【僕が「習い事」に感じた夢と希望⑨~演技編5】

From  師範代Shinya(新村真也)

(→前回のつづき)

※僕が20才の頃、「鉄工場の作業員」から、「アクション俳優」に転職しようと決めて、「ジャパンアクションクラブ」という団体のオーディションを受けた時のストーリーの続きです。

「空手の技」と「アクションの技」の違いを研究していた僕は、面接官に聞かれた質問に即座に答えることができました。

そして、実際にその違いを身体を使って表現することができました。

今にして思えば、このマニアックな違いを研究している人は、あの時の受験者の中にはほとんどいなかったのでは?と思います。

空手や格闘技の経験者の人数は多いと思いますが、「格闘技とアクションの違い」を研究している人は珍しいと思います。

アクションの技と、空手の技の違い

アクションと空手の技の違いは、どこにあるのでしょうか?

その違いは、英語の世界で言えば、「同時通訳」と「プレゼン」の違いに近いです。

よく、日本のテレビの音楽番組(特にMステ)に海外の歌手が出演している時に、司会者(タモリさん)とのトークの場面で、同時通訳の方がついているのを見かけます。

同時通訳の方は、外国人歌手の後ろに立って、目立たない色の服を着た状態で、自分の声がマイクに入らないように、小さな声でささやきながら通訳をしています。

これが良くある同時通訳のスタイルです。

一方、テレビで日本人の芸能人や有名企業の経営者などが、英語でプレゼンやインタビューの受け答えをしているシーンを見たことがありますか?

彼らは派手な服を着て、スポットライトを浴びながら、大きなジェスチャーを交えて英語を話しています。

これが、プレゼンターのスタイルです。

真逆のスタイル

同時通訳者とプレゼンターは、同じ「英語」という武器を使って仕事をしていますが、そのスタイルは真逆と言って良いぐらい違います。

悪い意味ではなく、同時通訳者は「地味」で、プレゼンターは「派手」です。

そして、「言語能力」という点で言うと、プレゼンターよりも同時通訳者の方が、より高い能力と訓練を要求されると思います。

日本語と英語の両方を駆使しながら、アドリブで話される内容をスピーディーに通訳し続けるためには、ものすごい集中力を使います。

一方、プレゼンターには、それほど高い英語力は要求されませんが、聴衆を惹きつける声のトーンや話し方、表情やジャスチャーなど、言語能力以外の要素も訓練が必要になってきます。

この、「同時通訳」と「プレゼンター」の違いが、「空手(格闘技)」と「アクション」の技の違いに似ているのです。

 

空手は「同時通訳」

空手は、英語で言えば「同時通訳」です。

パンチもキックも余計な動きを抑えて、相手に自分の動きを悟られないようにしながら、最短距離で技を繰り出します。

空手の試合(実際に技を当て合う試合)を見ると、動きは地味です。

派手なハイキックは、試合ではほとんど当たりません。

(僕も試合や組み手で何度もハイキックを出しましたが、1発も当たったことがありませんでした。せっかく練習した技のあまりの使えなさに、ヘコみました)

逆に、動きが小さく地味なボディーブローやローキック、ひざ蹴りなどの方がよく当たります。

そして、地味な技ほど相手の急所に効いて、KOにつながるシーンをよく見かけます。

(僕もよく、自分のみぞおちに相手のパンチが入って息ができなくなり、KOされていました。あれは本当にキツいです・・・)

 

アクションは「プレゼン」

一方、アクションの技は真逆です。できるだけモーションを大きくして、見ている人に分かりやすくします。

英語の世界で言えば、「プレゼン」です。相手に見せる(魅せる)ことを前提にしています。

アクションでは、パンチよりもキックを多用します。

キックの中でも、派手なハイキックや、跳び蹴りなどをバンバン繰り出していきます。

やられた相手も、派手にぶっ飛んでいきます。

空手やボクシングなどの試合でKOされた人の動きは、「タテ方向」です。苦しくてその場にうずくまったり、意識を失って下にストンと落ちます。

でもアクションの場合は、やられた相手は「横方向」に飛んでいきます。

横っ飛びして海の中に落ちていったり、ドアを突き破って外に飛んでいったりします。

時には、身体を何回も横に回転させがら床に落ちていくこともあります。

アクションの世界では、倒す方も、倒される方も、「ド派手」なのです。

その分、見ている方はスカッとします。

 

違うスキル

同時通訳とプレゼンターが違うスキルを要求されるように、空手とアクションでも違うスキルが要求されます。

僕はオーディションを受ける以前の期間に、その違いを研究していました。

また、頭の中で分かっているだけではなく、実際に技を使い分けられるように身体を使って訓練していました。

今まで誰にも言ったことのない、こんなマニアックな研究の成果を披露する場があるとは・・・僕は嬉しくなりました。

・・・つづく。

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