From 師範代Shinya(新村真也)
先日の日経新聞に、
「東京外国語大と京都工芸繊維大が、英語のスピーキング力を測るテストを開発中」
という記事がありました。
内容を要約すると・・・
・イギリスの「ブリティッシュ・カウンシル」と共同でスピーキングテストを開発中。・受験者がコンピューターに声を吹き込んで、後からそれを試験官がジャッジするスタイル。・目的のひとつに、「高校の授業を変えたい」という思いがある。・ここで開発したテストを、他の大学も使える仕組みにしていく予定。
という感じです。
もしかしてこれは、今後の日本の英語の大学受験の大きなトレンドになっていくかもしれません。
紙の上のスピーキング力チェックの限界
高卒の僕が初めて英語の大学入試問題を解いたのは、英会話スクールで高校生を教えるクラスを担当した時のことでした。
大学入試問題には、紙の上で「発話力」を測るものがあります。
それは、
「何個かの英単語の中から、ひとつだけ発音の仕方が違うものを選ぶ」
という問題です。
たとえば、
① illegal
② logical
③ tiger
④ vague
の中にある「g」の部分に、ひとつだけ発音が違うものがある。それを選べ。
みたいな問題です。
僕は初めてこれを見たとき、驚きました。
僕はこの問題を初めて見たとき、ひとつひとつの英単語を実際に発音しながら、よ~く考えて違いを探しました。
発音することで正解を見つけられましたが、試験本番の会場では、おそらく静かにしていなければならないはずです。
実際に発音することはできません。
「こんなマニアックな問題で、いったい受験者の何を測れるんだ?」
と思ったのを覚えています。
たしかに、英単語の発音がしっかりできることは、コミュニケーションを取る上で大事だとは思います。
でも、このタイプの問題に正解できたからと言って、その受験者が本当に正しい発音で話せるのかどうか?は、分からないと思います。
とはいえ、まだテクノロジーが発達していない時代には、受験者全員のスピーキング力を一度に測る方法がなかったので、紙の上でできることをひねり出した、苦肉の策だったと思います。
でも、やっぱり「話す力を紙の上で測る」のには限界があると思います。
「このタイプの問題でトータル点数が決まって、入る大学まで決まってしまうのは、あまりにひどい話だ!」
と思っていました。
それが、コンピューターの発達のおかげで、本当のスピーキング力を測れるようになるのは、嬉しいニュースです。
ネイティブに近づけることが良いとは限らない
僕が今まで解いてきた大学入試問題の中には、
「ネイティブの中でもかなりのハイレベルにいる人たちが使う表現や英単語」
を問うような問題をちらほら見かけました。
ところが、僕がカナダに留学していた時期に世界中から集まった留学生たちと会話をしていた時には、こんなマニアックで難しい表現や英単語を使う人はいませんでした。
国際交流の場では、そこまで複雑な文法や難解な英単語を使って話すことはありません。
むしろ、日常的な英単語を基本のシンプルな英文法に乗せて、スピーディーに話す感じです。
大事なのは、「スピード感」です。
日本人は、このスピードにまったくついていけないために、他の国の人たちに比べて聞き取りやスピーキングのペースについていけないのです。
その点を踏まえて、今回の新テストは作られているようです。
記事の中の重要ポイントを要約すると・・・
・「母国語が異なる人同士をつなぐ共通語」としての英語の力を測ることも重視する。・いかにネイティブの話す英語に近づけるか?を測る他のテストとは違う価値観で作っている。・テストでは、文法や発音の正確さよりも、「他者を説得する」「問題の解決法を見いだす」といったタスクの達成度などを評価する。・問題文の吹き込みや採点の担当者には、ネイティブと非ネイティブの両方を採用。
と書いてありました。
これは、とても良い視点だと思います。
高校が変わる必要がある?!
ここまで違うタイプの入試問題ができて、それが普及したら、間違いなく今の高校で教えている従来の方式では、太刀打ちできなくなりそうです。
英語力だけではなく、英語を使った「問題解決力」や「タスク達成度」を測るとなると、紙の上の勉強や今までのテスト対策では限界があります。
そうなると、高校の授業内容も変えていく必要が出てくるでしょう。
先生の英語力アップも必要
高校の授業内容を変えるためには、それを教える先生の英語力アップも欠かせません。
少なくとも、この記事を読んだ限りでは、このテストに受かる力を養うためのコーチとしての先生の実力は、最低でも英検準1級、できれば英検1級レベルの英語力を持っている必要があるような気がします。
もちろん、高校の英語の先生全員がこのレベルに達するのはちょっと現実的ではないとは思います。
日本の学校の先生は、勤務時間が長すぎて、自分の時間がほとんどありません。
帰りは遅くなって、体力もなくなってクタクタです。
どんなに意識が高い先生でも、自分の英語力アップのための時間が取れなければ、どうしようもありません。
でも、学校教育のスタイルが大きく変わっていくことで、先生の勤務時間も短くなることを祈っています。
先生が自分の英語力を磨く時間が増えれば、生徒の英語力がアップする確率もアップします。
そうすれば、大人も子供も「英語がしゃべれる人の数」がアップします。
そのうち、英語を日常レベルでしゃべれるのが当たり前の高校生や大学生や大人が珍しくなくなる日が来るかも知れませんね。
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