From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
前回の記事では、英単語を増やす3つのステップは、
①音読トレーニング(文の中で意味と使い方を覚える)
②英単語帳(システマチックに覚える)
③多読&多聴(自然に覚える)
とお伝えしました。そして、一番大事なのはこの「順番」です。
多くの場合、逆パターンでやってしまうのです。
つまり、③→②→①という順番です。
初心者が手を出しやすいのは、「聞き流し系教材」です。
「聞き流しているだけで、いつの間にか知っている英単語が増えて、話せるようになる」
という甘い広告フレーズは魅力的です。
僕も英会話を始めてすぐの初心者の頃に、こういう聞き流し系教材に手を出したことがあるので、気持ちはよく分かります。
でも残念ながら、聞き流しが効果を発揮するのは、最後のステップです。
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具体的には、手持ちの英単語レベルが8,000~1万語を超えたあたりから、聞き流し教材は力を発揮します。
8,000~1万語というと、TOEICテストの中で知らない英単語がほぼゼロになった状態です。
ちなみに、大学入試のセンター試験の英単語レベルは6,000~7,000語前後と言われています。
中学卒業までに覚える英単語は、学校にもよりますが1,500~3,000語と言われています。
大人の初心者の手持ちボキャブラリーは、ほぼ中学英語の範囲だと思いますので、聞き流し教材に手を出すには早すぎます。
先に自分の英単語レベルを上げてからでないと、聞き流し系教材は力を発揮できないのです。
初心者が聞き流し教材を使うと、高い確率で挫折します。
なぜなら、手持ち英単語が少ない状態でいくら聞き流しても、効果が薄いからです。
たしかに労力は少ないかもしれませんが、かけた時間に対する効果が薄いと、だんだんヤル気がそがれていきます。
これは実際に聞き流し教材を使ってみたことがある人なら共感してくれると思いますが、毎日同じ内容のCD(しかも聞き取れない内容)を聞き続けるのはけっこうしんどいです。
いくら他のことをしながら聞いていたとしても、すぐ飽きてしまいます。飽きたCDを聞き続けるのは、予想以上にストレスです。
まず、ここで英語学習そのものをあきらめてしまい、挫折しやすくなります。
#英単語帳もけっこうキツい!
聞き流し教材がダメだと分かると、次に手を出すのが英単語帳です。
その理由は、ほとんどの人は学生時代にイヤイヤながらも使った経験があるからです。
「はぁ・・・結局、英単語帳で覚えるしかないんだろうな。単調でつまらないけど、なんだかんだでこれが王道だし・・・」
そんな気分で英単語帳を手に取り、学生時代と同じ要領で、
英単語→日本語訳
revenue → 収益
currency → 通貨
という順番で機械的に覚えていきます。
でも、この方法は丸暗記作業なので、単調でつまらないと感じることが多いです。
人間の脳は本来、「機械的な丸暗記」が得意ではありません。
脳の得意分野は、「感情」「体験」「ストーリー」などを通して記憶することです。
つながりもストーリーもない英単語をひたすら順番に丸暗記していく作業は、脳に負担をかけます。
そして、苦労の割にすぐに忘れてしまうのです。
学生時代に僕らが英単語帳で勉強させられたのは、その方法が「目的に合っていたから」です。
つまり、紙のテスト上で良い点を取ることです。
正しい選択肢を選んだり、正確な「和訳」をしたりするには、機械的な丸暗記が有効だったのです。
でも、紙のテスト上で良い点を取ることと、実際に英会話の中で英単語を使いこなすことは、まったくの別物です。
大人になってから、英会話で使う目的で英単語帳を使うことは、あまり良い方法ではありません。
もちろん、使うステップによっては有効ですが、そのタイミングはほとんどの人たちが思っているより後です。
具体的には、手持ちの英単語レベルが5,000~6,000語レベルぐらいになってきた時が、英単語帳の出番です。
これより前に英単語帳に手を出すと、挫折しやすくなります。
僕の場合は手持ちボキャが4,000語台の頃に、この知識がないまま英単語帳に手を出してしまいましたが、まだちょっと早かったせいで、精神的に苦しくなって危うく挫折しそうになりました。
周りにモチベーションを上げてくれる学習仲間がいたので何とか持ちこたえましたが、あの頃は今振り返っても、危なかったです。
このステップで英語学習を挫折する人がほとんどです。
聞き流し教材から始めて、ダメだったからといって英単語帳に手を出したり、いきなり最初から英単語帳をやり始めたりすると、かなり高い確率で挫折することになります。
だいたい8割ぐらいの方がこのステップで挫折します。
聞き流し教材→ダメ
英単語帳→ダメ
自分→英語の才能なし
という結論に達するのです。
それでも、なんとか生き残り、今にも消えそうなモチベーションを必死で守りながら、迷える「英語ジプシー」が最後にたどり着く場所。それが音読トレーニングの世界です。
・・・つづく。
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