験はゼロですか?」

僕:「あ、でも、ちょっと準備はしてきましたよ。英会話やろうって思い立ったのが、去年の秋なんです。」

「そうなんですか。」

僕「でも、そのときは年末シーズン前で、店が忙しかったんで、とりあえず、NHKのテキストを買って、すきま時間で英語に触れるようにしてました。」

「わかりました!ちょっと勉強してたんですね!じゃあ、今日の体験レッスンは、外国人の先生にやってもらいましょう!」

僕:「マジすか?!お、お願いします!」

「ちなみに、もし入るとしたら、どんなクラスをご希望ですか?」

僕:「できるだけ生徒がたくさんいて、値段の安いクラスにしてください。英語の上達よりも、新しい出会いが目的なんで・・・」

「ですよね(笑)わかりました。じゃあ、まずは、体験レッスンで今の新村さんの会話レベルを確認させてくださいね。」

僕:「は、はい!お願いします!」

・・・そして僕は、生まれて初めての外国人とのマンツーマン会話を体験することになりました・・・(次回につづく)

英会話を始めるのに、立派な目標は必要か?

英会話を始めたばかりの人や、しばらく英語を勉強している人から、よくこんなセリフを聞くことがあります。

「私は、英語を勉強するのに、これといった目標がないんですよ・・・」

「仕事で英語を使うわけでもないし、海外旅行も、今は行く予定ないし・・・こんなんじゃ、伸びないですよね?」

このセリフの背後にあるのは、「英語学習の目標が低かったり、目標そのものがない人は、モチベーションが続かず、伸びない」という考え方です。

 

でも、それって本当でしょうか?

今のお話でお伝えしたように、僕が英会話を始めた動機は、「女性との出会い」でした。思いっきり不純な動機です。ぶっちゃけ、英語と関係ありません。

正直、この時の僕は、英会話のをマスターすることへの本気度は低かったです。それでも、数年後には英検1級&TOEIC900点を超えるまでになりました。なぜでしょうか?
 
  
今思えば、僕は最初に大きな目標がなかったことによって、英語の習得に成功したんだと思います。

 

僕が大きな目標なしでも英語学習がうまくいった2つの理由

理由①:フットワークが軽かった。

僕は、最初から大きなゴールがなかった分、気軽に英会話を始められました。思い立ってすぐに、行動に移すことができたのです。もし僕が、「英語学習を始めるには、人前で自慢できるようなカッコよくて立派な理由が必要だ!」と思っていたとしたら・・・

「それが見つかるまでは、英語を始めるのを先のばしにする。」

という考え方になっていたでしょう。しかし、それではいつまでたっても始めることはできません。大きな理由がなかったからこそ、

「なんとなく興味があるなぁ・・・」

という気持ちがわき上がってきた時点で、

「よし!とりあえず、やってみよう!」

自分を信じる (2)

と、すぐ行動に移すことができました。あまり深く考え込まずに、すぐ英語学習をスタートすることができたのです。

英語の習得は、マラソンのようなものです。短距離ダッシュではありません。のんびり&ゆっくりでも、続けていれば、それなりに伸びていきます。

逆に、毎日何時間も詰め込み学習をしたからといって、短期間で急にしゃべれるようになるものでもありません。どうせ習得に時間がかかるなら、来年より今年から始めた方が、早く上達します。それは、英語だけに限ったことではありません。どんな習い事にも言えることでしょう。

 

理由②:ゆっくりとしたペースで始めた。

僕は、英語を習う理由がユルかったので、最初のうちは1日10分くらいの短時間から学習をスタートしました。今思えば、そのおかげで、生活の中に「英語の時間」が少しずつ無理なく入ってきました。

もし、僕が大きな目標と期限をかかげて、

 
「よし!今日から毎日2時間、英語を勉強するぞ!」

「1年後には、TOEIC730点を取るぞ!!」

といった感じでいきなり英語学習を始めていたら・・・典型的な「燃えつき病」にかかっていたでしょう。人間は、急に今の生活スタイルを変えようとすると、「脳の現状維持メカニズム」が働いて、生活パターンを元に戻そうとします。

脳みそ②

そうすると、脳が自動的にモチベーションを下げてしまうのです。一方、ゆっくりと小さな一歩から踏み出した場合は、息切れしづらいのです。

ゆっくり始めると、あなたの生活の中に「英語学習の時間」が無理なく入ってくるので、「脳の現状維持メカニズム」が発動しません。モチベーションも維持しやすくなります。

疲れないので、コツコツと続けていくことができます。
その結果、英語力は確実に伸びていきます。

オーバーワークになっている時は、たいてい、無理して早急な結果を追い求めているときです。そして、人はあまりにも「結果」にこだわり過ぎていいる時は、逆に実力が発揮できなくなります。

もし、あなたが今、英語学習に行き詰まっている、モチベーションが落ちていると感じているなら、ここであえてペースを落としてみるのもいいかもしれません。

 

心の中に自然にわき上がってくるもの

もし、あなたが今、英語学習の目標が

「人に言えるほど立派なものではない」

と感じているとしても・・・

気にする必要はありません。もちろん、長く続ける中で、いずれはしっかりした「目的意識」が必要になるステージが来ます。

でもそれは、少なくとも「最初の頃」には必要ないし、むしろさっきの2つの燃え尽きパターンに陥ってしまう危険すらあります。
 
 
最初は余計なことは考えずに、シンプルに、「少しずつ英語が上達するプロセス」そのものを楽しみましょう。

あなたの英語力が上がるにつれて、それまで考えつきもしなかったワクワクする「希望の光」が見えてきます。

そして、「英語を使って何がしたいか?」というゴールが、自然と心の奥底から、わきあがってくる日がやってくるでしょう。

差し込む光

From  Shinya
(英語の達人養成ジム 師範代)
自己紹介は、こちら

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