【有名マジシャンとプライベートで対談⑦】

 from 師範代Shinya

(→前回の続き)

※僕が子どもの頃、弟と一緒にテレビで見て憧れたマジシャンの前田知洋さんとお会いできた体験談の続きです。

海外と日本を行き来して、世界中で知名度の高い前田さんに、僕が聞いてみたかった質問の2つ目は、

「どうやって今の地位を獲得したのか?」

でした。

前田さんが相手にしているお客さんは、有名大企業の経営者、世界一のお金持ち、総理大臣、皇族など、ふつうの人では一生会えないような人たちです。

このレベルに行くためには、下からコツコツ積み上げる方式では一生かかってもムリでしょう。

たとえば、僕と弟が通ってきた道は、

・外国人バーで英語のマジックショーの経験値を積む

・町内会のイベントのステージで演じる

・ホテルと契約して、結婚披露宴でマジックショーを演じる

・地元テレビ局から声がかかり、テレビ局主催のイベントに出演する

・全国放送のテレビ局から声がかかり、特集に単発出演する

・番組の裏方として、芸能人のマジック指導をする

というような流れです。

おそらく、全国放送のテレビに1~2回出演したら、そこで満足する人も多いでしょう。

それにそのステージから上に行く方法は、正直思いつきません。

テレビ局のディレクターと知り合いになったからといって、世界一のお金持ちと知り合える確率は低いでしょう。

ましてや、総理大臣や皇族の前で演じる機会など、夢のまた夢です。

そもそもテレビのバラエティー枠とは、ジャンルが違う気がします。

下積みをコツコツすることで行き着ける場所ではないと思うのです。

だから、僕はこの質問をずっと前田さんにしてみたかったのです。

観察の大切さ

僕は上記の内容を、すべて前田さんに伝えてみました。

そしたら、「良い質問ですね!」と言って、快く答えてくれました。

前田さんの答えは、まさに目からウロコでした!

ここから先は、マジックの細かい話は抜いて、教えてもらったエッセンスだけを、一般化してまとめます。

①前田さんがロスのマジックキャッスルで演じていた時に、同じ場所にいた世界の一流マジシャン達を注意深く観察した。

②一流の腕を持っているマジシャン達の中でも、収入の格差があることに気付いた。お金がなくてカツカツの生活をしている人たちと、ものすごい稼いでいる人たちの二極化があると分かった。そして、稼いでいる人たちは2%ぐらいしかいないことにも気付いた。

③その格差は、どこから出ているのか?その答えを知るために、色んなマジシャンの演技を何度も見て、彼らとコミュニケーションを取って、彼らの考え方を聞かせてもらった。

④その結果、マジックの腕前と収入の格差は比例しないことが分かった。つまり、「マジックが一番上手な人が、一番稼いでいるわけではない」ことに気付いた。むしろ、「マジックだけでは稼げずに副業と掛け持ちして生活している人」の方が、マジックの技術的には上だと感じることすらあった。

⑤そもそも、マジックキャッスルに出演する人たちは、技術レベルは高い。それ以上マジックの技術を磨くことに時間とエネルギーを使うよりも、別のことに時間と頭を使った方が良いと気付いた。

⑥前田さんは「エンジニアの道を捨ててマジシャンの道に入る以上は、絶対にマジックだけで十分食べていけるだけの収入を得るぞ!」と決めていた。だから、「技術的に上手いマジシャン」よりも、「稼いでいるマジシャン」をお手本にして行動してきた。

ということでした。

もちろん、前田さんの技術は超一流です。

日本のテレビ番組の中では「奇跡の指先」と呼ばれ、超絶テクニックを披露しています。

でも、その技術は「マジシャン仲間たちの前でドヤ顔するため」ではなく、世界中のセレブたちに、「こんなの見たことない!」と言わせるマジックを演じるために磨いてきたのです。

つまり、「最初から見ている方向が違う」ということです。

普通のマジシャンは、自分が好きでやりたいジャンルのマジックを選び、そのマジックを演じるための技術を磨きます。

そして、「自分のマジックを見て喜んでもらえるお客さんを探す」のです。

でも、前田さんは違います。

①自分はどんな生活をしたいのか?(マジシャン1本で生きていける&人生にゆとりを持って楽しめる経済的豊かさ)

②その生活を実現するために、自分が相手にしたいお客さんは、どんな人たちか?(裕福な人たち)

③その人たちが喜ぶマジックはどんな種類のものか?(裕福な人たちの好み)

④その種類のマジックを演じるためには、どんな技術を身に付ければいいのか?

という逆算の視点でやってきたのです。

僕はこれを聞いて、「なるほど!」と納得しました。

そして同時に、「これは英語学習と似ているな!」と思いました。

次回はその共通点をお伝えします。

 

・・・つづく

 

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