From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕がジーンズショップで働いていた頃、初めて英語のテキストを買って外国人のお客さん相手の英会話を経験した時のエピソードの続きです。
米軍のお客さんとの冷や汗もののやりとりをトータル3回経験した僕は、外国人のお客さんに対してかなり積極的に向かっていくことができるようになりました。
「うまくできる自信がついた」というよりも、「うまくいかない自分を見ることに慣れた」と言った方がいいかもしれません。
もちろん、「たったひと言の接客フレーズが通じた!」という小さな成功体験も大事です。
でも、それ以上に「ダメな自分にOKを出せた」ことが、大きな変化でした。
この「ダメな自分にOKを出す」と言う感覚は、独学の練習だけでは身に付きづらい気がします。
自分ひとりでやっていると、ついつい完璧を目指してしまいがちです。
でも、どんなに接客英会話フレーズを通勤の車の中で完璧に覚えても、実際に使ってみると、うまくいかないことが多いです。
僕は米軍兵士のお客さん達とのやりとりで、思い知らされました。
丸暗記したフレーズは、そのまま使えることは間違いないのですが、知っているフレーズからちょっと離れると、すぐにボロが出てしまうのです。
でも、「ボロが出てもいい」という許しが自分に出せれば、外国人のお客さんに話しかけるのが恐くなくなります。
これは、意外な経験でした。経験する前は「恐い!」と思っていたことを実際に経験すると、恐怖がなくなるのです。
米軍ではないお客さん
米軍兵士達の怒濤の来店からしばらくたったある日、珍しく外国人のお客さんがやってきました。
どうやら夫婦のようです。男性は白人で、女性は日本人ぽい外見でした。
2人とも40代後半~50代前半ぐらいに見えます。
店内では、ふたりとも英語で会話しているので、女性が日本人かどうかは分かりません。
僕は商品整理をしながら、他の日本人のお客さんと同じように、そのカップル客に近づいていきました。
(この心境の変化は大きいです。昔の僕なら、ビビってしまって絶対に近づきませんでした)
しばらく観察していると、どうやら旦那さんのジーンズを奥さんが選んでいるようでした。
しばらくすると、女性の方が、僕に話しかけてきました。
女性:「すみませ~ん。このジーンズの他のサイズありますか?」
完璧な日本語です。イントネーションや発音に不自然さはありません。おそらく、奥さんの方は日本人なのでしょう。
僕:「はい!いらっしゃいませ。こちらのジーンズの他のサイズですね。少々お待ちください。」
その後、違うサイズのジーンズを探して渡すと、旦那さんはフィッティングルームの中に入っていきました。
まさかのマンツーマン
そして、旦那さんがフィッティングルームから出てきました。
ちょっと微妙な表情をしています。
どうやら、サイズと形が気に入らないようです。ウェストと足がパンパンになっていました。
奥さんが選んだのは、「ブーツカット」と呼ばれる、ヒザの辺りが細くなっている形のジーンズでした。
ブーツカットは足長効果があるのですが、体格の良い男性にはキツくてヒザ周りがパンパンになってしまい、不快に感じることが多いです。
その白人男性は、「もっとワイドな形がいい」みたいなことを英語で言いました。
僕はそれを聞き取って、ワイドな形のジーンズの候補をいくつか持って行きました。
そして、渡すときにいくつかの接客フレーズを英語で言ってみました。
すると、旦那さんの表情が明るくなったのが分かりました。
僕がワイドジーンズを持ってきたから嬉しかったのか?それとも英語で話しかけられたのが嬉しかったのか?分かりません。(たぶん両方かもしれません)
そして、日本人の奥さんが、嬉しそうな表情で僕に向かって言いました。
奥さん:「あ、良かった!お兄さん英語しゃべれるんですね。夫は日本語が全然ダメなんで、助かります。」
僕:「あ、そうですか!良かったです。」
そして、その奥さんは僕と旦那さんのやりとりを少し見た後、言いました。
奥さん:「これなら大丈夫そうですね。夫のこと、任せてもいいですか?実は私、用事があって、別々に行動したかったんだけど、夫が1人じゃジーンズ買えないと思ったから付いてきたんです。
20分ぐらいしたら戻ってくるんで、夫のジーンズを一緒に選んであげてもらえますか?」
僕:「あ、はい!もちろん!いいですよ。」
そして、その日本人奥さんは足早に店の外に出て行ってしまいました。
店内には、日本語がまったくしゃべれない外国人の旦那さんだけが残りました。
僕にとって初めての「英語でマンツーマン接客」が始まったのです!
・・・つづく。
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