【同時通訳マシンが進化すると英語学習者の数は減るのか?③】

From  師範代Shinya(新村真也)
 
(→前回のつづき)
 
 
前回の記事では、「どんなにAIが発達しても、本当の意味での同時通訳は難しい」という僕の考えをお伝えしました。
 
 
プロの同時通訳者のように、「相手が言おうとしていることを事前に予測した上で、先回りしながら訳をしていく」という作業は、さすがにAIにはできないと思います。
 
僕は今まで何度か海外のビジネスリーダーが日本で公演をするイベントを見に行きましたが、そこで同時通訳をしていた方々のスキルはまさに神業でした。
 
 
「先回り通訳」がスゴすぎます!
 
 
もちろんAIも学習機能があります。
 
同時通訳マシンで通訳をする対象の人たちの「過去のスピーチのデータ」などを事前にすべてAIに読み込ませておけば、各人の思考パターンや話か方のクセなどを元にして「先回り同時通訳」ができるようになるかもしれません。
 
 
でも、それには事前準備が必要になります。高いコストもかかるでしょう。
 
 
それに、同時通訳マシンが活躍するのは主に海外旅行です。
 
 
僕ら一般人が海外旅行する時に、「自分の過去のスピーチデータをAIに読み込ませる」なんてことはできません。
 
 
もし頑張って自分のスピーチデータをAIに入れたとしても、海外旅行先で出会う相手がどんな人か?なんて事前には分かりません。
 
 
旅行先で出会う人たちは「一期一会」です。
 
 
その人たちと楽しくコミュニケーションを取るために、同時通訳マシンが使われるケースが最も多いと思います。
 
 
やはりどんなにテクノロジーが進歩しても、「先回り同時通訳マシン」が発売されて、僕ら一般人がスマホのように日常的に使う日が来るとは、僕は思えません。(少なくともあと10~20年ぐらいの間には)
 
 
 

翻訳スピード自体が上がった場合

「先回り同時通訳」ができなかったとしても、翻訳スピードと正確さは今後どんどん上がっていくでしょう。
 
少なくとも文章のやりとりなら、どこの国の人が相手でも困らなくなる日が来るはずです。
 
 
そうなると、メールや文書のやりとりがメインのビジネスシーンでは、同時通訳マシンが今後どんどん活躍していくと思います。
 
 
一方で、海外旅行での会話や外国人の友達との会話では、同時通訳マシンは使いづらい状態が続くと思います。
 
 
どんなに処理スピードが上がったとしても、マシンを介して話す以上、どうしても5ステップが必要になります。
 
 
①自分がマシンに向かって日本語を話す
 
  ↓↓↓
 
②マシンが英語に訳して読み上げる
 
  ↓↓↓
 
③それを相手が聞いてマシンに英語で返す
 
  ↓↓↓
 
④マシンが日本語に訳して話す
 
  ↓↓↓
 
⑤それを自分が聞いて理解する
 
 
という流れが必要です。
 
 
ステップ②と④の部分は技術の進歩でスピードアップできますが、このステップ自体がなくなることはありません。
 
 
「スピードが上がれば違和感がなくなるのでは?」
 
 
と思われるかも知れません。
 
実はこれに関しては、僕は実験をしたことがあります。
 
 

実験君:同時通訳マシンだけで話してみた

僕は以前英会話スクールの講師として働いていたときに、昼休みによく同僚のネイティブ講師と一緒にご飯を食べに外へ出ていました。
 
 
相手のネイティブ講師が日本語をあまり話せないので、僕らの会話はいつも英語でした。(1対1です)
 
 
あるとき、僕がグーグル翻訳のアプリをスマホにインストールしたので、「それを使ってみよう!」という話になりました。
 
 
そこで、僕は自分の英語を封じて日本語だけで会話してみました。
 
 
先ほどの5ステップで話してみたのです。
 
 
ふだん直接やりとりしている相手と、ある日突然同時通訳マシンを通して会話することで、いつもとの違いを実感できると思ったのです。
 
 
結果は・・・ものすごい違和感がありました。
 
 
僕が日本語をしゃべって、それをグーグル翻訳が聞き取って英語にして、それを相手が聞き取って、返事を英語で話して、それをグーグル翻訳が日本語にして、それを僕が聞き取って・・・
 
 
という流れは、とてもぎこちなさを感じました。
 
 
また、たまに誤訳があって意味が通じない言葉が出てくることがありました。
 
 
僕らはこのぎこちなさが面白くて、そのまま30分ぐらい続けていました。
 
 
終わった後の感想としては、僕も相手も「これで会話し続けるのはキツいね」という結果になりました。
 
 
まったく同じ相手と「英語で直接やりとり」&「グーグル翻訳を介したやりとり」の両方を経験したからこそ、違いを痛感しました。
 
 
海外旅行先で「どの電車に乗れば良いのか?」といったような、短い情報伝達ならグーグル翻訳でも十分でしょう。
 
 
でも、会話を通して仲良くなりたい、友情を育みたいと思ったら、グーグル翻訳の5ステップでの会話では難しいと思います。
 
 
たとえテクノロジーの進歩で翻訳スピードが上がったとしても、はやり直接相手の目を見て共通言語で話すことと、機械を介して話すことには差があります。
 
 
その点で、「AIの進歩が英語学習者の数を減らす」とは思えません。
 
 
むしろAIで英語に興味を持つ人の数が増えて、ぎこちない会話を経験した後に、「自分の言葉で話してみたい!」という欲求が高まると思います。
 
 
そして、英語学習を本格的に始める人たちが増えると僕は予測しています。
 
 
だから僕は「同時通訳マシンの発展」を応援します。
 
 
次回からは、発売されたばかりの同時通訳マシン「ポケトークS(新型)」のレビューをしていきます。
 
 
・・・つづく。
 
 
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