From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕がジーンズショップで働いていた頃、初めて英語のテキストを買って外国人のお客さん相手の英会話を経験した時のエピソードの続きです。
「あらかじめ決めておいたセリフ=『在庫はありません』を実戦で使ってみる」というミッションに成功した僕は、勢いに乗ってきました。
前回と同じように、レジでのお会計を英語でやってみることにしました。
前回は、緊張し過ぎて手がプルプル震えたり、声が小さくなってしまったりしました。
でも今回は3回目ということもあり、あの時とは違うような気がしています。
何事も「慣れ」です。
僕はさっそく、レジに入って米軍兵士のお客さん達がお会計に来るのを待ちました。
一人目の大柄な白人男性が、手にTシャツやらジーンズやらをいっぱい持ってやって来ました。
毎回思うのですが、米軍兵士のお客さんたちは、みんなかなりの量を買ってくれます。
僕のお店は平均客単価が数千円レベルなのですが、彼らは平均で1万円近く使ってくれる上に、来た人たちのほとんどが何かしら買ってくれるのです。
これは僕の予想ですが、ふだん彼らは山の中の基地のエリア内で閉鎖的な生活をしているので、あまりお金を使う機会がないのかもしれません。
そして、たまにこうやって休暇がもらえた時には、山から下りてきてパーッとお金を使うのかも知れません。
そしてもうひとつ、彼らの特徴として、「ジーンズのすそ直しが必要ない」ということです。
みんな背が高く足が長いので、そもそもすそ直しが必要ないみたいです。
これは僕らとしては、かなり助かります。すそ直しは時間がかかる上に、丈決めをする時にお客さんとの細かいやりとりが必要です。
とてもじゃありませんが、そんなやりとりを英語で行うことはできません。
だから、ジーンズをそのまま買ってくれるのはありがたいです。
接客英語、発動!
僕はさっそく、前回と同じように、
・トータル金額の読み上げ
・お釣りを渡す
・見送りあいさつ
の3つの作業を英語でやってみました。
前回はこのパートが初だったので、めちゃくちゃ緊張しました。
でも今回は、2回目です。まだ緊張しないと言えばウソになりますが、明らかに心境が違います。
おそらく、さっき目を合わせて「Hello!」と言って回ったのが良かったんだと思います。
心なしか、相手もフレンドリーな笑顔を浮かべているように見えます。
とっさに思いついた、ちょっとした「事前の仕込み」でしたが、かなり効果がありました。
1人目は完璧にこなせました!
特に変な質問をされることもなく、驚くほどスムーズにやりとりが完了しました。
僕は勢いづいてきました。
その調子で、2人目、3人目と相手をしていきました。
静かな人もいれば、とても反応の良い人もいましたが、僕は淡々と同じセリフを言いながら繰り返していきました。
僕のとなりでサッカー(袋詰めのサポート)をしてくれているのは、前回と同じアルバイトの大学生男子です。
僕が英語を駆使して華麗に外国人客をさばいているのを見て、また感心しているような表情でした。
僕は完全に調子が出てきました!
強敵参上!
リズムに乗ってきた矢先、僕の前に、さっきのアグレッシブな黒人男性がやってきました。
ぬぉっ!マジか!
この人も買うのか!う~ん、何か話しかけられそう・・・
彼は今回、お店に入ってくると同時に僕に早口でガンガン話しかけてきて、僕の自信を粉々に打ち砕いた張本人です。
とはいえ、彼のおかげで僕の中で「失敗したくない」というプライドが消えて、チャレンジ魂が燃え上がってきたことは事実です。
その点は感謝しなければなりません。
僕は、ドキドキしながら今までと同じように接客フレーズを3つ使ってレジ打ちをしました。
すると、僕の英語を聞いたその黒人男性は驚いたような表情をしながら、後ろの仲間と顔を見合わせました。
そして、僕にまた早口で何か言ってきました。
「○×△□ English!」
ほとんど聞き取れませんが、なんとなく「なんだ!君は英語しゃべれるじゃん!」と言っているようでした。
僕は苦笑いしながら、そのままお会計を続けました。
おそらく彼は、「さっきまでまったく英語をしゃべれないと思っていた店員が、いきなり流ちょうに英語をしゃべり出したぞ!」と感じているんだと思います。
この、できる時とできない時のハッキリした「ちぐはぐ感」が、フレーズ丸暗記型の英語テキストで勉強した僕のような人間の特徴です。
僕はレジを打ちながら、さっきの「何もしゃべれない自分」と今の「流ちょうにしゃべっている自分」とのギャップに、自分でおもしろくなってきてしまいました。
・・・つづく。
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