From 師範代Shinya(新村真也)
僕はパソコンの前で悩んでいました。
なかなか言葉が出てきません。こんな文章を書くのは生まれて初めてだったからです。
こんな文章を書いていた経験は、日本ではしたことがありませんでした。
僕がカナダに留学中に取っていたコースは、ビジネスコースでした。トータル3ヶ月間のコースで、内容はこんな感じです。
1ヶ月目:ビジネス文化を学ぶ
2ヶ月目:実務を学ぶ(書類作成&プレゼン)
3ヶ月目:実際にインターン生として現地で働く
うまくいくと、そのままインターンとして働いている企業で職を得られることもある、と言われました。
僕はちょうど2ヶ月目に入ったあたりから、自分の履歴書を作り始めました。授業の中で先生が作り方を教えてくれて、その後は個人作業で作って、でき上がったものを先生が添削してくれるというものです。
そこで僕は、日本文化との違いに驚きました。
英語の履歴書の順番
日本では、最初に学歴から書き始めます。そして、徐々に時系列で増やしていって、一番下に最後の職歴を書きます。
これは、「最初に卒業する学校でその後の運命が決まる」という日本のエスカレーター式学歴社会を象徴しているように思えました。
ちなみに僕は高卒なので、最終学歴は、「三島高等学校 商業科卒」です。
僕はこの、毎回学歴から書いていくスタイルに違和感がありました。いつも「過去の自分」でジャッジされている感覚があったのです。
僕はこれまでに日本で転職を3回しましたが、履歴書を書くたびに、いつも自分の「変えられない過去」ばかりにフォーカスされている気がしていました。
たかだか18才の頃の自分の決断が、その後もずーっとついて回るのかぁ・・・と感じていました。
でも、英語では順番が真逆でした。英語の履歴書では、今の職業が一番上に来ます。だんだん下がっていって、学歴は一番下に来ます。
もちろん、英語圏でも学歴は重視されます。でも、日本のように「良い大学を出てさえいれば、その後の人生は安泰だ」みたいな考え方はないみたいです。
そもそも英語圏の文化では、同じ会社にずーっととどまり続ける人の方が少ないので、「安定=良い」という価値観ではないと先生が言っていました。
最近の職歴を一番上に書く欧米式の履歴書は、「今」にフォーカスしているような気がして、僕にはこっちの方がしっくり来ました。
写真や趣味欄はない
もうひとつ、僕が驚いた点は、日本の履歴書では必須の「顔写真」や「趣味」のスペースもなかったことです。
理由は、顔写真を載せると、書類選考の時点で人種差別につながるリスクがあるからです。人事担当者が応募者の写真を見て、「黒人だから書類選考で落とそう!」とか、「アジア人は嫌いだから面接はしない」とか、そういう偏りが出る危険があります。
どの国にも、人種差別はあるようです。そういう不公平さを防ぐため、写真は載せないそうです。
同じ理由で、求人広告に「年齢制限」を書くのもカナダでは法律で禁止されていました。年齢差別は人種差別と同じくらいのタブーらしいです。
日本の求人広告ではよく、「~35歳まで」と書いてあることを先生に伝えたら、ビックリしていました。
あと、趣味は仕事と関係ないので、どうでもいいそうです(笑)そもそも、日本の履歴書にはなぜ趣味を書くのか?を聞かれましたが、僕も答えられませんでした。
もうひとつの履歴書:カバーレター
実は、僕が書くのに悩んでいたのは、履歴書ではありませんでした。履歴書だけなら、ただ日本と順番を変えればいいいだけです。
僕が書けなくて悩んでいたのは、もうひとつの書類でした。
それは、「カバーレター」と呼ばれるものです。最近は日本でも一部の企業が導入し始めて、学生にカバーレターの提出を求めているところもあるようですが、当時の僕にとっては全く経験のない、新しいものでした。
カバーレターというのは、自分の職歴や身につけてきたスキルをもとに、
「私は今後、あなたの会社にこんな利益をもたらすことができます。」
「あなたが私を雇った方がいい理由は、これです!」
といった感じで、ガンガン自分を売り込んでいく手紙です。「企業へのラブレター」と呼ばれています。
履歴書は、ただこれまでの経歴と事実を淡々と並べるだけですが、カバーレターは、自分の言葉で、熱い文章で自分自身を売り込んでいく必要があります。
こういう教育は、日本では行われていません。
それどころか、個性や欲求を抑えて周りに合わせるのが良い生徒だと教えられます。
僕は今まで割と自分の好きなように仕事を変えてきたつもりでしたが、それでもこんな風に自分のスキルや経験値を他人におおっぴらに売り込むメッセージを書くのには抵抗感がありました。
とりあえず控えめに書くと、先生に何度もダメ出しを食らいました。
そのクラスの先生は、50代くらいの白人女性で、すごく厳しくて、ちょっと怖い人でした。
先生は僕のカバーレターを読んだ後、僕にこう言いました。
「このカバーレターからは、ぜんぜん熱意が伝わってこない。あなたが働きたい経営者が私だと思って聞いてね。いい?
私はなぜあなたを雇わなければならないの?
日本でジーンズショップの店長を7年間もやってたってのはすばらしい職歴よ。でも、あなたが今までやってきたことは、雇い主の私にとってはどうでもいいの。
私が興味があるのは、あなたの過去でもなければ、能力でもなくて、私の会社の未来。
私が知りたいのは、あなたは今までの経験をどう生かして、これからどんなメリットを私の会社にもたらしてくれるか、なのよ。
私が知りたいのは、過去じゃなくて、未来。あなたが私の会社にもたらす未来なの。
さあ、もう一度書き直して、私を説得させてみてちょうだい。」
うっ!そうか!未来か!
そっちの方が自分にはしっくり来るな!!
そして、何度も書き直すうちに、自分でも恥ずかしくなるくらいガッツリと自分を売り込む文章が完成しました。
次は、対面の面接試験の練習です!!
・・・つづく。
—————————————
※「たった2時間で英語耳になる!ライブ体験セミナー」はこちら
—————————————
From 師範代Shinya(新村真也)
(英語の達人養成ジム 師範代)
P.S.
※このブログに「読者登録」をしていただくと、最新記事をメールで受け取ることができるようになります。登録はこちらをクリック
コメントを残す