From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
前回の記事では、日本で初めて英語アナウンスを始めて一躍有名になった、「英語車掌」の関大地さんとの出会いをお話ししました。
そして僕は、関さんの話す英語アナウンスと、他の車掌さんたちの話す英語アナウンスの間には、「決定的な違い」があることに気付きました。
この決定的な違いが、発音の上達スピードと上限を決めます。
YouTube動画でバズった3つの理由
関さんの英語アナウンスを聞いた乗客がスマホで録画した動画がYouTubeで拡散されてバズりました。
そこから、「英語車掌」のニックネームが付き、関さんは全国区で有名になりました。
YouTube動画で関さんの英語アナウンスがバズった理由は、3つあると思います。
①当時まだ誰もやっていないことをやった
②日本人とは思えないほど上手な発音だった
③英語が大好きで、その情熱が聞く人に伝わった
この3つのうち、関さんの動画がバズった一番の理由は③だと思います。
生き生きしたアナウンス
関さんのアナウンスは、発音の美しさに加えて何よりも「魂がこもっている」のを感じました。
英語アナウンス自体を心から楽しんでいるのが伝わってきます。
ただ単に英語の発音が上手なだけでは、それを聞いた乗客は「あ、最近は帰国子女の車掌さんがいるんだ」で終わってしまうでしょう。
ここまでバズることはなかったと思います。
関さんの英語アナウンスには、「好きなことを極めようとしている人が持つ情熱」が感じられます。
この情熱が言葉に乗って、聞く人の心をゆさぶるアナウンスになっているのだと思います。
英語というのは、日本語に比べると情熱的な言語です。
日本語のような遠回しな表現が少なく、お互いの感情や意見をストレートに伝え合う言葉です。
そして、英語の「発音」も日本語の発音に比べて「情熱的」です。
アップダウンが激しく、大事な場所はガツン!と強調され、大事ではない部分はほとんど聞こえないぐらいに弱く発音されます。
そして、文章全体はスムーズに流れるような音になります。
ちょっと極端な言い方をすれば、英語は「情熱を乗せて発音しないと、相手に伝わりづらい言葉」なのです。
そして、関さん以外の車掌さんたちの英語アナウンスには、「英語への情熱」や「外国人に本気でメッセージを伝えようとする気持ち」がそんなに強く感じられません。(今のところ、僕が聞いたことのある範囲内では)
なんというか、日本語アナウンスと同じように「事務的に文字を読み上げているだけ」のような感じを受けます。(あくまで個人的な受け止め方ですが)
「やらされ英語発音」と「初心者英語発音」の違い
僕の経験上、おそらく車掌さんたちの棒読み英語発音のアナウンスは、「英語初心者だから」という単純な理由ではないような気がします。
英語アナウンスが棒読み発音になってしまう理由は、僕ら日本人の「学校時代の体験」から来ていると思います。
「学校の英語の授業で先生に当てられて、仕方なく教科書の英文を読み上げる生徒の発音」
は、棒読み発音です。
これには2つの理由があると思います。
1つ目は、イヤなことを無理やりやらされているから。
2つ目は、周りの目です。
日本にはなぜか「中途半端に英語っぽい良い発音をしようとするやつはカッコ悪い」みたいな風潮があります。
学校の授業中に、帰国子女でもない純ジャパニーズの生徒がガンバって英語らしい発音をしようとすると、みんなから笑われて後ろ指を指されてしまうのです。
だったら、みんなと同じように「カタカナ発音」にしておいた方が、笑われずに済みます。
また、「俺は本気出してないんだぜ感」を出せるので、クールに見られるでしょう。
そして、この子供時代の体験は、大人になっても大きな影響を与えます。
僕ら大人にとって、「子供時代の体験&感じたこと」は想像以上に今の行動や思考パターンに影響を与えています。
学生時代の「周りからの同調圧力」のようなものが、日本人の英語発音の上達を妨げているような気がするのです。
これが、「やらされ英語発音」の正体です。
「やらされ発音」と「初心者発音」とは違います。
「初心者発音」は、たとえ上手でなくても「伝えようとする情熱」が感じられます。
その情熱が言葉に乗って、相手にメッセージを伝えてくれるのです。
僕は以前、英会話スクールで初心者クラスを担当していたので、「情熱のこもった初心者発音」を1年中聞いていました。
高い授業料を払って通っている人たちに、「棒読み発音」をする人はほとんどいません。
たとえ上手でなくても、必死に伝えようとする情熱が言葉に乗るのです。
また、初心者発音は、あくまで「一時的な状態」です。練習を重ねることで必ず上達していきます。
一方、「やらされ発音」はずっと変わりません。英語に対する見方&とらえ方が変わらない限り、上達する可能性は限りなく低いでしょう。
「心が英語を拒絶している状態」で練習を重ねても、英語の発音スキルはなかなか身に付かないのです。
・・・つづく。
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