From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕がジーンズショップで働いていた頃、初めて英語のテキストを買って外国人のお客さん相手の英会話を経験した時のエピソードの続きです。
外国人の旦那さんと、日本人の奥さんの夫婦が僕の働くジーンズショップにやって来た時のこと。
日本人の奥さんがお店を出て他の店に買い物に行ってしまったので、その間に僕が外国人の旦那さんのジーンズを選ぶことになりました。
ちなみに奥さんいわく、旦那さんはほとんど日本語が理解できないそうです。
これまで僕は、外国人のお客さんは米軍兵士たちしか相手にしたことがありませんでした。
しかも、こちらが1人でむこうが10人ぐらいというシチュエーションでした。
米軍兵士たちは、仲間内で勝手に盛り上がっていて、その流れで僕にたまに話しかけてくる、という感じでした。
でも今回は違います。
完全にマンツーマンです!
僕は、メチャクチャ緊張してきました。
米軍兵士とまったく違う雰囲気
旦那さんは、すごく優しそうな雰囲気の人で、おとなしい感じでした。
僕は米軍兵士たちの「ノリ」には慣れていました。彼らは自分のペースでガンガン話しかけてくるので、僕も途中からそのノリになりました。
米軍兵士たちを相手にしている分には、こちらの英語が多少通じなくても、相手の英語が分からなくても、あまり気にならないようなメンタルに鍛えられていました。
でも、今回の旦那さんは違います!雰囲気がまったく違います。
旦那さんはゆったりしたしゃべり方で、空気感が違うのです。
しかも、なぜか向こうも緊張した表情をしていました。
たしかに、僕が逆の立場だったら、緊張するに違いありません。もし僕が海外に住んでいて、いつも英語ができる奥さんと一緒に行動していて、ある日突然、奥さんが自分から離れて他の店へ行ってしまい、店員さんと2人きりにされたら・・・きっと緊張するでしょう。
まさに今、その旦那さんはこのシチュエーションになっているのです!
僕は、店員として「なんとか緊張を解かねば!そのためには、自分が緊張している場合じゃない!」と思いました。
フリートークがしたい!
僕はこれまで米軍兵士たちを相手に練習して自信をつけていた「接客フレーズ」を駆使しながら、外国人の旦那さんのジーンズの試着を手伝っていました。
でも、だんだん自分のなかにもう一つの欲求が生まれるのを感じました。
「フリートークがしたい!ただジーンズを売るためのトークではなく、もっと色々話してみたい!」
という欲求です。フリートークができれば、きっと旦那さんの緊張もやわらぐはずです。
僕は、「接客フレーズ本」に載っていたフレーズの中で、フリートークに使えそうなものがなかったかどうかを、必死に思い出そうとして、脳内スキャンしていました。
幸い、旦那さんが試着室に入っている間にしばらく待ち時間が合ったので、考える時間はありました。
でも、いくら考えても、考えても、出てきませんでした。
接客フレーズ本には、「店員さんが現場で外国人客との対応を切り抜けるために必要な最低限の接客フレーズ」しか載っていませんでした。
なので、フリートークに関するフレーズは一切なかったのです。
せいぜい、店から送り出すときの、
Have a nice day.
(良い一日を)
ぐらいでした。
僕は仕方なく、あきらめて自分が知っているフレーズでやりとりすることにしました。
すると、試着室から出てきた旦那さんが、ゆっくりした口調で僕に話しかけてきました。
「英語が話せる店員さんがいて、本当に助かりました。いつも私はお店で妻の後ろについているだけなので。」
ハッキリと一字一句聞き取れたわけではありませんが、彼が言っている内容は、たしかに理解できました。
米軍兵士達の早口英語とは違って、すごく聞き取りやすく、理解しやすい話し方でした。
僕は、嬉しくなりました。その嬉しさを伝えたいと思いました。
気持ちを伝えたい!!
本当は、
「ありがとうございます!嬉しいです!僕も自分の英語には自信がありませんが、こうやって今、あなたにそう言ってもらえて、英語を勉強してきて本当に良かったと思っています!」
と英語で言いたくなりました。でも、僕の口から出てきたのは、
Thank you!
だけでした。
あぁ・・・本当はもっと伝えたいことがいっぱいあるのに・・・
彼は普段どんな仕事をしているんだろう?
日本に住んでどのくらいなんだろう?
何がきっかけで日本に移住してきたんだろう?
色々と話してみたいことが心の底からわき上がってきました。
でも、僕にはそれを英語にする力はありませんでした。
くやしい!!
何だ?この感覚は??
米軍兵士たちの早口英語が聞き取れなかった時とは、また違ったくやしさがこみ上げてきました。
なぜか、今の方が強く、くやしい!!と感じました。
・・・つづく。
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