from 師範代Shinya
僕がこの本を読んで衝撃を受けた内容のトップ3を要約すると、
①叱ることには依存性がある。人は誰かを叱っている時に、脳内に快感物質が出る。
②叱ることは、実は相手のためではなく自分のためにやっている。
③叱ることは、ほとんど効果がない。
ということです。
これは、小さな子どもを持つ僕にとっては「え~!そうなの?!」という衝撃を受けました。
仕事でも同じです。僕が以前、店長の仕事をしていた頃に、もしこの本が出て読んだとしたら、同じように「え~!そんなバカな!」と感じていたでしょう。
当時の僕は、直属の上司から「スタッフを叱れない店長は、スタッフにナメられる。みんな言うことを聞かなくなる。そんなヤツは店長失格!」と何度も言われていたからです。
英語学習も同じだと思います。
「厳しく指導してくれる先生=良い先生」という図式は、まだ英語学習界にある気がします。
そして多くの場合、「厳しくする=叱る」という意味で捉えられています。
先生も生徒も、そう思っている人が一定数いるでしょう。
また、独学の場合でも、自分自身のできない部分にばかりフォーカスして、「ボキャが足りない!これじゃダメだ!」「リスニング力が足りない!これじゃダメだ!」と、自分で自分を叱るような学習法を続けている人も多いはずです。
僕自身は、これまでの経験から自分が「叱られて伸びるタイプではない」と確信していたので、自分の英語学習に関しては、厳しい先生を避けてきました。
心の中で自分で自分を叱ることも、極力避けてきました。
それでも英検1級&TOEIC975点までは取れたので、学習効果はあったと言えると思います。
でも今回、そのことが脳科学的に実証された感覚がして、嬉しくなりました。
①叱ることには依存性がある。人は誰かを叱っている時に、脳内に快感物質が出る。
叱ることは、アルコールや薬物と同じように、中毒性があるそうです。
なぜなら、叱ることは人間の本能に組み込まれているからです。
叱るという行為は、「相手の行動を、自分の望む方向に変えること」が目的にあります。
人は誰でも、自分個人や自分の所属する集団にとって不都合な行動を取る人が現れると、不安になります。
そこで自分を不安にさせている相手を「叱る」ことで、その行動を変えてもらい、安心しようとするのです。
叱ることは、相手に「自分の怒りの感情」をぶつけて、相手のネガティブな感情(恐怖、不安、不快など)を引き出すことで、強制力を使おうとする行為です。
ではなぜ、叱ることが人間の本能に埋め込まれているのでしょうか?
それは、人間が集団で生活する生き物だからです。
人間の本能は何万年もかけて進化してくる過程で生まれたものです。
まだ文明が発達していなかった時代には、村の外に出ると獣だらけの世界でした。
もし、村人の1人がルールを破って勝手に村の外に飛び出した場合、他の村人全員の命も危険にさらされることになります。
そうならないように、ルールを破った人間を厳しく叱ったり、罰する本能が、人間の脳内で発達していきました。
人間が本能に従って行動した場合、「快感」というご褒美が与えられる仕組みがあります。
「叱る」という行為も本能に組み込まれたことで、人は他人を叱って快感を得るメカニズムを手に入れてしまったのです。
僕はこの説を聞いた時に、自分がよく英会話レッスンで話す南アフリカのP先生の体験談を思い出しました。
南アフリカでは「通り魔」がほとんどいない理由
日本では最近、電車内や人の多い通りで刃物を振り回して他人を傷つける「通り魔事件」が増えています。
でもP先生によると、南アフリカではこういう事件はほとんど起こらないそうです。
犯罪と言えば、もっぱら強盗で、「金品がないから、他人から奪って逃げる」というのが当たり前と言っていました。
ところが、南アフリカの警察はあまりヤル気がないそうです。
通報しても到着するのが遅くて、事後処理だけして帰るので、警察の存在が、犯罪の抑止にはなっていないそうです。
そういう治安状態の国では、一般市民が警察の役割を担うことになります。
ひったくり強盗が起きて、被害者の女性が叫んだら、犯人が逃げた先にいる一般男性がタックルして地面に押し倒し、それを見た他の男性たちもすかさず加勢して、犯人を取り押さえるそうです。
そういう風潮があるので、南アフリカでは人の多いエリアで強盗などを行うのは、犯人にとってもリスクが高いそうです。
一般市民が犯罪を目撃した時に、
「コラ!そんなことをしちゃいかんぞ!」
と、犯人を力ずくで取り押さえる行為も、「叱る、罰する」のうちに入ります。
文明が発達していない社会では、叱ることは、平和を保つために有効な手段ということの実例でしょう。
そしてもう1つ、P先生が言っていて興味深かったのが、「犯人を取り押さえるのが好きな輩が、わざわざ犯罪が多いエリアに行くことがある」ということでした。
おそらく、犯人を取り押さえた時には、取り押さえた人の脳内には、ものすごい快感物質が出ていることでしょう。
その快感をもう一度味わいたくて、自ら犯罪者を探すようになってしまうのです。
南アフリカでは、それは「正義」と呼ばれる行為です。
でも、治安の良い日本で同じことをやったら、「やり過ぎ」になって自分が逮捕されてしまうかもしれません。
とはいえ、社会の治安が良くなっても、僕らの本能が消えるわけではありません。
行き場を失って押さえつけられた「叱る本能」は、身近な人達に向けられたり、ネット上で有名人に向けられたりするようになるのです。
・・・つづく。
今回紹介した「叱る依存が止まらない」はこちら↓↓
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