From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「アクション俳優になろう!」と決めて、「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
演技の最上級クラスへの違和感は、回を重ねるほど増していきました。
しばらく通っていると、だんだんクラス全体の人間関係が見えてきます。
どうやらこのクラスのリーダー格は、身体が大きくてガッシリしたK君のようでした。
K君はどうやら僕と同い年の21才で、先生とも仲良しで、このクラスの在籍期間はかなり長そうな雰囲気でした。
そしてK君の取り巻きには何人かの男女がいて、この人達も通っている歴が長そうでした。
取り巻きの人達の年齢層はおそらく20代前半~30代前半ぐらい。K君を含むトータル7~8人が仲良しグループのようでした。
この仲良しグループは、ほぼ毎回「集団下校」をしていました。
終わった後にスクール前の通りをゾロゾロ歩いて、ワイワイ騒いでいる姿をよく見かけました。
どうやらこのメンバーで毎週集まるのが楽しくて仕方ない、という雰囲気でした。
僕もヒゲ先生のクラスで一緒だったT君とSさんとは仲良くなって毎週のように一緒に帰っていたので、K君一派の人達の気持ちはわかります。
でも「自分たちもあの輪の中に入りたい」とは思えない何かがありました。
最上級クラスには僕を含めてトータルで20人弱ぐらいの生徒がいましたが、そのうち約半数が「K君一派」だということが判明しました。
そして先生(熱血先生)もこのクラスで教えている歴がかなり長いようで、K君一派との距離感がすごく近く見えました。
レッスン中は、
「先生とK君一派がワイワイ楽しむのを、僕ら新参者が外から眺める」
というような構図になっていました。
クラスメイトのT君がこの状況を「村社会」と表現したのは、まさにピッタリの表現でした。
でも、僕らは「村に入れて欲しい」とは思えませんでした。
別にふてくされて意地を張っているわけではなく、「あちら側に行きたくない」と思わせる何かを感じていたのです。
その何かを特定するのは、自分でも難しい作業でした。
やる気がないわけじゃない
僕ら「ヒゲ先生一派」が、K君一派の村社会に入りたくないと感じる理由は、うまく言い表せませんでした。
別にK君一派は「やる気がない」わけではありません。
レッスン中に誰も携帯をいじったりはしないし、演技の練習もちゃんとしてきて、マジメにやっています。
どこが悪い?と言われたら何とも言えません。
うまく言えないのですが、「あの村に入ってはいけない」という本能的なメッセージを、僕は受け取っていました。
それは僕だけではなく、ヒゲ先生の厳しいクラスを一緒に乗り越えてきたT君とSさん、そして他のクラスメイトも同じようでした。
みんなこの最上級クラスで、これまでの勢いやエネルギー、情熱などを徐々に奪われていくような気分になっていました。
良いやつK君
とはいえK君は、決してジャイアン的なキャラではありませんでした。
むしろ良いやつでした。性格は明るくて、いつも元気があって、ニコニコしています。
スポーツマン体型でガッシリしていて、ラグビーでもやっていそうな雰囲気です。
ふだん話す声も大きくて自信があるように見えるのですが、その割に実は人見知りのようで、僕ら新メンバーと組んで練習する時には急に静かになります。
K君から敵意はまったく感じません。
だからこそ、K君一派を嫌う理由がうまく言い表せないのです。
これは後からわかったのですが、K君はどうやらアクション俳優になりたいらしくて、格闘アクションの練習しているようでした。
実際、休み時間にはよく取り巻きの人達の前でアクションの動きを披露していました。
このスクールでは数少ない、僕と同じ「アクション俳優志望」の仲間でした。
実は僕はアクション俳優の需要が日本国内では少ないことが分かって、その道への情熱が冷め始めていました。
でも、K君はまだ夢をあきらめていないように見えました。
だから僕は、K君を食わず嫌いしないで仲良くなってみたがいいのではないか?
と思うようになりました。
少なくともこのスクールでの経験値が長いのは間違いなさそうだし、今までこのスクールで見てきたこと&感じたことをK君に聞かせてもらうことは、とても有益だと感じました。
そんなタイミングで、久しぶりにスクールの「夏の集中ゼミ期間」がやってきました。
「夏の集中ゼミ」は、お盆の夏休み期間を利用して、
「自分が学びたいジャンルに特化したクラスを5日間連続で受ける」
という講座です。
K君は今年「アクション俳優養成講座」を取るようなことを、取り巻きメンバーの前で言っていました。
僕が前回「アクション俳優養成講座」に参加した時にはK君はいませんでした。
その後僕は、アクション俳優の道をあきらめかけていましたが、試しに今回も参加してみることにしました
この集中ゼミ期間なら、おそらくK君ひとりと近い距離で話すきっかけになるかもしれません。
・・・つづく。
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