From 師範代Shinya(新村真也)
今日は、受講生の方からたまに僕が相談を受ける質問内容をシェアします。
「英語なんて勉強してもしゃべれるようにならないぞ!時間のムダだよ。とにかく実戦でしゃべりまくれ!」
これは、よく「外国人が集まるバーを経営している日本人のマスター」や、そこの常連のお客さんの日本人の人たちが言う典型的なセリフです。
英語を体系的に学んでいる人(特に初心者)が、そういう場所に行くと、英語をペラペラにしゃべれる人たちから、
「勉強なんてしてるからしゃべれるようにならないんだ!」
と言われて、ヘコんで帰ってくる・・・というパターンが、これまでに何度かありました。
そして、自分のやっている学習方法に自信が持てなくなって、僕に相談しに来るのです。
きっと、同じように感じている人もいると思うので、ここで僕自身の体験談と考え方をシェアしたいと思います。
習うより慣れろ
外国人の集まるバーのマスターやお客さん達は、「習うより慣れろ」的な実戦派の価値観の人が多い印象です。
僕自身も、そういうバーに長年通っていたので、初心者の頃はマスター(日本人)や常連のお客さん(日本人)から何度か同じようなことを言われました。
でも、僕が音読トレーニングとイメージ英文法で英語力を上げていき、TOEICも700点を超えるようになったあたりから、何も言われなくなりました。
僕が英会話スクールの講師になってからしばらくした頃のこと。
僕のクラスに通ってくれている生徒の大学生男子がちょうど二十歳になったので、記念に2人で、僕の行きつけの外国人バーに繰り出しました。
彼を外国人バーに連れて行った理由は、「試合経験」を積んで欲しいと思ったからです。
英語を身につけるには、スポーツと同じように、
「①知識を仕入れる→②スキル(反復練習)→③試合(実戦英会話)」
の順番で進めるのが有効です。
③の試合をして、その中で「自分の足りない部分」に気付き、そこを埋めるべくまた①と②のステップを繰り返す。自分の中にストックを仕込んで、また試合に繰り出す・・・というサイクルを回すのが、バランスの良い伸ばし方です。
知識だけだと、頭でっかちになってしまうし、スキルだけでも、実戦の緊張感や呼吸、リズムが身に付きません。試合をやるだけだと、文法や発音が怪しいブロークンイングリッシュになってしまいます。
どれが一番大事か?ではなく、3つの順番とバランスが大事なのです。
僕はその大学生に、③の試合の場を提供しようと思って、誘いました。
バーのマスターの言葉
バーに入ると、僕らはマスターのすぐ目の前のカウンターに座りました。まだ時間帯が早かったせいか、外国人客は来ていませんでした。
勉強熱心な大学生の彼は、僕と「英語学習トーク」をしたくて仕方ない!といった感じで、バッグの中から森沢洋介先生の名著「どんどん話すための瞬間英作文トレーニング」を取り出しました。
僕:「おぉ!いつもそれ持ち歩いているの?」
彼:「はい!いつも持ち歩いて、ヒマさえあれば瞬間英作文トレーニングしてます!」
僕:「スゴいね!今、どの辺まで進んだの?」
彼:「まだ、3分の1ぐらいっす!でも、今年中にこの本を3周は回そうと思っています!」
そんな会話をしている最中に、僕らのカウンターの正面でグラスを磨いていたマスター(日本人)が、大きな声で言いました。
マスター:「お兄ちゃん、英語ってのはなぁ、そんな本なんか読んでたって、いつまでたってもしゃべれるようにならないぞ!とにかくしゃべることだよ!外国人と話しなよ!」
大学生の彼は、びっくりして固まってしまいました。
僕は、思わず反論しそうになりましたが、そのマスターの性格をよく知っていたので、その場ではグッとこらえました。
(まあ、ここでマスターと論争しても意味ないな。ここには試合をしに来たことは事実なんだし。)
僕は、大学生の彼の肩を叩いて、カウンターを離れました。そして、ポツポツと入ってきた外国人のお客さん達に話しかけていきました。
できるだけ大学生の彼が会話に入れるようにサポートしながら、1時間ぐらい過ごした後、彼は用事があるということで、先に1人で帰っていきました。
マスターの歴史
そして、僕はまたマスターのいるカウンターに戻りました。マスターは僕と同い年で、なんと「元お客さんの1人」でした。
数年前、僕らは同じようにお客さんとしてここに「試合」をしに来ていた仲間だったのです。
僕がしばらく行かないうちに、いつの間にか彼が元オナー(外国人)からお店を引きついで、オーナー&マスターになっていました。
「もっと英語を話す機会を増やそうと思って、オーナーになっちまった!ハッハッハッ!」
と笑っていました。
マスターのピンチ!
大学生の彼が帰った後、僕はカウンターに座ってしばらくマスターと雑談していました。すると、カウンターに外国人客が来て、マスターに飲み物を注文した後、会話を始めました。
僕は数年前にマスターがまだお客さんだった頃の英語力を知っているので、「試合の場数でどれだけ上達したのかな?」と思いながら、聞き耳を立てていました。
すると、マスターは確かにかなり上達していることが分かりました。以前に比べると、反応スピードもすごく速くなっています。
(おぉ!さっき強気な発言をしただけのことはあるな)
と思って聞いていました。ところが、途中で相手の英語が聞き取れなくなってきたようで、何度か聞き返し始めました。
ババーッと速い英語を話されて圧倒されたマスターは、ピンチの表情になっていました。
僕は、求められたら助け船を出そうと思っていましたが、自分から手を差し出すことはしませんでした。(それが男の世界の暗黙のルールです)
その外国人客がカウンターから離れた後、マスターは僕の方を見て苦笑いしながらボソッと言いました。
マスター:「やっぱ、ただ場数踏むだけじゃダメだな!こりゃ!」
僕は思わず笑ってしまいました。
するとマスターも笑いながら言いました。
「実は俺、最近限界を感じててさ。やっぱ勉強しなきゃ伸びないのかなぁ~。シンヤ君のオススメの英語の本があったら教えてよ。」
(あれ~?さっき、「本なんて読むな!」って大声で言ってたのに・・・)
僕はマスターに、さっきの大学生の彼がバッグに入れていた本のタイトルを伝えました。
すると、素直にメモっていました。
僕らは、しばらく英語学習法についてトークをしました。
僕はこの時、実戦1本やりの限界がどのあたりにあるのか?がよく分かりました。
・・・つづく。
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