【モントリオールで予想外の試練!】

From  師範代Shinya(新村真也)

(※僕がカナダで一人旅していた頃の体験談です)

(→前回のつづき)

カナダのVIA鉄道に乗ってモントリオールに着いた僕は、さっそくダンが予約しておいてくれたホテルに向かいました。

 

建物はとても高級な雰囲気です。

 

大きな回転式のドアのある入り口から中に入ると、大理石の床の上と重厚な作りのカウンターが見えました。

おそるおそるフロントデスクに近づいていくと、50代くらいの白髪まじりのちょっと怖そうな雰囲気の白人男性が声をかけてきました。

 

「○△□!」

 

ん?

 

まったく聞き取れません。

 

これは・・・もしかしてフランス語か?

 

僕はこれまで、フランス語を聞いたことがありませんでした。

 

思わず聞き返しました。

 

Sorry?

 

すると、その男性は、

 

(あ、こいつはフランス語はしゃべれないんだな)という表情をしました。

 

なんというか、明らかに見下したような表情をしたのです。(少なくとも、僕にはそう見えました)

 

そして、英語で話してきました。

 

「May I have your name, sir?」

(お名前をいただけますか?)

 

その男性のしゃべる英語は、明らかにフランス語なまりがありました。

 

イントネーションや舌の使い方が、それまで僕がカナダで聞いてきた英語とは明らかに違いました。

 

その男性の発音と態度に動揺した僕は、思わず、

 

「My name is Shinya!」

 

と言いました。

 

名前の使い方

英語圏では、自己紹介をする時には下の名前を使うので、苗字を使うことはありません。

 

僕が3ヶ月前にカナダに来て以来、人前で苗字のNiimuraを言ったことは一度もありませんでした。

 

なので、この時も下の名前だけ言いました。

 

ホテルやレストランの予約

でも、本当はホテルやレストランで予約したときには、フルネームか名字を言うのがルールです。

 

でも、僕はこのとき、そんなルールはすっかり頭の中から抜けていました。

 

そして、そのフロントの男性にShinyaとだけ伝えたのです。

 

その男性は、しばらくパソコンで検索した後、僕に向かって言いました。

 

「あなたの名前は予約リストにありません。念のためスペルを教えていただけますか?」

 

僕は焦りながら、デスクの上に置いてあるメモ用紙に「Shinya」と書いて見せました。

 

男性はもう一度検索しましたが、やはり出てきません。

しばらく気まずい空気が流れた後、男性が聞いてきました。

 

「Shinyaというのは、苗字ですか?それとも名前ですか?」

 

僕:「あ、名前です。苗字はNiimuraです。」

 

すると、その男性は大きなため息をつきながら、頭を横に振りながら小さく笑いました。

 

(ルールを何も分かってない外国人め!あ~、面倒な客に当たっちまったぜ~)

 

という心の声が、その態度に表れていました。

 

僕の名前をNiimuraで検索したらリストにヒットしたようで、カギを渡されました。

 

出だしでつまずく

僕はこの時点で、イヤな気分になっていました。フロントデスクの男性の、僕をバカにしたような対応にイラ立っていました。

 

そして、ホテルのチェックインという本来カンタンなはずの作業すらスムーズにできなかった自分自身に嫌気がさしていました。

 

これまで、異国で生きていく自信がだいぶ付いてきたと思った矢先の出来事だったので、ダメージはなおさら大きく感じます。

 

僕は、モントリオールをナメていました。

 

バンクーバーで仕事をして、トロントで初対面の現地人たちと溶け込んで遊んできた経験に比べれば、モントリオールのような観光地で一人旅するのなんて、楽勝だと思っていたのです。

 

こっちは「もてなされる側」「お金を払っている側」なんだから、丁重に扱われて当然だ!ツラい思いをすることなんて、あり得ない。

 

そう思っていたのです。

 

日本の常識

日本には、「お客様は神様です」という言葉があります。

 

この言葉はサービス業全般で使われるようになっていますが、実はこの言葉を日本で一番最初に使ったと言われる歌手の三波春夫さんは、

 

「演者として、ステージ上で雑念を払って芸の披露に集中するために、お客さんを神様と考えて、神様の前で歌っているんだ。」

 

という意味で使ったそうです。

 

それがいつの間にか拡大解釈されて、サービス業全般において、

 

「お金を払っているんだから、俺の方がエラい!」

 

みたいな感じになっています。

 

僕は前職で長くサービス業をしていたので、お客さんにそういう横柄な態度を取られることが何度かありました。

 

そんな職業経験から、僕自身は自分がお金を支払う立場になったときには、「自分の方が上」みたいな感覚はないと思っていましたが、やっぱり甘えはあったんだと思います。

 

「お金を払う側は、何でもやってもらえる。」

 

「お金を払えば、後は大船に乗ったつもりでゆったり構えていられる。」

 

みたいな甘えです。

 

でも、実際には海外ではそういった感覚は通用しないことが多いです。

 

今回のモントリオールで滞在は、僕の中のその甘えた根性を思い切り叩きのめされる旅になりました。

 

ホテルでのチェックインの出来事は、その始まりに過ぎないとは、この時には思いもしませんでした・・・

 

・・・つづく。

 

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