From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
サヤからの2回目の電話が終わって、僕はまだ取り乱していました。
家にいながら、無事であることを祈るしかない、という状況でした。
せめて、病院に行ってサヤの病室に入って手を握ったり、ベッドの横で見守れたら・・・
こんな時にそばにいられないなんて!!くそぉ~コロナめ!!
と、何もできない自分がもどかしく感じました。
それからしばらくは、何の音沙汰もなく、僕から送ったLINEメッセージも既読にならず、不安な状態が続きました。
病院から電話が!
それから数時間後、僕のスマホに電話がかかってきました。
登録していない番号でしたが、僕は直感的に「病院からだ」と分かりました。
サヤのLINEからではないということは、おそらく話せる状況ではないのでは?!と思い、背中がゾクッとするのを感じました。
おそるおそる電話に出ると、さっきLINE通話した先生の声が聞こえてきました。
先生:「サヤカさんのご主人ですか?」
僕:「はい、そうです。」
先生:「私、先ほどお話しさせていただいた産婦人科医師の○○です。」
僕:「はい。お世話になります。」
先生:「実はご報告がありまして、お電話しました。」
先生の声のトーンから、深刻な状態であろうことが伝わってきました。
僕は心臓がバクバクし始めるのを感じました。
先生:「先ほど、サヤカさんの出血が多いというお話をお伝えしたと思いますが・・・あれから何度か処置をしたものの、まだ出血が続いている状態です。」
僕:「・・・そうんなんですね。」
やっぱり・・・と思いました。そうでなければ電話がかかってくるはずがありません。
驚くというより、「なって欲しくない現実がやってきてしまった」という感覚で、目の前が真っ暗になる感じでした。
先生:「それで、今から大きな大学病院に病院に救急車で搬送しようと思います。」
僕:「はい・・・分かりました。」
僕は淡々と答えていましたが、自分の指先がこきざみに震えているのを感じました。
先生:「一刻を争うので、このまま救急車に乗り込んで移動しながら、受け入れてくれる病院を探します。私も一緒に救急車に乗って付き添いますので、ご安心ください。搬送先が見つかりましたら、またご連絡します。」
僕:「はい・・・分かりました・・・」
さっきと違って、もう涙は出てきませんでした。
ただ、目の前が真っ暗になっていくような感覚でした。
先生の声のトーンと内容から、サヤが命の危険にさらされていることが伝わってきました。
先生:「受け入れ先が決まったら、入院手続きを旦那さんにしていただく必要がありますので、病院に行っていただくことはできますか?」
僕:「はい!もちろんです!すぐに行きます!」
先生:「よろしくお願いします。では、またご連絡します。」
そう言うと、先生は素早く電話を切りました。
先生の話し声の後ろで、看護師さんたちの声が飛び交って、ザワザワと動いている様子が聞こえてきました。
電話を切った後、僕はしばらく放心状態になってしまいました。
死ぬほど長い30分
それから受け入れ先病院が決まるまで、僕は報告の電話を待っている状態でした。
時間は夕方の6時半ぐらいです。ふだんなら夕食の時間帯です。
でも今はストレスで胃が収縮して、食欲はほとんどありませんでした。
でも、これから病院に向かうことを考えると、今のうちに何か食べてエネルギーをつけておかなければならない!と思いました。
そこで、家のすぐ近くの中華屋さんにダッシュして、テイクアウトを買ってきました。
この中華屋さんのテイクアウトは、サヤと一緒にたまに利用していました。
ギョウザがめちゃくちゃおいしくて、他のメニューでもまずハズレがないお店でした。
でも、今、ギョウザを口に入れたら、びっくりするほど味がしませんでした。
本当に何も味がしません。
何を食べているのか分からないぐらい、味覚がなくなっていました。
のども詰まった感じがして、飲み込みづらいです。
もしサヤを失ったら・・・こんな風に僕の世界は味も色もないものになるに違いない・・・そう感じました。
とりあえず今は、味がまったくしないギョウザと野菜炒めを口に詰め込んで、水で流し込みながらムリヤリ飲み込みました。
食べている間もスマホの画面を見つめていましたが、病院からは、なかなか連絡が来ません。
今はコロナのせいで、受け入れ先の病院も慎重になっているのかもしれません。
たまに「受け入れ先の病院がなくて、たらい回しにされている間に死んでしまった」というような悲しいエピソードを聞くことがあります。
今はそんな状態なのでは?と思って、不安がこみ上げてきました。
病院から再度電話がかかってくるまでの待ち時間は、30分ぐらいでした。
でも、僕にとっては何時間にも感じました。
死ぬほど長い待ち時間でした・・・
・・・つづく。
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