【僕が「習い事」に感じた夢と希望:演技編134】

From  師範代Shinya(新村真也)
 
(→前回のつづき)
 
※僕が20才の頃、「アクション俳優になろう!」と思って「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
 
 
映画の役の一般公募オーディション会場は、広くて静まりかえっていました。
 
 
廊下に並べられたイスに座っている5人のうち、最初の1人が呼ばれました。
 
 
背の高い美女です。
 
 
女性は緊張してかすれた声で「はいっ!」と小さく返事をして、部屋に入っていきました。
 
 
この女性はさっきの待合室では僕の席の隣にいたので、セリフを音読する声がけっこう聞こえていました。
 
 
その感じでは、おそらく演技を学んだ経験はなさそうでした。
 
 
とても小さな声で、自信がなさそうにボソボソとしゃべっている感じでした。
 
 
感情を込めるのも苦手そうです。
 
 
僕は思いました。
 
 
・こういう風に、ルックスが良くて演技が素人だった場合、採用する側としてはどう感じるんだろう?
 
 
・ルックスが役のイメージにバチッとハマれば、後は演技力は短期間のレッスンで上達できるものなんだろうか?
 
 
・撮影が始まるまでに十分な演技力に仕上がらなくても、何度も撮り直してOKが出るまでやればいいや、という風になるんだろうか?
 
 
もし僕が撮影する監督側だったら、ある程度の演技力は重視するような気がします。
 
 
でも、たまにテレビドラマとかで「準主役級に抜擢された若手アイドルの演技がイマイチで、視聴者が興ざめしてしまう」というような作品がけっこうあるのも事実です。
 
 
おそらく、ルックスと演技力、どちらかを優先するとしたら、ルックスのような気がします。
 
 
視聴率(映画なら観客動員数)を取ることを第1優先にした場合、やっぱり有名な俳優さんで主役周りを固めて、脇役だけど良い役どころを新人の美人女優やイケメン俳優を抜擢する、という流れがリスクが少ないような気がします。
 
 
さらにその美女&イケメンを引き立たせる脇役として、普通のルックスの役者を使う、といった感じでしょうか。
 
 
そんな風に、「採用する側」の損得感情に思いを馳せているうちに、オーディションはどんどん進んでいきました。
 
 
 

ついに自分の番が!

ついに僕の名前が呼ばれました!
 
 
いよいよ初の「本物のオーディション」です。
 
 
受かったら自分がお金を払う「タレント養成スクール主催のオーディション」ではありません。
 
 
受かったら自分がお金をもらえる「映画の役を決めるオーディション」です。(多分)
 
 
僕は事前にあれこれ考えすぎたせいで、「何としてでも受かるぞ!」みたいな気合いはなくなっていました。
 
「役のイメージと自分のキャラが合ってなければ、どんなに演技力があっても採用されない。」
 
 
という、採用する側の気持ちになった場合、「どんなに頑張っても結果はコントロールできない」ことが分かりました。
 
 
そこで僕は、このオーディションのゴールを「合格」ではなく、「新しい経験値のブロックを積み上げること」に変えました。
 
 

オーディションスタート!

部屋に入ると、さっきの控え室と同じぐらい広い空間に、長机が2つ、横に並べてありました。
 
 
その長机の向かい2メートルぐらいの位置に、イスがポツンと1つ置いてあります。ここが僕が座る席でしょう。
 
 
長机には、5人の面接官が横一列に並んで座っていました。
 
 
おそらく、真ん中に座っている年輩男性が監督っぽい雰囲気です。
 
 
監督の両サイドには、中年男性が1人ずついます。
 
 
そして、端の両サイドには、中年女性が1人ずついます。
 
 
さっきまでは緊張感はそんなにありませんでしたが、こうしてズラッと並んだ面接官を目の前にすると、この光景だけで緊張します。
 
 
僕はドキドキしながら長机に近づいていきました。
 
 
僕:「よろしくお願いします。」
 
 
監督っぽい真ん中の男性が言いました。
 
 
監督:「よろしくお願いします。そちらのイスに座ってください。」
 
 
僕:「はい。失礼します。」
 
 
監督は僕が事前に提出した履歴書を見ながら、ふんふんとうなずいていました。
 
 
毎回そうですが、この「自分がジャッジされている待ち時間」が一番緊張します。
 
 
・・・つづく。
 
 
 
 

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