From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「鉄工場の作業員」から、「アクション俳優」に転職しようと決めて、「俳優養成所」に入ろうとした時のストーリーの続きです。
「東京宝映テレビ」のタレントスクールのオーディションを受けた僕は、厳しそうな雰囲気の面接官の女性の前で、自分の意気込みを語りました。
僕:「もしこのオーディションに受かったら、すぐに今の仕事を辞めて東京に引っ越します。そして、バイトをしながらレッスンに通います。」
面接官:「そこまでの覚悟があるのね!その心意気が大事よ!」
みたいに褒められるリアクションを期待してました。
ところが、予想外の展開になりました。
僕の母親ぐらいの年齢のその女性面接官は、表情が一気に険しくなり、もともと大きかった声をさらに張り上げて、僕に向かって叫びました。
面接官:「そんなバカなことはやめなさい!!」
僕:「え??」
面接官:「あなたは今、地元で仕事してるんでしょ?」
僕:「は、はい。」
面接官:「正社員なの?」
僕:「はい、まあ、一応正社員です。」
面接官:「だったら、その仕事をもう少し続けなさい。」
僕:「え??でも、僕は違う道に進みたいと思っているんですが・・・」
面接官:「そう思うなら、今の仕事を続けなさい。地方に住んでいる若い人たちは、みんな東京に憧れて、芸能界に憧れて、すべてを捨てて出てくるわ。でもね、東京での暮らしも芸能界での仕事も、そんなにキラキラしたものじゃないの。」
僕:「は、はぁ・・・」
(なんか、予想外の展開になってきたぞ)
面接官:「ここのレッスンは、週1回コースからあるの。静岡なら近いから通えるでしょ?」
僕:「そうですね。通えます。」
面接官:「そもそも、一度もやったことのない役者の仕事が自分に向いてるかなんて、今どうやって分かるの?まずは、週に1回ペースでここに通って、演技がどんなものかを体験してみなさい。
別にここじゃなくてもいいわ。あなたの家の近くに演技を教えるスクールがあれば、そこに入ってレッスンを受けてみなさい。
きっと、地方のスクールの方が授業料が安いと思うから。
あなたは今、やりたいことが見つかって熱くなっていると思うけど、だからこそ冷静に考える期間が必要なの。
演技というものが自分に合っているのか?この世界に人生をかける覚悟があるのか?を見極める期間が必要なのよ。私が言いたいこと、わかる?」
僕:「はい、分かります!」
面接官:「でも、何もやらずに外側から見ているだけじゃ、自分に合っているかどうか分からないわよね?」
僕:「はい。だからすべてを捨てて東京に出てこようと思いました。」
面接官:「いい?私はね、今まであなたのようなことを言って、すべてを捨てて地方から上京する若者を数え切れないほど見てきたの。」
僕:「そ、そうなんですか・・・」
面接官:「みんな、バイトして食いつなぐって言うけど、東京の家賃は高いのよ。みんな生活費のために、死にものぐるいで働くことになるの。
疲れてヘロヘロになると、だんだん演技のレッスンについていけなくなる。レッスンを受ける気力も体力もなくなってくる。
そうなると、次にどうなると思う?」
僕:「わ、わかりません・・・」
面接官:「演技とはまったく違うことにお金と時間を使うようになるの。
東京には、そんな風に疲れた人たちを誘惑する娯楽がたくさんあるのよ。
せっかく頑張って稼いだお金とわずかな自由時間を、娯楽の世界に使っちゃって、何のために東京へ来たのか分からなくなっちゃう子達がたくさんいるのよ。
そうして夢もお金もなくなって、トボトボ地元へ帰る子達がたくさんいるの。」
僕:「そうなんですか・・・」
面接官:「あなたが必ずそうなるとは言えない。でも、今言った地元へトボトボ帰っていく人たちも、最初はみ~んな今あなたの言ったようなセリフを言うのよ。
私はそういう若い人たちの姿をもう見たくないの。」
僕:「そ、そうなんですね・・・」
僕は、言葉に詰まりました。
何て言って良いのか、分かりません。
というか、この女性面接官は、ぜんぜん商売っ気がありません。
このタレントスクールの広告では、「君の夢をここで叶えよう!」みたいな感じで、甘いキャッチフレーズ満載でした。
でも、おそらく、この面接官の女性の言っていることの方が真実なんだろうな・・・ということが、伝わってきました。
本当に心配して言ってくれているのが伝わってきました。
「本気」の意味
面接官:「もし、あなたが本気でこの世界に入りたいと思うなら、まずは今の生活の中に演技のトレーニングを取り入れてみなさい。
今言ったように、別にここじゃなくてもいいから、通いやすい場所で演技を教えてくれるスクールを見つけて、レッスンを受けてみなさい。」
僕:「はい、分かりました。」
面接官:「でも、これだけは覚えておいて。レッスンを受けたからって、上達するわけじゃないのよ。
レッスンはあくまで、練習の仕方を教える場所なの。分からない部分を解決する場所なの。
レッスンで教わった正しいトレーニング法を、毎日実行できるか?が一番大事なの。
だからレッスンは、週1回でも十分なの。それ以外の6日間のトレーニング時間が、あなたの演技力をアップさせるんだから。」
(おぉ!これは空手とも通じる部分があるぞ!空手道場も、ただ通っているだけじゃ上達しないもんな!毎日のトレーニングの方が大事だ)
僕:「なるほど!分かりました!」
面接官:「もしあなたが演技を学ぶことに対して本気なら、今いる場所でも本気になれるはずよね?
すべてを捨てるぐらいの覚悟があるなら、今の生活の中でも演技のトレーニングを毎日続けられるはずよね?
逆に、今の生活の中で演技のトレーニングを続けられないなら、東京へ出てきても続けられない。
いつの間にか日常に流されて、仕事と遊びの毎日になっちゃう。そう思わない?」
僕:「はい!分かります!」
面接官:「じゃあ、とりあえず今すぐ演技のトレーニングを始めてみてね。仕事を辞めたり、東京へ出てくるのは、後からいつでもできるんだから。」
僕:「はい!分かりました。ありがとうございました!!」
会場を後にしながら、僕の気持ちは来る前とは完全に切り替わっていました。
良いオーディションだった!!大きな学びがあった!!
「当たり」の面接官にめぐり会えた僕は、本当にラッキーだ!と思いました。
・・・つづく。
まさに、今英語学習をしている私に
向けてのメッセージでもありました!
ありがとうございます。
岡本さん
この体験談がお役に立てて良かったです!
英語学習と演技は通じる部分が多いと感じています。
岡本さんの英語習得の成功を応援しています!