From 師範代Shinya(新村真也)
(→前回のつづき)
※僕が20才の頃、「アクション俳優になろう!」と決めて、「俳優養成所」に入った時のストーリーの続きです。
恐怖と不安の中始まったヒゲ先生のレッスンは、1ヶ月たつ頃には僕にとって楽しみなイベントになりました。
僕だけではありません。クラスメイトの皆にとっても楽しみなものになりました。
明らかにクラス全体の雰囲気が変わっていくのが分かりました。
ヒゲ先生が作ってくれた「快適な環境」
レッスンの回数を重ねるにつれて、実はヒゲ先生は僕らにとって「快適な環境」を作ってくれていたのだと分かりました。それは、
「全力を出して必死になっても笑われない環境」
です。
この時のクラスには、当時の僕と同じ20才前後の男女が多くいました。
このぐらいの年齢層の人達は「全力で頑張るなんてカッコ悪い」という態度を取りがちです。
特に学生時代は「必死こいてガンバってるヤツ、だせ~!」みたいな価値観があります。(スポーツ系の部活をやっている人は違うかもしれませんが)
そして「あ~、だり~。やる気出ね~。」みたいに言って力の抜けている人がイケてる、みたいな空気があります。
フルパワーを出さないことで「その気になったらスゴいんだぜ、俺」と自分自身をごまかしたり、周りに潜在能力をアピールしている部分があります。
そしてそれは、演技のレッスンでも同じでした。
これまでの演技レッスンでも、クラス全体にどこかそういう「全力を出さないノリ」がありました。
人生を変えよう!と思ってみんなここに来ているのに、「スカしている」というか、必死さがないのです。
「俺はオーディションを突破した実力者だ。才能のあるタレントの卵の俺は、努力なんてしなくても人より結果を出すんだ。」
と心の底で思っている感じでした。
本当の現実は「オーディションという名の『誰でもできる体験レッスン』を受けて、自分のお金で受講料を払って通っている」だけなのに・・・
もちろん、「何百万人の中から選ばれて、採用後はすぐに事務所に所属してデビュー」というような、本当の意味のでオーディションもあります。
でも、ほとんどのタレント養成所は「習い事ビジネス」なので、他の習い事と変わりません。
・空手道場に月謝を払って通う
・ダンススクールに月謝を払って通う
・英会話スクールに月謝を払って通う
のと、何も変わらないのです。空手道場に通い始めた新入生の初心者が、
「俺は体験レッスンで先生にホメられた。才能があるから練習なんてたいしてしなくても試合で勝てるんだ!」
なんて息巻いていたら・・・他の道場生から「君、ここに何しに来たの?」と言われるでしょう。
そして、先輩との組み手練習でボコボコにされるかもしれません。
でもタレントスクールでは「才能のあるやつは努力なんてしない」という姿勢を貫いている人達がけっこういました。
そんな空気の中でレッスンを受けていると、どうしても本気で練習して本気で発表をガンバるのは気が引けてしまいます。
僕は静岡から新幹線で通っていたので、時間とお金をムダにできない!と思って気合いを入れていました。
でもクラス全体の比率で言うと、東京都内、千葉、埼玉など、スクールの近くに住んでいる人が多く、そういう人達の8割ぐらいはどこか「ヘラヘラ」していました。
その証拠に、レッスン中に携帯電話のメール着信音が鳴ることはしょっちゅうありました。
しかも、ふつうにみんなメールをチェックするのです。先生がしゃべっている最中に。
(今とは時代が違うので「携帯電話のマナー」という考え方がなかったのもありますが)
都会(&近郊)組の人達のそういう態度は、僕ら地方組にとっては、
「ふふ~ん、ガンバってるねぇ、君たち~。せいぜい努力したまえ。」
と言われているような感じがしていたのです。
ヘラヘラ組を一掃!
でも、ヒゲ先生は初回のレッスンでいきなり、「ヘラヘラ組」を一掃してくれました。
ヒゲ先生の恐怖のレッスンのおかげで、多くのクラスメイトが脱落していきました。
そして残った人達は、「本気の人達」だけでした。
本気の人達だけで構成されるクラスの中では、「全力でやるのが当たり前」です。
本気になれない人は、ヒゲ先生がどんどん切っていきます。
その結果、1ヶ月たつ頃には、ものすごく快適な環境になっていることに気付きました。
・・・つづく。
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