From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「鉄工場の作業員」から、「アクション俳優」に転職しようと決めて、「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
面接官の女性の「ぶっちゃけトーク」に感動したのが理由で、僕は「東京宝映テレビ」という会社の俳優養成所に入ることを決めました。
東京のこういう養成所は、どこもタレントマネジメント事務所と共同でやっているらしく、レッスンを受けて芽の出た新人を自分たちの事務所で売り込んでいく、というスタイルのようでした。
当時、東京宝映テレビ(略して東宝)の事務所に所属していたのは、大御所では松平健さん、三原じゅん子さんなどでした。
また、子役では当時まだ中学生だった小栗旬さんが売り出し中でした。
小栗さんは中学生当時からイケメンで、僕は「この子は大人になってもイケメンなんだろうな」と思いました。
でも当時は、まさか今のように背が伸びてさらにカッコ良くなり、演技派の超実力俳優としての地位を確立することになるとは、思っていませんでした。
当時の東宝養成所の新聞広告には、松平さん、三原さん、小栗さんの3人の写真が、ドーン!と全面に出ていました。
ドキドキの初日レッスン
東京の新宿エリアにある養成所は、僕の住んでいる静岡から通いやすい場所にありました。
新幹線を使えば、片道2時間ぐらいで着く感じです。
週1回のペースなら、静岡からでも十分に通えます。
僕が働いている鉄工場は、週休2日ではなく、週休1日半制でした。土曜日は半日出勤なので、東京に通えるのは日曜日だけでした。
初日のレッスンは、ドキドキしながら向かいました。
会場に着くと、ものすごい数の生徒たちでビル内があふれ返っていました。
ビルは、今思い返せば、東京エリアにしては大きな方だったと思います。
ただ、とにかく人が多いので、通路内もものすごい混み合っていました。
オーディションの時と同じように、老若男女のバラエティーが豊かで、下は幼稚園生ぐらいから、上はおじいちゃんおばあちゃん世代までいました。外から見たら、
「ここはいったい、何の集まりだ?」
と不思議な気分になるほど、幅広い世代の人たちであふれ返っていました。
この人の多さとバラエティーの豊かさは、田舎者の僕の中がイメージしていた「ザ・東京」をそのまま現実化したような場所でした。
僕がこれまで生きてきた世界とはまったく別世界です。
見たことのない光景
高校を卒業してからすぐに鉄工場で働き始めた僕が毎日顔を合わせるのは、50代ぐらいの恐い親方(ラピュタのパズーの親方みたいな雰囲気)と、5才ぐらい年上の先輩だけでした。
他の部署の人たちも、だいたい50~60代の班長と、20~30代ぐらいの若手&中堅の組み合わせという構成でした。
工場内は全員男性で、事務所内に3人だけ女性がいる、という状況でした。
僕と同期で入社した同じ高校出身の女子(当時18才)は、工場内の20代男性たちから超モテモテでした。
(ちなみに同い年の僕は、その女子からはまったく相手にされていませんでしたが・・・)
唯一、会社の外で通っていた習い事は、空手道場です。
当然、男ばかり。
そんな地味で変化のない毎日を送っていた僕の目には、東宝スクールの光景がものすごく魅力的に映りました。
クラスルームもすごいことに!
クラスは年齢層によって分かれていました。キッズと大人が同じレッスンを受けることはないようです。
また、シニア世代も別のクラスになっているようでした。
クラスルームには、トータル40人ぐらいの生徒達がいました。
みんな僕と同じ「今日からスタートする新人たち」のようです。
担当の先生は、小柄で優しそうな表情をした30代ぐらいの女性で、僕はホッとしました。
初回ということで、みんなで自己紹介していくことになりました。
トータル人数が多いので、ひとり15秒ぐらいの持ち時間で、短い自己紹介をしていきました。
年齢層はバラバラで、僕の年代(20才前後)が一番多くて、一番上の世代は40代の男性でした。
その40代男性は、「今はタクシー運転手をしているが、役者になって一発当てて人生を変えたい」みたいなことを言っていました。
中には今まで僕が生では見たことのないようなルックスのイケメン&美女がいました。
背が高くてスラッとしてスタイルの良い人たちは、「モデルになりたい」と言っていました。
みんな、歌手や役者など、それぞれ大きな夢があって、その夢を、包み隠さず元気に発表していきました。
部屋中が、みんなのキラキラした希望のオーラで満ちあふれていくのを感じました。
僕がふだんいる鉄工場では、30代の中堅メンバーたちが、
「俺はもう年だ・・・ここに一生骨を埋めるしかないんだ」
みたいなセリフを言うのを聞いていました。
そんな僕にとって、このクラスルーム内の、
「年齢問わずに人生はチャレンジできる!」
という雰囲気は、とても魅力的でした。
こんな世界があるのか・・・
僕は自分の人生が新しいステージに入ったことを感じ始めていました。
・・・つづく。
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