From 師範代Shinya(新村真也)
(※僕がカナダ留学後に英会話スクール講師になってからの体験談です)
(→前回のつづき)
僕は、英会話スクールの講師になってから初めて、プラトー(伸び悩みの時期)を経験しました。
1年経ってもTOEICの点数が伸びるどころか、落ちたのです。
TOEICスコア結果表が来てからしばらくは、ヘコんでいました。
でも、冷静になってから分析してみた結果、理由が分かりました。
僕の英語力は伸びていなかったわけではありません。ただ、TOEICで測れるジャンルの英語力が伸びていなかっただけでした。
つまり、同じ英語力でも、「英語を教えることで伸びる部分」と、「TOEICの点数に影響する部分」は違うのです。
教えることで伸びる部分
僕は、英語を「教わる側」から「教える側」になったことで、それまであいまいだった部分、何となくノリで使っていた文法項目が、さらに正確に使えるようになりました。
たとえば、「should(した方が良い)」と、「have to (しなければならない)」という2つの表現の微妙な使い分け方をレッスンで教えると、次回からは自分も会話で意識するようになりました。
他にも、
go on a trip(旅行に行く)
go shopping(買い物に行く)
go for a walk(散歩に行く)
といったような、「go」とセットになる言葉、「on, ~ing, for」などを教えることで、自分自身も会話で間違えずにしっかり言えるようになりました。
今まであいまいだった部分がスッキリして、クリアに見えてきた感じです。
その点では、僕の英語力は確実に上がっていました。
これが、初心者に教えることで僕が伸びた部分です。
教えることでは伸ばせない部分
一方で、「教えることでは伸ばせない部分」は、先生自身の英語力の「上限」です。
上限とは、手持ちの英単語の数や、難易度の高い英文をスピーディーに読みこなす力のことです。
たしかに、初心者クラスを教えることで、先生自身の「基礎力」はアップします。
でも、「自分が知っている英単語の数」がアップしたり、「より難易度の高い文章」が理解できるようにはなりません。
そして、TOEICの点数を上げるには、この「上限」を上げていく必要があります。
TOEIC戦略コースはどうなのか?
一方で、僕はTOEIC戦略コースも受け持っていました。
毎日のように、TOEICテストの解き方のテクニックを大人の英語学習者に教えていました。
これは一見、自分自身のTOEICの点数アップにも役立ちそうに思えます。
でも、僕が教えていたクラスは、
「TOEIC300点前後の人が、500点~600点前後まで伸びるためのクラス」
でした。
つまり、僕が教えるクラスで使われているテクニックは、あくまでTOEIC600点前後までしか通用しないのです。
現時点で870点ある僕には、このテクニックはまったく効果ありませんでした。
自分の英語力の上限をアップさせる方法
僕は、このことに気づいてから、ハッ!と目が覚めたような気分になりました。
自分の英語力の上限をアップさせるトレーニングなしに、英語力を上げることなどできない!と気づきました。
英語を教える仕事をしているだけで、勝手に英語力が上がることはあり得ません。
それは、留学と同じです。海外に住んで毎日英語を使う環境に身を置いても、それで英語力が伸びるとは限らないのです。
自分の英語力の上限をアップさせるには、自分の知らない英単語や、高度な文法が使われているテキストを音読する以外にありません。
振り返ってみれば、僕は今までずっと、そうやって英語力アップをしてきました。
ところが、僕は英会話スクール講師になった途端、自分の中で守ってきた大事なルールを忘れてしまっていたのです!
それに気づいた僕は、さっそく自分の英語力の「上限をアップさせるトレーニング」を再開しました。
英語の先生が自分の英語力を伸ばせない理由
実は、僕と同じように、自分の英語力の伸び悩みを感じている英語の先生はけっこう多いと思います。
英語を「学ぶ側」から「教える側」になって、みんなから「先生!先生!」と呼ばれるようになると、なんとなく自分の英語力が上がったような気がして、英語トレーニングをやめてしまいがちです。
僕は今まで、
「1日の中で自分の英語トレーニングの時間を取らない英語の先生」
にたくさん会ってきました。
時間を取らなければ、英語力のアップは望めません。
僕のこれまでの経験上、英語の先生になっても自身の英語トレーニングを続ける人の方が少数派だとは思います。
それに、「英語力の高さ」と「教え方のうまさ」は比例しません。
スポーツの世界でも、名プレーヤーだった人が必ずしも名監督になれるわけではないのと同じです。
自分の英語力を伸ばす能力と、人の英語力を伸ばす能力は別物だと思います。
ただ、それを知った上で、僕は個人的な興味で英語トレーニングを続けています。
それに、「自分が学ぶこと」と「人に教えること」がリンクすることもあります。
僕の体験上、自分自身のふだんの英語トレーニングで感じたことや学んだことの中から、新しくレッスンに取り入れられるアイデアが出てきたりすることもあります。
僕は、職業上の役割は「英語の先生」ですが、個人としては、「英語学習者」だと思っています。
・・・つづく。
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