【僕が「習い事」に感じた夢と希望:演技編143】

From  師範代Shinya(新村真也)
 
(→前回のつづき)
 
※僕が20才の頃、「アクション俳優になろう!」と思って「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
 
 
歌のレッスンを受けるようになって、僕とT君のモチベーションが上がりました。
 
 
歌の先生(M先生)は、現役のミュージカル女優で、スゴいオーラをまとった人でした。
 
 
立ち方、歩き方、ちょっとした立ち居振る舞いなど、細かい部分まで全てが優雅でした。
 
 
「貴族」という言葉がピッタリ合う雰囲気の女性でした。
 
 
これは僕の予想ですが、M先生はふだんのミュージカル舞台で貴族の役を演じているうちに、日常生活の中でも同じ動きが染みついてしまい、抜けなくなっているのかもしれません。
 
 
よくプロの役者さんは役に入り込むために、日常生活の中でも役のキャラで行動し続けることがあると聞いたことがあります。
 
 
ミュージカルは西洋文化なので、当然出演者も西洋人役が多いと思われます。
 
 
そのせいか、M先生は日本の貴族というよりも、西洋の貴族っぽい雰囲気がありました。
 
 
演技の先生たちは男女ともにレッスンの時の服装は上下ジャージやシャカシャカしたナイロン素材のスポーツウェアが多い印象でした。
 
でもM先生だけは、いつもドレッシーなワンピースを着ていました。
 
ちょっとした仕草まで完璧に計算されているかのような美しい所作なのです。
 
 
M先生を見ていると、まるで舞台上の貴族のキャラがそのまま目の前にやってきたような感じでした。
 
 
僕とT君は、いつもM先生の持つ非日常的な芸能人オーラに圧倒されていました。
 
 
「一流のミュージカル女優から歌を教われる!」
 
 
という喜びを感じていました。
 
 

M先生の歌声

肝心のレッスン内容はどうだったか?というと、これもまた迫力がありました。
 
 
M先生はクラスルームに備え付けの電子ピアノを弾きながら、僕らに歌わせます。
 
 
最初にサラッとコツを解説した後は、実際にM先生がお手本を歌って見せてくれます。
 
 
その時の迫力がスゴいのです!!
 
 
ふだん何百人もの客さん達にステージ上から生声を届かせているM先生の歌声は、大迫力でした!!
 
 
何百メートルも先に届く声を、目の前1~2メートルで聞くのです。
 
 
スピーカーを通して聞く大音量の音楽とはまた違う感覚でした。
 
 
M先生の歌声で、僕は自分の顔の表面がビリビリと振動するのを感じました。
 
 
M先生の身体全体から、歌声が360度広がっていくような感覚です。
 
 
部屋全体に歌声が鳴り響いて、カベや天井に反射した声の振動に自分の身体全体が包まれるような、そんな感覚でした。
 
 
「スゲーーー!!この先生はホンモノだ!!」
 
 
そう思わせる説得力がある声でした。
 
 
M先生の表情を見る限り、まだ力を抜いていてフルパワーを出しているようには見えませんでした。
 
 
おそらくM先生が本気になったら、もっともっと大きな声を出せるんだろうな、というのが素人目にも分かりました。
 
 

叫び声との違い

M先生の歌声は超大きな声にも関わらず、ムリして大きな声を出して叫んでいる声ではありません。
 
 
音程も完璧に計算されているみたいで、すごくよく通るのです。
 
 
「このレベルで声を出せるようになったら、たしかに演技力の幅も広がるだろうな」
 
 
と僕は思いました。
 
 
ちなみにM先生の歌は、テレビの歌番組に出ている歌手の人達とは違う種類のものに聞こえました。
 
 
僕は音楽に関して詳しいことは分かりませんが、M先生の声はビブラートをきかせた高めのトーンの声で、声を出している時の口の動きも大きくてダイナミックでした。
 
 
そこがまた、非日常感を生み出していました。
 
 
歌声、仕草、表情、ルックス、すべてが「ミュージカル女優」であるために長年かけてチューニングされているように見えました。
 
 
M先生を見ていると「プロとは何か?」を言葉ではなく全身で見せてもらっているような感覚になりました。
 
 
カッコいい!!
 
 
それが僕とT君がM先生に対して感じた印象でした。
 
 
・・・つづく。
 
 
 

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