from 師範代Shinya
 
(→前回のつづき)
 
 
※カメラのレビューをするカナダ人ユーチューバーのサイモンさんの動画を見て僕が気付いた、「英語と日本語の文化の違い」の続きです。
 
 

サイモンさんの突っ込みポイント③受け身

 
【日本語文】
 
「今も技術者達が全身全霊を注ぎ開発中のGH6が~」
 
 
【英文(Google翻訳)】
 
the GH6, which is still under development by engineers, 
 
 
 
さすがに「全身全霊」まではGoogle翻訳でも訳せなかったようで、英文では省略されています。
 
 
ここで問題なのは、「by engineers」の部分です。
 
 
「by + 人」 の構文は、学校のテスト上では「受け身」の時によく使われます。
 
 
Tom loves Nancy.
 
(トムはナンシーを愛している)
 
を受け身に言い換えよ、みたいな問題文で、
 
 
Nancy is loved by Tom.
 
(ナンシーはトムに愛されている)
 
というような文章を作る練習をします。
 
 
でも、実は英語の受け身表現では、by ~が付くケースが少ないです。
 
なぜなら、ふつう受け身は「主語が言えない時」「主語を言いたくない時」に使うからです。
 
 
たとえば、
 
 
My wallet was stolen.
 
(私のサイフが盗まれた)
 
 
というような時です。
 
 
この文章を受け身ではなく能動態にすると、
 
 
○○ stole my wallet.
 
(○○が私のサイフを盗んだ)
 
 
という形になります。
 
 
○○の部分には、犯人の名前が入ります。
 
 
ふつう、サイフを盗んだ犯人は分かりません。
 
 
だから、主語が言えない→受け身を使おう!
 
 
となるわけです。
 
 
ただ、主語が分かっている時でも、たまにbyを使うことがあります。
 
 
それは、「強調」したい時です。
 
 

最後を強調する「エンドフォーカス」

 
もし、サイフを盗んだ犯人がトムだと分かっている場合、ふつうの英文では、
 
 
Tom stole my wallet!
 
(トムのやつ、俺のサイフを盗みやがった!)
 
 
という語順になります。
 
 
でも、たまにこれを、
 
 
My wallet was stolen by Tom!!
 
と言う風に受け身にして、byまで付けることがあります。
 
 
この時のニュアンスは、「他の誰でもない、あのトムが!!」です。
 
 
受け身にしなくても良い文章を、あえて受け身にする。
 
 
そして、ふだん言わなくてもいい by~以下を、あえて付ける。
 
 
そこには明らかな「意図」があります。
 
 
「なんと!あのトムがサイフを盗んだんだ!あの優等生のトムが!!信じられるかい?」
 
 
という感じです。
 
 
犯人を最後に持って来ることで、強調されるのです。
 
 
これを、「エンドフォーカス」と呼びます。
 
 
ドラマで、最後のエンディングでやっと真犯人が明かされる!みたいなニュアンスです。
 
 
 

パナソニックの英訳文に、エンドフォーカスが効いてしまった!

 
実は、今回のパナソニックのGH6の日本語文の英訳文には、このエンドフォーカスが効いてしまっています。
 
 
もう一度見てみましょう。
 
 
【英文】
 
the GH6, which is still under development by engineers, 
 
 
最後に by engineers が来ていることで、
 
 
他の誰でもない、なんと!技術者達が!!
 
 
というニュアンスになってしまっているのです。
 
 
実際に、この英文を読み上げたカナダ人のサイモンさんの動画の中での反応は、こんな感じです。
 
 
↓↓↓
 
「もちろん、カメラは技術者たちが開発していると思ってますけどね・・・野良犬の軍団や、ハムスターや、幼稚園児のグループがカメラを開発してるなんて思っていませんよ。」
 
 
と言っていました。
 
 

今回のアナウンス文で、誤って強調されてしまった2つのポイント

 
ここまでをまとめると、今回の発表の英文を読んで一番強く伝わってくるのは、次の2点です。
 
 
①GH6は現在、なんと開発中なんですよ!
 
 
②GH6を開発しているのは、なななんと!!「技術者たち」なんです!
 
 
 
・・・これでは、たしかにサイモンさんが戸惑うのも分かります。
 
 
サイモンさんは、動画の中でこんな風に続けていました。
↓↓↓
 
「もちろん、これはGoogle翻訳の英文なので、元の日本語ではもっと有益な情報が入っているとは思っていますが・・・
 
 
私はこの発表を楽しみにしていて、今日は午前3時に起きて、こうしてカメラを回し始めました・・・なのにこの内容は・・・あぁ・・・とても残念です。」
 
 
と言っていました。
 
 
 

日本語文でも情報量は同じ

 
僕はこのサイモンさんの言葉を聞いて、
 
 
「あぁ・・・可哀想なサイモンさん。実は元の日本語版のサイトにも、これ以上の情報は入ってないんだよ・・・これをどんなにうまく英訳しても、サイモンさんが期待していた情報は何1つ伝えられないよ・・・」
 
 
と思いました。
 
 
おそらく英語圏の企業では、この発表内容であれば、
 
 
「そもそも発表文を出さない」
 
 
「情報公開日を延期するお知らせだけを載せる」
 
 
という措置が取られると思います。
 
 
でも、日本の文化では、「たとえ追加情報が伝えられなくても、謝罪とガンバりの気持ちを伝えることに意味がある」という風になります。
 
 

今回のサイモンさんの動画で学んだこと

 
僕が今回のサイモンさんの動画で学んだことは、文化的な面では、
 
 
「日本語をそのまま英語にしても、言いたいことは伝わらない」
 
 
「ビジネス上では、日本的な表現を英語で言うより、むしろ何も言わない方がいいことがある」
 
 
ということです。
 
 
また、文法的な面では、
 
 
「関係詞と受け身のbyは、必要ないときには使わない」
 
 
ということです。
 
 
関係詞は日本語のニュアンスを余すところなく伝えるのに便利ではありますが、それがかえって混乱を招いてしまうことを、今回のサイモンさんの動画から学びました。
 
 
ちなみに、このサイモンさんの動画は、3日間で1万回近く再生されています。
 
 
きっと今回のパナソニックの発表で同じ感想を抱いた英語圏の人達が、世界中にたくさんいる証拠でしょう。
 
 
英語圏の人達には批判されてしまいましたが、僕は今回、新たな学びをくれたパナソニックの記事に、感謝したいと思います。
 
 
(完)
 
 
 
 
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