From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が英検1級に合格した後に、TOEICテストで満点を狙うのをやめた頃のストーリーの続きです。
僕がTOEIC満点を狙うのをやめてから、しばらく経った頃のこと。
スマホを見ていたら、面白い記事が目に飛び込んできました。(PRESIDENT Onlineの記事です)
それは、TOEICを世に広めた人物で、TOEIC界では超有名人の千田潤一先生の対談インタビューの言葉でした。
千田先生は、TOEICができたばかりの頃から普及活動に力を尽くしてきました。
そしてもう1人、TOEICを発案した「北岡靖男」さんという人がいます。アメリカのテスト開発会社のETSに、直接交渉に行って、TOEICの開発を依頼したのが北岡さんです。
TOEICを世に広めた千田先生と、TOEICを作った北岡さんとの会話のやりとりのエピソードが、とても印象に残りました。
TOEFLとは違うテストが作りたい
まず、当時はETSが作っているTOEFLというテストがありました。TOEFLは、主に学生向けのテストです。
「英語圏の大学で学ぶのに必要な英語力があるかどうか?」
を試すテストとして確立されていました。ただ、TOEFLの問題は日本人にとって難し過ぎる感があります。
内容が学術的な上に、点数の目盛りが荒いため、細かい英語力の変化を測りづらいというのがあります。
そこで、TOEFLよりも目盛りが細かくて分かりやすいテストを作りたい!という要望を形にしようということで、北岡さんが動きました。
「TOEFLが30センチのモノサシなら、1メートルのモノサシを作りたい!」
そんな信念の元で、北岡さんは何度もETSを説得したそうです。そして、何度も訴え続けた結果、ついにETSに受け入れられて、TOEICが作られることになったそうです。
TOEICの誕生年とウォークマンの誕生年は一緒
記念すべき第一回目のTOEICの公開テストは、1979年の12月に実施されました。
そして、これは偶然ですが、ソニーのウォークマンが発売されたのが、同じ年の7月だそうです。
「持ち歩きできる音楽プレーヤー」として、英語学習の常識を変えたソニーのウォークマン。
「英語力を測る新しいモノサシ」として、英語テストの世界を変えたTOEICテスト。
この2つが同じ年に生まれたとうのは、不思議な運命ですね。
千田先生が叱られた日
千田先生は、これまでTOEICの普及活動に力を尽くしてきましたが、TOEIC創始者の北岡さんに怒られたことがあるそうです。
それは、千田先生がTOEICで955点を取った時に、北岡さんにそれを報告した時のことでした。
「この調子で、TOEIC満点を目指します!」と言ったとたん、北岡さんはものすごい怒り出したのです!!
「もう、見栄で受験するのはおやめなさい!テストのための勉強、試験のための勉強、学習のための学習はやめなさい!」
と北岡さんは言いました。
「もっと英語を使ってコミュニケーションする場を作るとか、友達を作るとか、そっちの方が大事でしょう。」
と言われたそうです。
TOEIC創始者の予測
北岡さんは、この先TOEICが普及したら何が起こるか?を予測していたそうです。
「このテストが普及すると、スコアが高いから偉いとか、満点を取ったから偉いという風潮が出てくるよ」
とよく言っていたそうです。
TOEICの名前は、
Test(テスト)
Of(の)
English for(英語)
International(国際)
Communication(コミュニケーション)
の略です。それを作った北岡さんの口癖は、これだそうです。
↓↓↓
「コミュニケーション能力とは、友達を作る力、友達と仲良くケンカする力、ケンカした友達と1日も早く仲直りする力。
そういう力をつけて、何百万単位の日本人が、何千万単位の世界の人々と友人関係を作ることができたとき、初めて国際コミュニケーション能力を身につけたことになる。
そして、日本は世界から尊敬される国になる。
追いかけるのは、スコアじゃなくてスキル。追い求めるのは、スコアじゃなくて友人。そして人間。」
僕はこの言葉を聞いた時、衝撃を受けました!!
思ったのと違う方向
TOEICの創始者の北岡さんの想いと、今のTOEICに対する世間一般のイメージとは、だいぶかけ離れています。
そして、北岡さんはこうなることを予測していたのです。
面白かったのは、北岡さんの言葉の中に、「ビジネス」「仕事」というフレーズが一度も出てきていないことです。
なんとなく、TOEICは「ビジネス英語」というイメージがあります。
でも、北岡さんは「日本人が世界中に友達を作れるように」という夢と目的を持ってTOEICを作ったんですね。
決して、日本人が「もっと海外とビジネスをして経済大国の地位を守れるように」といった願いがあったわけではありません。
そして、北岡さんの「満点を狙うな!」という考え方を知って、僕は改めて、
「あぁ、やっぱり満点をあきらめた自分の決断は正しかったんだな。TOEICを作った本人が、『満点を狙うな!』と言っているぐらいだし。」
と思いました。
・・・つづく。
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