From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「鉄工場の作業員」から、「アクション俳優」に転職しようと決めて、「俳優養成所」に入ろうとした時のストーリーの続きです。
「東京宝映テレビ」のタレントスクールのオーディションを受けた僕は、ラッキーなことに「当たり」の面接官から多くのことを学びました。
厳しそうな雰囲気の女性面接官でしたが、本当に受験者のことを親身になって考えてくれているのが伝わってきました。
僕が今回のオーディションで得た学びは、
「今の生活の中で通えるスクールを見つけて、すぐ演技のトレーニングを始めてみること」
「今の環境で本気になれないなら、東京へ出て行ってスクールのそばに引っ越しても、本気にはなれない」
という2点でした。
これは、英語学習にも当てはまります。
よく、「日本では英語を勉強する気になれないから、海外留学して身につけようと思います」というセリフを聞くことがあります。
この考え方の根底には、
「海外に行って英語を使わざるをえない環境になれば、自分は英語をやる気になって、猛勉強するだろう」
というものです。これは言い換えると、
「今の自分がやりたくないことを、未来の自分に押しつけている」
とも言えます。でも残念ながら、こういうマインドで留学する人のほとんどは、海外で十分な英語力を身につけられずに落胆して帰ってくることが多いです。
なぜなら、ネットやテクノロジーが発達した今は、海外で暮らすのにあまり英語力は必要ないからです。
僕がカナダに留学している時に、韓国人や日本人の留学生で、何年も現地に住んでいるのにいっこうに英語が話せない&聞けるようにならない、という悩みを抱えた人たちに出会いました。
その人たちが口を揃えて言っていたのは、
「英語を話さなくても暮らせていけちゃうんだよねぇ~」
というセリフでした。
僕はカナダに行く前の時点でTOEIC735点を取り、瞬間英作文トレーニングでスピーキング力も鍛えてから現地に行ったので、現地に何年も住んでいる彼らからは、
「どうやって日本で英語を身につけたの?やり方を教えてくれない?」
と聞かれました。
僕は快く音読トレーニングと瞬間英作文トレーニングのやり方を解説しました。
でも、僕が毎日こなすメニューを伝えると、とたんに表情が曇っていくのが分かりました。
「そうか・・・やっぱり、相応の努力が必要なんだなぁ・・・」
そのリアクションを見て、僕は思いました。
(日本で本気のトレーニングをしたくなかったから、留学してサクッと手軽に英語を身につけようと思ったんだろうな・・・きっと)
僕はそんな反応を見て、責める気にはなれませんでした。なぜなら、僕も最初の1年間は彼らとまったく同じマインドだったからです。
「とりあえず英語を使う環境に身を置いていれば、いつの間にか自然に話せるようになだろう」
と思って、外国人の集まるバーに週3回通っていたからです。
今いる場所で本気になれるか?
今思い返せば、演技のスクールのオーディションで面接官の女性から受けた教えが、その10年後に僕がカナダ留学した時にも生きていました。
今いる場所で本気になれるか?が、ひとつのジャッジ基準になります。
「地元静岡で演技を毎日練習して、どんどん上達するのが楽しくて楽しくて、もうガマンできずに役者を本業にするために、東京に引っ越してくる」
という状態と、
「日本で英語学習を毎日やって、楽しくて楽しくて、自分の積み上げた英語力を試したくて、もうガマンできずに仕事を辞めて留学する」
という状態は似ています。
「とりあえず東京へ行って、追い込まれた状況になれば、後は気合いでなんとかなるだろう」
「とりあえず海外留学して追い込まれた状態になれば、後は気合いでなんとかなるだろう」
みたいな、「捨て身」の心理状態とは違います。
もちろん、捨て身でうまくいく人も中にはいるとは思いますが、そういう人は比率的に多くはないと思います。
どのスクールに通う?
話を演技スクールに戻します。
オーディションを受け終わって静岡に帰った僕は、さっそく地元で演技を教えるスクールがあるかどうかを調べてみました。
すると、いくつかあることが分かりました。
入学金や月謝も東京のスクールよりも安いです。
お金の面だけ考えれば、地元にスクールに通った方が良さそうです。
でも、僕の中に引っかかりがありました。それは、あの女性面接官でした。
僕に本音でメッセージを伝えてくれたあの人が、演技の先生なのかどうか?は分かりません。
入学したところで、自分のクラスを担当する先生になるのかどうか?も分かりません。
でも、僕の中で、
「あのスクールに入れば、良い方向に導いてもらえるんじゃないか?少なくとも、あんな正直な人を面接官として雇っているスクールなんだから」
という予感がありました。今の僕の心には、「甘い未来を見せてくるタレントスクールの広告」はまったく響かなくなっていました。
もっと本気で硬派なレッスンを受けてみたい!
その基準でスクールを選びたい!
と思うようになっていたのです。
そしてしらばく考えた結果、あの面接官の女性のいる東京のスクールに、静岡から週1で通うことに決めました。
・・・つづく。
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