【リベンジマッチ!②】

From  師範代Shinya(新村真也)

(→前回のつづき)

※僕がジーンズショップで働いていた頃、初めて英語のテキストを買って英会話を経験した時のエピソードの続きです。

僕は、目の前の棚でTシャツを物色している白人のムキムキマッチョマンに、おそるおそる近づいていきました。

「接客英会話フレーズブック」を買って丸暗記したフレーズを試すのは今しかありません!

「いらっしゃいませ(May I help you?)」

のフレーズがここで使えることは分かっています。

でも、どうしてもその第一声が口から出てきません。

まだ何もしていないのに、めちゃくちゃ緊張してきました。

僕が近づいているのに気付いたその白人男性は、こっちを向きました。

目が合いました!

ヤバい!!こっちから先に話しかけなければ!!主導権を握られる!!

でも、彼はにっこり微笑んで、「Hi!(ハイ!)」とあいさつしてきました。

僕も、緊張したノドからしぼり出すようにして、

「Hi!」

と返しました。むりやり笑顔を作ってみたものの、引きつっているのが自分でも分かります。

すると、その白人男性はあいさつだけして、その場を去って行きました。

なんだか、肩すかしを食らった気分でしたが、内心ほっとしました。

「何事もなかった・・・」

僕の身体は脱力していきました。と同時に、自分がかなり疲れていることに気付きました。

たった「Hi!」のひと言を交わすだけで、こんなに疲れるとは!!

案ずるより産むが易し

僕は自分の今の状態を見て、前に自己啓発本で読んで印象に残っていたフレーズを思い出しました。

「私たち人間は、これから起こることを想像して恐れる生き物だ。私達が一生の中で感じる恐怖の90%以上は、想像の中だけで起こる。心配したことが現実に起こる確率は10%以下に過ぎない。」

(※正確な言い回しは忘れましたが、そんなような内容でした)

日本語だと、「案ずるより産むが易し」なんてことわざもあります。

まさに、今の自分だ!

と思いました。

僕は今、「自分が3か月間練習してきた接客英語フレーズが通じなかったらどうしよう?」という恐怖に飲み込まれていました。

その恐怖の出どころは、

「こんなに頑張ったのに、無意味だったと思いたくない!」

「お店のスタッフの前で、カッコ悪いところを見られたくない。」

といった感情から来ていました。

意識をどこに向けるか?

これらはすべて、意識が「自分」に向いています。

意識が自分に向くと、「自分が恥をかきたくない」という恐怖が芽生えます。

恐怖が出てくると、まるで「恥をかくこと=命を奪われること」のように重く感じられるようになってしまうのです。

すると、人間の脳に原始時代から備わっている「自己防衛本能」が働きます。

自己防衛本能が働くと、身体が必要以上に緊張して、自分本来の力が発揮しづらくなってしまいます。

一方で、意識を「相手」に向けると、自分らしさを取り戻して、本来の力が発揮しやすくなります。

「自分がどう見られるか?」ではなく、「相手に何を伝えたいか?」を意識することで、見方が変わります。

「相手に自分の気持ちを伝える」を目的にすると、そもそも「うまくやる必要はない」ということに気付きます。

たとえ上手でなくても、相手が喜んでくれればそれで良いのです。目的は達成されます。

僕が「接客英語フレーズ集」を買った理由

僕が接客英語フレーズ集を買ったそもそもの理由は、「米軍兵士たちと最低限のコミュニケーションを取りたい」という思いでした。

過去2回の来店の時は、僕に大きな笑顔で「Thank you!」と言ってくれて、さらに店を出て行くときに、「Have a nice day!(良い一日を!)」とまで言ってくれたのに、僕は何も言えませんでした。

日本で店員(特に安めの単価の商品を扱う店)の仕事をしていると、お客さんからはなかなかもらえないものを、米軍兵士たちからもらいました。

「大きな笑顔」と「フレンドリーな言葉」です。この2つを受け取った僕は、その日の残りの時間をハッピーに過ごすことができました。

彼らがまた店に来たとき、ひと言でも良いから何か返したい!

ありがとうの気持ちを伝えたい!

そんな気持ちになったからこそ、僕は接客英会話フレーズブックを自腹で買って、少ない自由時間を練習に充ててきたのです。

「本来の目的」を思い出した僕は、全身からだんだん緊張が取れていくのを感じました。

・・・つづく。

 

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