from 師範代Shinya
(→前回のつづき)
僕がまだ「聞き流し英語信者」だった頃のこと。
英語のシャワーを浴び続けるために、僕は週3回ペースで外国人バーに通っていました。
その夜は平日でお客さんが少なく、店内にはバーテン以外にはオーストラリア人男性が1人と、日本人は僕ともう一人の日本人女性だけでした。
BGMも静かで、3人でまったりした感じで過ごしていました。
僕も日本人女性も、英語力のレベルは近くて、お互いに「あまり聞き取れないし、話せないけど、場慣れしている」という状態でした。
僕と日本人女性は、普通に日本語と英語をごちゃ混ぜで話していました。(外国人バーでの会話あるあるです)
オーストラリア人男性はほとんど日本語が話せないので、僕ら3人の会話は単語を並べつつ、ジェスチャーで意思疎通をしていました。
知らない英単語を深掘り
その時、オーストラリア人男性がある英単語を言いました。
男性:「フォーセッ」
僕:「ん?フォーセッ?」
女性:「何?フォーセッて?」
男性:「(英語で)○○○」
女性:「え~わかんなーい!日本語で言って?」
男性:「I don’t know how to say it in Japanese.(日本語で何て言うのか、知らないよ)」
僕:「何だろうね?」
すると男性は、バーカウンターの反対側に移動して、水道の蛇口を指さしました。
男性:「faucet. This is a faucet.」
女性:「あっ!蛇口かな?」
僕:「蛇口か!フォーセッて発音するのか!」
男性:「How do you say this in Japanese?」
女性:「蛇口だよ。じゃぐち!」
男性:「ジャグチ?」
女性:「そうそう!」
蛇口の会話はそこで終わりました。
「蛇口」が長期記憶になる
なぜオーストラリア人男性が僕らの会話の中で蛇口という英単語を入れてきたのか?
どんな文脈で使ってきたのか?結局分からずじまいでした。
当時の僕は英語のフリートークはほとんどできなかったので、
「さっきは蛇口を使って何て言ってたの?もう一回文章全体を言ってもらえる?」
というようなことを英語で言う力はありませんでした。
ただ、faucet = 蛇口 という英単語だけは覚えました。
そしてその後も、ずっと忘れませんでした。
こうして目の前でネイティブが実物を指さしながら、英単語の発音をしてくれたら、確かに記憶に焼き付きます。
(今でもこの光景をハッキリ覚えているぐらい、焼き付いています)
こういう風に体験の中から覚える記憶を、「エピソード記憶」と言います。
エピソード記憶の限界
エピソード記憶はとても強力ですが、自分でコントロールできないという欠点があります。
たとえば今回、3人の会話の中で「faucet = 蛇口」という英単語が出てきたのは、たまたまです。
オーストラリア人男性も、最初から狙って話していたわけではないでしょう。
会話の流れの中で、蛇口が出てきただけだと思います。
・たまたま自分が身に付けたい英単語を、相手が会話の中に盛り込んでくる確率。
・自分が分からない部分をしっかり拾えて、相手に英語で聞き返せる確率。
・たまたま相手のネイティブが、日本人にていねいに英語を教える気がある確率。
3つの確率が奇跡的に重なった時に、エピソード記憶を使って英単語を覚えることができます。
かなり奇跡に近い確率です。
僕はこの時、「英語のシャワーを浴びれば自然に英語が身に付く」という考え方の限界を感じました。
英会話の最中に覚えられる英単語の数
僕はこの夜の一件をきっかけに、「1回の英会話の中で新しく覚えられる英単語の数」を頭の中で計算してみました。
ネイティブのブワ~ッと英語でしゃべられて、その中で聞き取れない英単語が10個ぐらいあったら、今回のように「分からないから教えて」と聞き返せる英単語は、1~3個が限界でしょう。
さらに今回のように実演しながら説明してもらえるのは、せいぜい1~2個が限界でしょう。
しかもそれは、お客さんが少なくて、話す相手も教える気があるという、ラッキーな場合です。
1晩で覚えられる英単語が1個だとして、
1個×週3回=3個
1年52週×3=156個
1年間でたったの156個か・・・
これじゃあ、英語ペラペラまで何十年かかるか分からない・・・
僕は、急に現実が見えた気がして、絶望的な気分になりました。
#英語のシャワー幻想が崩れる
この頃から、僕の中にあった「英語のシャワー幻想」が崩れ始めました。
それまでは、英語を聞きまくっていれば、自然に話せるようになる日が来る!
と信じて、1年間ひたすら「生の英語」を聞く環境に身を起き続けました。
週3回の外国人バー通いに加えて、車の中では英語のCDをかけていました。
当時の仕事はジーンズショップの店長だったので、店内BGMを洋楽にして、ボリュームを大きくして、商品整理をしながら集中して聞くようにしていました。
でも、英語の歌を何度聞いても、歌詞は聞き取れるようになりませんでした。
クリスマスシーズンによく日本のお店のBGMでかかる「ラストクリスマス」の歌は、サビの「ラ~スックリスマス」の部分以外はまったく聞き取れません。
「あぁ・・・今年もラストクリスマスの歌詞が聞き取れないまま、年が終わっていく・・・」
僕は悲しくなりました。
僕はこの頃にはもう、
「英語を聞きまくっているうちにある日突然聞き取れるようになって、英語が口からポンポン飛び出す」
という魔法のような現象に対する期待は、完全にしぼんでいました。
・・・つづく。
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From 師範代Shinya(新村真也)
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