From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「鉄工場の作業員」から、「アクション俳優」に転職しようと決めて、「アクション俳優養成所」に入ろうとした時のストーリーの続きです。
選択肢を「アクション俳優養成所」からもっと広げて、「俳優養成所」に切り替えたとたん、僕の目にはそれまで見えてこなかった広告や情報が入ってくるようになりました。
人間の脳は、不思議なものです。意識を向けたとたん、今まで見過ごしていたものがどんどん目に飛び込んでくるようになります。
英語を学び始めたばかりの人が、街の中で英語で書かれた看板が気になったり、すれ違う外国人の会話に耳を傾けたくなるのと同じです。
僕が色んな情報を集めながらだんだん気付いてきたことがありました。
それは、どのスクールも「横文字」を使っていることです。
「俳優養成学校」ではなく、「タレント養成スクール」みたいに、やたらカタカナが多いのです。
「オーディション」という言葉の響き
もうひとつ、気付いたことがありました。
それは、どのタレント養成スクールの広告にも、「オーディション」という言葉が使われていたことです。
「タレントの卵募集オーディション」
「練習生募集オーディション」
みたいに、書かれています。
「オーディション」なんて言われると、なんだか自分の才能を見極めてもらう試験みたいに聞こえます。
僕の中での「オーディション」のイメージは、映画の配役を決めるときに、誰を抜擢するかをディレクターが決める時に行う、というイメージがあります。
つまり、役者の人にとっては、「オーディションに受かる=自分の能力が認められる=大きな仕事ゲット!」みたいなイメージです。そんな響きがします。
タレント養成所は、「体験レッスン」という言葉の代わりに「オーディション」という言葉を使うことで、なんとなく、
「タレント養成所には、誰でも入れるわけではないぞ。君の才能を確かめに来てみないか?」
みたいな響きを、かもし出しているのです。
結局は「体験レッスン」
でも、ほとんどのタレント養成所のオーディションは受けるのにお金がかかります。
数千円ですが、受ける僕ら側が支払うのです。
そして入所オーディションに受かったら、今度は「入学金」を支払ってスクールに入ります。
その後は「授業料」を毎月支払って通い続ける、というシステムです。
この流れは、ふつうの英会話スクールと同じです。
①体験レッスンを受ける
②入学金を支払う
③月謝を払って通う
この流れは、英会話スクールもタレント養成所も同じなのです。
そう考えると、タレント養成スクールはそんなに特別なものではなく、「習い事のひとつ」に過ぎない、ということが分かってきました。
受かったら嬉しい!
ただ、「オーディション」と「体験レッスン」の最大の違いは、「選ぶ側がどちらか?」です。
英会話スクールなどの「体験レッスン」ではふつう、通う側(お客さん側)が、入るかどうかを決めます。
スクール側が「あなたは入学させません」なんて断ってくることは、ほとんどありません。
受講者側が、「このスクールは自分に合っているかどうか?」をジャッジするのです。
一方、タレント養成所のオーディションでは、「合格したら入れます」というルールになっています。
つまり、選ぶのは「スクール側」なのです。ここが違います。
受講者がオーディションを受けた後は、スクール側が審査をして、その後「合格通知」が届きます。
合格通知が届くと、受講者は嬉しくなります。
おそらく、タレント養成所のオーディションで落とされる人はほとんどいないと思います。
よほど変な振る舞いをしない限り、合格するようにできているのではないか?と思います。
狭き門もある
とはいえ、中には本当の意味での「オーディション」もあります。
たとえば、たまにニュースになったりする、
「一般公募○○万人の中からトップ3人を選ぶオーディション」
みたいなものは、合格したら事務所が無料でレッスンを提供して育ててくれると思います。
地方在住者なら生活面もサポートしてくれるでしょう。
そういう「本当の意味でのオーディション」は、とても「狭き門」です。一次審査に受かったら、二次審査、三次審査、と進んでいき、どんどん振り落とされていきます。
世間一般の人たちにとって「オーディション」という言葉には、そういった「厳しい競争に勝ち残る」イメージが、感じられます。
芸能スクールビジネスは、そのイメージを利用して、「体験レッスン」の代わりに「オーディション」という言葉を使うことで、受講者側の体感価値を高めていることが分かりました。
・・・つづく。
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