From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
前回の記事では、「脳は知らない発音を聞いたとき、日本語の知っている単語に置き換えて聞き取ろうとしてしまう」ことをお伝えしました。
ところが、これには例外があります。
「しゃべりは超がつくほど『カタカナ発音』なのに、なぜかTOEICの点数が高い人(800点~900点以上)」
がいるのです。
これは僕が英語を教える仕事を始めたばかりの頃は、とても不可解でした。
なぜ、発音が苦手なのにリスニングは聞き取れるのか?その理由が分からなかったのです。
もちろん、ご本人に聞いたところで、「リスニングの時の自分の脳内がどうなっているのか?」「他の英語学習者と何が違うのか?」なんて自分で説明できる人はいません。
そんなマニアックな質問に答えられるのは言語学者だけでしょう。
でも僕は、長年そういう人たちを観察してきた結果、見えてきたことがありました。
発音が苦手なのにTOEICのリスニングセクションの点数が高い人たちは、共通して「ある能力」が高いことが分かったのです。
文法力
それは、「文法力」です。「発音が苦手だけどリスニングが得意な人」のほとんどは、TOEICの結果分析をすると、文法問題の正解率が高いことが分かりました。
TOEICスコア表の下の方のゲージを見ると、リーディングセクション(右側)の一番下の「文法力を測るゲージ」があります。そのゲージの数値が、かなり高いのです。
また、文法問題だけではなく、長文読解のパートの正解率も高めなことが多いです。
TOEIC点数以外にも、共通するポイントがありました。それは、「理系で高学歴の人が多い」ということです。
理系の高学歴の人たちというのは、受験戦争を勝ち抜いてきた、「頭の回転が速く、記憶力の高い人たち」です。
だからこそ、文法力と読解力が高いんだと思います。
この分析結果から、僕はある仮説を立てました。
その仮説とは、
「発音が苦手だけどリスニングが得意な人は、4つのステップを脳内で超高速で行っているのではないか?」
ということです。4つのステップとは、前回の記事でもお伝えした、これです。
①音を聞く:「thing」
↓↓↓
②脳内:「シング」(カタカナ語で聞こえる)
↓↓↓
③選択:「sing? thing?」 う~ん・・・(迷う)
↓↓↓
④決定:文脈から考えて、ここは sing だろう!
という流れです。文法力と読解力が高ければ、この4つのステップの作業を行うと、正解率をアップすることができます。
でも、ふつうはこれはリスニングのスピードでは無理です。4つもステップを踏んでいたら、脳内の処理速度がついていかないからです。
でも、理系の高学歴な人なら、常人の何倍ものスピードで頭が回転するので、この4ステップをリアルタイムで行うことができるかもしれません。
これはあくまで、僕の個人的な研究結果なので、科学的な証拠はありませんが、おそらく理由として説明が付くような気がします。
実際、僕が今まで出会った「高学歴で発音が苦手なタイプの人たち」は、ネイティブが文章でしゃべってきた時にはスムーズに受け答えできますが、英単語の聞き取りは苦手な傾向にありました。
たとえば、「bus(乗り物のバス)」と「bath(お風呂)」のような、シンプルな英単語が聞き分けられず、何度も聞き返しているシーンを目撃しました。
この研究結果から、僕は「リスニングに必要なのは、まずは文法力なのでは?」と気付いたのです。
その視点で見ていくと、もう一つ新しい発見がありました。
・・・つづく。
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