From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
病院に着くと、僕は急いでタクシーを降りて入り口に向かいました。
さすがに「~国際病院」と名前が付いているだけあって、建物は超巨大です。
もう夜7時半なので、正面入り口は閉まっていました。
看板には「救急外来用は裏口へ」という指示がありました。
僕は広大な敷地内を走りながら、裏口に回りました。
病院内に入って受付で名前を言ったら、すでに話が通っていて、スムーズに手続きが進みました。
入館許可証をもらって、3階の産婦人科エリアに行くように案内されました。
さすがに夜だけあって、人の数はまばらです。エレベーターの周辺には誰もいませんでした。
誰もいないフロア
3階に着いてエレベーターを降りると、誰もいませんでした。
広いフロアにいるのは僕だけです。
本当にここでいいんだろうか?
どこに行けばいいんだろう?
不安になりながらウロウロしていました。
受付で言われたのは、「とりあえず3階に行って、そこにいるスタッフに聞いてください。」ということでした。
でも、3階の受付は終了していて、薄暗くなっています。誰の気配もありません。
待合スペースはめちゃくちゃ広くて、左右にはガラス製の扉があります。
その先に診療スペースがあるように見えます。
診療スペースもめちゃくちゃ奥行きがありそうです。
待合スペースと診療スペースの間の大きなガラス製の透明な扉は、僕が前に立っても開きませんでした。
自動ドアなのですが、スキャナーにカードをかざすことで、医師と許可された人しか入れないような防犯システムになっているようです。
残念ながら、僕の入館許可証をかざしてもエラーが出て弾かれてしまい、入れませんでした。
僕は「本当にここでいんだろうか?」と不安になりながら、周りを見渡しました。
その時、遠くから女性数人の声が聞こえてきました。僕は声がする方に向かっていきました。
声の主
すると、声の主は病院スタッフではなく、清掃会社の作業員の方々でした。
作業員同士で清掃するエリア分担を話し合っているような感じでした。
僕はその中の1人の50代ぐらいの女性に話しかけました。
僕:「あの~すみません。下の受付で3階に来るように言われたんですが、スタッフの方が見当たらなくて、どこに行けばいいんでしょうか?」
女性:「あら!そうですか。今はもう、このフロアには誰もいませんよ。診療スペースの方では先生と看護師さんたちがいますけど、ここから先のエリアは患者さんしか入れませんからね。」
僕:「そうですか・・・」
女性:「私もここの病院スタッフってわけじゃないもんで、詳しいことは分からないんですよ。」
僕:「ですよね。」
女性:「診療スペースの入り口ドアの前にインターホンがあるから、そこを押してみて、誰かが出たら聞いてみるのがいいかもしれないですね。」
僕:「分かりました!インターホンを押せば誰か出てくれるんですね。やってみます!ありがとうございます。」
インターホンの声
僕はもう一度ドアの前に行くと、ドアの前に3つ並んでいるインターホンの1つを押してみました。
ピンポーン!
すると、インターホンから声が聞こえてきました。
声:「はい、○○センターです。」
僕:「あ、先ほど救急搬送された、新村紗耶香の夫ですが・・・」
声:「救急搬送は、この左隣の○○と書いてあるインターホンを押してください。」
僕:「分かりました。ありがとうございます。」
ピンポーン!
・・・・
何も声が聞こえてきません。
もう一度押してみました。
ピンポーン!
・・・
何も聞こえません。どうしよう?
もう一度押すべきか?
すると、ガサガサと音が聞こえて、急いでいる感じの声が聞こえてきました。
声:「はいっ!○○センターです!」
僕:「あ、先ほど救急搬送された、新村紗耶香の夫ですが・・・」
すると、僕の声にかぶせるように、インターホンの声の人が言いました。
声:「今、先生が処置している最中ですので、そちらの待合室でお待ちください。終わりましたら声をかけますので!」
そう言うと、すぐにガチャッと声が切れました。
声の様子から、今まさに一刻を争う状況だということが伝わってきました。
時が止まった感覚
僕に今できることは、待つことしかありません。
それに、呼ばれてもサヤに会えるのかどうか?もよく分かりません。コロナのせいで診療スペースに入ることが許されない可能性もあります。
さっきのインターホンでの会話では、「処置が終わったら僕は中に入れるんでしょうか?」なんて聞ける雰囲気ではありませんでした。
とにかく、呼ばれるまで待つしかありません。
待合室での待ち時間はトータル1時間ぐらいでしたが、僕にとっては時が止まったように長く感じられました。
・・・つづく。
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