From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
前回の記事では、「3:7の法則」をお伝えしました。
「話せる力」と「聞く力」を比べると、だいたい3:7になる、という法則です。
「話せる力が3」だとしたら、「聞ける力は7」だということです。
この差を埋めるのが「瞬間英作文トレーニング」です。
ところが、ふつうはこの差が完全にイコールになることはありません。
理由は3つあります。
理由①欲が出る
瞬間英作文トレーニングで話せることが増えてくると、英語に対するモチベーションがグングン上がってきます。
英語で話せる範囲が広がるにつれて、
「もっと話せるようになりたい!」
「もっと深いトピックについて語り合えるようになりたい!」
「もっと英単語力を増やしたい!」
といった欲が出てきます。
この欲を満たすには、瞬間英作文トレーニングだけでは限界があります。
なぜなら、瞬間英作文トレーニングはあくまで「文の型」を「使えるレベル」に引き上げるトレーニングなので、使う素材が「カンタンなもの」だからです。
自分の知っている文法と英単語が使われている英文を使うのが前提です。
なので、瞬間英作文トレーニングをしているだけでは、なかなか英語力の「上限」は伸びていきません。
英語力の「上限」とは、英単語力や、長い構文を英語の語順のまま理解していく力です。
上限を伸ばすのは、あくまで「音読トレーニング」です。シャドーイングなどを使って「今の自分よりもちょっと背伸びした英文」を使って音読トレーニングするこで、初めて自分の上限を伸ばしていくことができます。
しゃべれることが増えてくると、どうしても欲が出てきます。
欲が出てくると、音読トレーニングで英単語力や構文の理解力をアップさせよう!という気持ちになります。
その結果、あなたのリスニング力の上限はどんどん伸びていきます。
なので、瞬間英作文で「しゃべる力」をつけながら、音読トレーニングで「リスニング力」を鍛えて上限を伸ばすという、「いたちごっこ」になるのです。
これが、リスニング力とスピーキング力が同じにならない理由の1つ目です。
理由②英語の底力が勝手に上がる
瞬間英作文トレーニングで英語を「使える力」がアップすると、不思議なことが起こります。
これまで、「頭の中だけで理解していた」ことが、無意識レベルで「使えるレベル」まで上がると、それまで頭では理解できなかったことまで理解できるようになるのです。
どういうことでしょう?
例を見てみましょう。
I am no more a child than you are!
という言葉を映画のセリフなどで聞いたとします。
このセリフを聞いて、瞬間的に意味が取れる人は少ないでしょう。
こうして文字を目で見ても、すぐには意味が分からないと思います。
使われている英単語自体は、中学英語レベルですが、一見、この構文は難しそうに見えます。
クジラ構文
これはよく、大学受験用の文法書などでは「クジラの構文」と呼ばれていて、「難関構文」と呼ばれるものの一種です。
なぜクジラの構文と呼ばれるかというと、この構文を解説する例文が、クジラを題材にしているからです。
A whale is no more a fish than a hourse is.
(馬が魚ではないのと同じように、クジラも魚ではない)
という例文です。
日常生活で絶対使わないであろう例文ですよね(笑)一生のうちで、これを口にする機会はなさそうです。
でも、同じ構文でも、さっきのセリフ、
I am no more a child than you are!
なら使いそうです。
意味は、
「あなたが子供じゃないなら、私も子供じゃないわ!」
です。女子高生同士がケンカするときのシーンで、同い年の子に「あんたは子供っぽい」と言われた時の反撃のセリフらしいです。
ちなみにこれは、森沢洋介先生の名著「英語完全上達マップ」に載っていた例文ですが、森沢先生はこのセリフを映画の中で見かけたそうです。
このセリフと、さっきのお堅いセリフ(クジラの例文)は、実はまったく同じ「型」を使っています。
no more ~ than ・・・
(~が~でないのと同じように、~も~でない)
という型です。
瞬間英作文トレーニングを積むと、このような一見複雑で難しそうな構文も、透けて見えるようになります。
それはまるで、マジックの「タネ」を知った時のような感覚です。
このクジラ構文の「タネ」の詳しい解説は長くなるので、次回の記事でお伝えします。
とりあえず今日お伝えしたいのは、こういった複雑に見える構文も理解できるようになる、ということです。
瞬間英作文トレーニングには、スピーキングのスピードが上がるだけではなく、こういった「一見複雑そうな構文を見透かす目」を養う効果もあります。
その結果、英語力全体が底上げされます。そして、リスニングで聞ける範囲も広がっていくのです。
以上2点、「欲が出る」と「英語の底力が勝手に上がる」のが、リスニングとスピーキング力がイコールにならない理由です。
・・・つづく。
※次回は、クジラ構文のタネ明かしをします。
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