From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「アクション俳優になろう!」と決めて、「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
「出て行け!!」
クラスルーム内に、先生の怒鳴り声が鳴り響きました。
レッスン中に携帯の着信音を鳴らしてしまったクラスメイトは、顔を引きつらせながら手荷物を全部持って部屋から出て行きました。
正直、これまでレッスン中に携帯の着信が鳴ることなんて、日常茶飯事でした。
それでも、これまでの先生たちからは何も言われませんでした。
だから、みんな油断していました。
誰もレッスン開始時間に合わせて携帯の電源を切っていなかったのです。
みんなが携帯電源を切っていなかった理由
「電源を切らなくてもマナーモードにすればいいのに・・・」と思うかもしれません。
今だったら、スマホを1人1台持っている時代なので、「人が集まっている場所では携帯を鳴らさない」というマナーが重要視されています。
でも僕が二十歳だった当時は、まだそういうマナーが浸透していませんでした。
ポケベルの時代が終わり、携帯電話(ガラケー)がちょうど普及し始めたばかりの頃でした。
「自分専用の携帯電話を持つ」というのがステータスと考えられていた時代だったのです。
だから、自分のバッグの中から携帯の着信音がピコピコ鳴るのは、ある意味「アピール」でした。
・俺、自分専用の携帯持ってるんだぜアピール
・私、たくさん友達がいて人気者なのよアピール
・忙しい人=イケてる人アピール
という感じです。
もし、携帯の電源を切ったり、マナーモードにしてしまったら、こういったアピール(今だったらマウンティング)ができなくなってしまうのです。
だからこそ、みんな携帯の着信音が鳴る状態にしてバッグに入れていました。
おそらく、この新しい先生もそのあたりの若者心理をが分かっていてやっているんだと思います。
次の受刑者
教室内はシーンと静まりかえり、先生が全員をにらみつけている状態になりました。
この状況では、ちょっとでも動いたら目立ちます。
今さら自分のバッグに手を伸ばして、携帯の電源を切るのは難しい状況です。
でも、このままでは次の人の携帯が鳴るのは時間の問題です。
先生が言いました。
先生:「今の時点で携帯の電源を切り忘れているのが確実な者は、素直に手を上げなさい。」
おっ!チャンスをもらえるのか?
クラス内に少し希望の光が差し込みました。
3人のクラスメイトが、おそるおそる手を上げました。
「今すぐ電源を切るなら、許してやろう。」
僕はてっきり、そう先生が言うと思っていました。
ところが、違いました。
先生:「出て行け!!」
え??
先生:「おまえらレッスンが始まる時間が分からないのか?何ヶ月ここに通ってんだ?今日が初めてじゃないだろ?わざと電源を切ってないんだろ?ナメてんのか?おい!!」
ヤクザのようなド迫力の口調で怒鳴りつける先生に、僕ら全員の背筋が凍り付きました。
先生:「今すぐ出て行け!!」
手を挙げた3人は、顔を引きつらせたまま荷物をまとめて無言で部屋を出て行きました。
レッスンが始まってわずか10分の時点で、すでに4人が脱落しました。
しかも先生のルールによると、一度この部屋から追い出された人は、二度と戻ってくることができないようです。
違うクラス(おそらく下のレベル)に行くか、スクールを変えるしかありません。
そんなのメチャクチャだ!!
とんでもない先生が来てしまった!!
僕らは手に汗を握ったまま、とてもつなく長いレッスン時間を過ごすことになりました。
恐怖のルール②
ルール①携帯電話をレッスン中に鳴らした者は即退場
を、先生は大迫力のデモンストレーションで僕らに見せつけた後、静かな声のトーンで2つ目のルールを言いました。
先生:「ルール2つ目を伝えます。このクラスでは、毎回宿題を出します。その宿題を家で1週間かけて仕上げてきてもらいます。」
先生:「もし万が一!!」
いきなり声が大きくなり、部屋中に響き渡りました。僕らは驚きと恐怖でビクン!と身体が動きました。
先生はふたたび小さなささやくような声に戻って続けました。
先生:「もし万が一、宿題をやってこない者がいたら・・・その場で出て行ってもらいます。そして、もう二度とこのクラスには戻ってくることはできません。」
え?でも、宿題をやってこないけど「やりました」って言う人も出てくるんじゃない?
僕は内心思いました。
次の瞬間、先生がまた大きな声で怒鳴りました。
先生:「ただし!!」
僕ら:ビクン!!
(静かな声に戻って)
先生:「ただし、宿題をやっていないのに、やってきましたなんて言う者が出てくるかもしれません。」
心の声:(そうそう!)
先生:「もし宿題をやってこなければ、すぐに分かります。ウソをついても私には通用しません。練習なしでごまかせるような課題は出しませんので、ご心配なく。」
これで、家で練習してこない軟派タイプの人たちにとっては、脱落するか、硬派タイプに転身するかの2択になりました。
でも、次の先生の言葉は、僕ら硬派タイプのメンバーにとっても耳を疑うものでした・・・・
・・・つづく。
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